ケミカルリサイクルとは? 実際の企業事例も紹介

ケミカルリサイクルとはどういうものか、分かりやすく解説します。廃棄物を化学技術によって原材料として再利用するケミカルリサイクルは、資源の乏しい日本においては、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクルといった他のリサイクル方法と共に、特に注目されています。今やケミカルリサイクルは、循環型社会を語る上では欠かすことのできない技術です。

本記事ではケミカルリサイクルの概要および現状と課題、企業におけるケミカルリサイクルの取り組み事例などをご紹介します。

目次

  1. ケミカルリサイクルとは

  2. ケミカルリサイクルの現状と課題

  3. ケミカルリサイクルに関する企業事例

  4. まとめ:ケミカルリサイクルを推進して、環境負荷を軽減しよう!

1.ケミカルリサイクルとは

ケミカルリサイクルは、持続可能な社会の実現に向けて注目される技術です。ケミカルリサイクルの概要について解説します。

ケミカルリサイクルとは

ケミカルリサイクル(chemical recycle)とは、廃棄物などを化学的に処理して原材料として再生利用することを言います。具体例としてはペットボトルを化学分解して、再度ペットボトルにすることなどが挙げられます。効率的な再生利用のためには、同じ材質のものを大量に集める必要があります。

出典:環境省「平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」(2012/5/29)

ケミカルリサイクルが注目される理由

日本では2021年度、824万tの廃プラスチックが排出されています。内訳は一般系廃棄物が419万tで前年対比+2%、産業系廃棄物が405万tで前年対比▲2%で、排出総量は横ばいとなっています。排出された廃プラスチックのうち87%にあたる717万tは有効利用されていますが、その中でケミカルリサイクルによるものは排出量に対し3.5%の29万tに止まっています。

しかしケミカルリサイクルは、あらゆるタイプの廃化学品を貴重な資源とすることができるため、今後真の資源循環経済へ貢献することが期待されています。

プラスチックの生産量・消費量・排出量

出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」p5-7

出典:一般社団法人日本化学工業協会「第2回資源循環経済小委員会 資源循環型社会に向けた化学産業の取り組み」p7(2023/11/6)

ケミカルリサイクルとマテリアルリサイクル、サーマルリサイクルの違い

ケミカルリサイクルが廃棄物を化学反応によって原料まで戻すのに対し、元の材質のまま再利用するのが「マテリアルリサイクル」です。身近な例としては、古着を裁断・縫製し雑巾として再利用することなどが挙げられます。また廃棄物を可燃物として焼却することで発電原料として再利用する方法を、「サーマルリサイクル」と言います。これらリサイクル技術の開発は、資源の有効活用によって環境への負荷軽減につながるため、重要な取り組みです。

出典:日本化学繊維協会「環境にやさしい繊維リサイクル」

2.ケミカルリサイクルの課題と今後の取り組み

大きな可能性を秘めたケミカルリサイクルですが、そこには課題も存在します。ケミカルリサイクルの課題と今後の取り組みについて解説します。

ケミカルリサイクルの課題

ケミカルリサイクルには、コストがかかる、消費エネルギーが大きいといった課題があります。そのため低エネルギーで高効率な技術の開発が求められます。またリサイクルの対象となる廃棄物を回収・分別する拠点やルートの整備を含む大規模で高効率な収集体制の確立も、ケミカルリサイクルの本格的な展開には欠かせません。さらにケミカルリサイクルによって生産された製品の大型市場創出やビジネスモデル構築など、ケミカルリサイクルのコストによって製品価格が上昇した分を、社会全体で認知・負担する仕組みも必要であると考えられています。

出典:経済産業省「繊維to繊維リサイクルの課題」p6(2023/1/20)

出典:一般社団法人日本化学工業協会「第2回資源循環経済小委員会 資源循環型社会に向けた化学産業の取り組み」p18(2023/11/6)

ケミカルリサイクルの今後

日本政府としてはケミカルリサイクルに関して、新たな技術方式の開発などについては、グリーンイノベーション基金の活用などを通じた研究開発・実証への支援強化や、社会実装に向けた企業の取組を後押しすることなど検討しています。

また個別企業のみならず、CLOMA(Clean Ocean Material Ariance、海洋プラスチックごみの問題解決に向けてケミカルリサイクルを含む様々な対策を推進する団体) など、資源循環を促す社会システムの構築に向けた取組も加速化される予定です。

出典:資源エネルギー庁「新・素材産業ビジョン(中間整理)」p7,10,14(2022/4)

3.ケミカルリサイクルに関する企業事例

日本でも多くの企業がケミカルリサイクルに取り組んでいます。ケミカルリサイクルに関する企業事例をご紹介します。

出光興産株式会社

出光興産株式会社(以下「出光興産」)は2023年4月に、使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル商業生産設備への投資を決定すると同時に、使用済みプラスチックを原料とした生成油の生産を行う合弁会社を設立しました。2025年には回収した廃プラスチックからケミカルリサイクルによる生成油を生産開始し、プラスチック製品の原料として利用する計画となっています。

出光興産では、従来は単にゴミとして焼却されていたプラスチックをケミカルリサイクルすることで、循環型社会の実現とCO2削減に貢献することを目指しています。

出典:出光興産株式会社「使用済みプラスチックを原料とした油化ケミカルリサイクル商業生産設備への投資決定について」(2023/4/20)

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社(以下「キリングループ」)は、ペットボトルなどの原料となるPETを短時間・低エネルギーで分解する「アルカリ分解法」を2023年に開発しました。従来のケミカルリサイクル方法ではPETを分解するのに数時間かかりますが、アルカリ分解法では約1/10まで処理時間を短縮することができます。さらに分解によって生じた生成物からPET原料を精製する「電気透析法」を早稲田大学との共同研究で開発しました。この技術によって、従来のケミカルリサイクル方法で必要だった化学薬品が削減され、副産物の廃棄が不要となります。キリングループでは樹幹社会の実現へ貢献するため、開発したPETケミカルリサイクル技術の実用化を目指しています。

出典:キリンホールディングス株式会社「高効率・環境負荷低減を実現する、PETケミカルリサイクル技術を2件開発」(2023/12/15)

凸版印刷株式会社

凸版差印刷株式会社は、国立大学法人東北大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所、東ソー株式会社、東西化学産業株式会社、恵和興業株式会社と共同で、複合プラスチックのケミカルリサイクル技術の開発を、2021年から開始しました。性質の異なる複数のプラスチックが使用されている複合プラスチックは、ケミカルリサイクルが困難です。

そのため複合プラスチックを元のプラスチックへ分解・改修する技術が求められており、本研究はその実用化を目指しています。このケミカルリサイクル技術が確立すれば、一般ごみのリサイクル率が大きく向上することが期待されます。

出典:凸版印刷株式会社「産官学協働で複合プラスチックのケミカルリサイクル技術の開発と実用化を加速」(2022/2/2/28)

4.まとめ:ケミカルリサイクルを推進して、環境負荷を軽減しよう!

ケミカルリサイクルは資源の有効利用という観点で、大きな期待が寄せられているリサイクル方法です。コスト、技術、回収などのオペレーションそれぞれに課題はありますが、日本政府としても後押しをしている分野であり、今後大きく成長していく可能性があります。

ケミカルリサイクルの技術開発や廃プラスチックの回収を推進し、循環型社会の実現と環境負荷軽減を目指しましょう。

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