TCFDにおけるScope(スコープ)3の重要性とは?

TCFDにおいて、Scope3の排出量は企業の全排出量の大部分を占めることが多く、その削減は脱炭素社会への移行において重要な役割を果たすことから、気候変動のリスクを理解する上でも重視されています。企業は、TCFDにおけるScope3の重要性や気候変動によるリスクを理解することで安定した経営が望めます。

ここでは、TCFDについて振り返るとともに、Scope(スコープ)のカテゴリー区分やTCFDにおけるScope3の重要性、開示内容、今後の展望などをご紹介します。

目次

  1. TCFDとは

  2. Scope(スコープ)とは

  3. TCFDにおけるScope3の重要性

  4. まとめ:TCFD Scope3の開示基準に沿った情報提供で環境貢献のアピールを!

1.TCFDとは

気候変動は企業にとって大きな問題で、TCFDはそれに関する財務情報を公開するための方法です。ここでは、TCFDの目的や企業に与える影響を簡単にご紹介します。

TCFDとは

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、「気候関連財務情報開示タスクフォース」のことで、企業が気候変動の影響をどのように理解し、それが財務の面でどう影響するかを世界に報告するための国際的なガイドラインです。気候変動は経済活動に大きく影響を及ぼす問題であり、企業が気候変動の対策を透明にし公開することで投資家の投資機会を逃すリスクを減らし、また、企業は将来的な問題に備えリスクを軽減することができます。

TCFDでは、企業が長期にわたって安定した経営を続けるために、企業の運営のプロセスや方針を示す「ガバナンス」、長期的な目標を達成させるための計画を示す「戦略」、直面する可能性のリスクを評価しその戦略を立てる「リスク管理」、目標達成の基準やその成果を示す「指標と目標」の4つの重要な分野について情報を公開することを推奨しています。

TCFD提⾔の求めているもの

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出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ』p,13.(2023/03)

出典:資源エネルギー庁『企業の環境活動を金融を通じてうながす新たな取り組み「TCFD」とは?』(2019/09/03)

出典:環境省『地域金融機関におけるTCFD開示の手引き』p,9.(2023/04/07)

TCFD設立の背景とその提言内容とは

気候変動が進めば銀行や保険会社などの金融機関の大きな問題につながり、お金の流れや経済の安定に影響を与える可能性があるとの考えからTCFDが設立されました。大きなリスクとして、自然災害による直接的な物の破壊やそれによって物流が止まる、資源の枯渇などの間接的な影響(物理的リスク)や、気候変動で被害を受けた人に賠償を請求された場合のリスク(賠償責任リスク)、また、脱炭素社会へと変化する過程でGHG排出量が多い企業に投資されている資産への評価よるリスク(移行リスク)などが挙げられます。

そこで、TCFDでは企業が気候変動のリスクを理解し情報開示をすることで、投資の機会を失うことを防ぐ他、長期的な目線では企業の経営破綻を防ぐ目的があります。

出典:資源エネルギー庁『企業の環境活動を金融を通じてうながす新たな取り組み「TCFD」とは?』(2019/09/03)

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ』p,12.(2023/03)

出典:環境省『金融機関における TCFD 開示に基づくエンゲージメント実践ガイダンス』p,4.(2024/03)

 

2.Scope(スコープ)とは

Scopeとは、企業が環境に与える影響を測るための3つの区分で、企業の活動が環境に与える影響を把握し、サプライチェーン全体の排出量をどう管理するのか説明をするものです。ここでは、ScopeのカテゴリーやScopeを活用したサプライチェーン排出量の考え方についてご紹介します。

Scopeのカテゴリー

企業の排出量は、自社の活動に直接関連する「Scope1」、電力購入など間接的なエネルギー使用による「Scope2」、そしてサプライチェーンを通じた「Scope3」の3つのカテゴリーに分けられます。Scope1は企業が直接管理する施設や車両からの化石燃料の使用による排出、Scope2は自社の活動に必要な電力や蒸気など外部から購入したエネルギーによる排出です。

そしてScope3は、企業が直接管理できないが活動に関連するGHG排出(Scope1・2以外)を指し、これには原材料の調達や製品の廃棄など製品のライフサイクルの「上流」と「下流」の両方が含まれます。また、消費者による製品使用や従業員の出勤・出張による排気も含まれ、これらは15のカテゴリーに細かく分けられています。

スコープ1、2、3

出典:環境省『気候変動対応 ハンドブック』p,19.(2019/10/01)

出典:環境省『SBT等の達成に向けた GHG排出削減計画策定ガイドブック』p,67.(2023/03/02)

出典:資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/09/26)

Scopeを活用したサプライチェーン排出量の考え方

Scope1、Scope2、Scope3全て足したものを「サプライチェーン排出量」と言い、これは、企業が直接排出するだけでなく、製品の原材料の調達から最終的な廃棄に至るまでの全過程で発生する温室効果ガスの総量のことを指します。サプライチェーン排出量は、サプライチェーン内の1つの会社が排出量を減らすと、他の関連企業も排出量が減ったとみなされます。サプライチェーンでの協力が増えることで、より多くの環境保護策を選べるようになり、温室効果ガスの削減が促進される効果が期待できます。

出典:環境省『サプライチェーン排出量とは︖』p,1.p,3.p,4.(2023/03/09)

3.TCFDにおけるScope3の重要性

Scope3の排出量は、サプライチェーン全体にわたる間接的な排出をカバーしており、その重要性はますます高まりを見せています。ここでは、TCFDにおけるScope3の重要性をご紹介します。

TCFDでScope3排出量開示の必要性とは

最近、TCFDでは企業が自社の活動だけでなく、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)の情報を公開することを推奨しており、大企業が環境保護に努めると、関連する中小企業も自社の排出する温室効果ガスの量を公表することが求められています。これは、パリ協定の目標達成のためには、新しい技術を開発し環境に優しい方法に切り替える必要があり、企業はその資金を投資家から集めることが重要で、企業が排出する温室効果ガスの量をScope3を含めて公開することは、投資家が資金を提供するかどうかを決める上で重要な要素となります。

出典:気候変動適応情報プラットフォーム『TCFDに関する動向と経済産業省の取組』p,19.(2021/10/18)

TCFD対応ガイダンス参考資料

出典:TDFCコンソーシアム『気候関連財務情報開示 に関するガイダンス 3.0』p,39.42.(2022/10/03) 

TCFDでのScope3の開示内容

TCFDでは、「指標と目標」という分野でサプライチェーンからの排出量とそれに伴うリスクを報告することを推奨しています。これは、多くの排出量を持つ企業ほど、気候変動の影響を受けやすいと考えられているためです。また、将来の環境規制や排出量の制限によって、経済的な損失を受けるリスクがあるとしています。

出典:TCFD『Final Report Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures 最終報告書 気候関連財務情報開示 タスクフォースによる提言』p,20.27.(2017/08/17)

出典:環境省『2. なぜサプライチェーン排出量を 算定するのか︖』p,25.(2023/03/09)

TCFD Scope3を巡る動向

TCFDは、目標を達成しその報告書の公開とともに2023年10月12日に活動を終了しました。現在は、「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)」による「IFRS S1」と「IFRS S2」の発表により、TCFDの原則がより具体的な開示基準へと進化しました。特に、「IFRS S2」では金融機関が投資や融資を行う企業はScope3も公表する必要があり、企業は全バリューチェーンにわたる環境の影響に対して、より広範囲の責任を負うことになります。

出典:TCFD『Task Force on Climate-Related Financial Disclosures』(2023/11)

出典:自然エネルギー財団『企業の気候変動情報開示の新国際基準発表:バリューチェーン全体の排出量開示・オフセットを含む目標はオフセット前も開示が明記』(2023/07/03)

4.まとめ:TCFD Scope3の開示基準に沿った情報提供で環境貢献のアピールを!

TCFDの重要な要素のひとつである「指標と目標」では、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)の情報を公開することを推奨しており、これは、排出量が多い企業は気候変動の影響をより受けやすく、未来の環境政策によって経済的ダメージを受ける可能性があるためです。

すでにTCFDの活動は終了していますが、その基準は新しい国際的な開示基準ISSBに引き継がれており、企業はTCFDの推奨するScope3の情報開示をしっかりと理解し、適切に報告をして投資家への透明性を高めていきましょう。

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