国際的なサステナブルレポート作成組織「GRI」とは

GRI(Global Reporting Initiative)は、1997年に設立された国連環境計画の公認団体として活動する非営利団体です。サステナビリティに関する国際基準の策定を使命としており、オランダのアムステルダムに本部があります。

GRIは2000年にガイドラインを発表し、以来全世界的にサステナビリティをどう具体的な指標として実現していくのかの判断基準となっています。

今回は、GRIの成り立ちやレポートの内容についてお伝えします。

目次

  1. GRIの成り立ち

  2. GRIが支援するサステナビリティレポートとは

  3. レポートの新基準?GRIスタンダードとは

  4. まとめ:GRIスタンダードを活用しよう

1. GRIの成り立ち

GRIは1997年に国連環境計画の公認団体として設立されたNGOです。サステナビリティ全般を扱っており、政府や企業、研究など様々な面で参照されるガイドラインを作成しています。

GRIの役割

GRIの役割は、サステナビリティを実現するための具体的な指標を表すことです。サステナビリティは概念的に扱われることが多く、何をどうすれば達成していると言えるのかが見えにくい場合がほとんどです。

だからこそ、GRIは全世界的に共通のガイドラインを作成し、啓蒙することで共通認識を作り上げる役割を実行しています。

どんなメンバーで構成されているか

GRIの構成メンバーは、企業やコンサルタント、監査法人、労働組合、学者など様々なメンバーで構成されています。

5年前にはGOLDコミュニティという仕組みも導入されており、69カ国、500以上の組織が参加するネットワークとなっています。

出典:Sustainable japan 『【国際】GRI、新たなマルチステークホルダーネットワーク、GOLDコミュニティを開始』

2. GRIが支援するサステナビリティレポートとは

GRIは、サステナビリティに関するレポートを作成し、全世界に普及・啓蒙する役割を担っています。サステナビリティレポートの内容や重要性をチェックしましょう。

サステナビリティレポートとは

サステナビリティレポートは、一般的には「持続可能な社会の実現に向けた活動についての報告書」とされています。近年注目されているSDGsと強く関連しており、企業の取り組みを対外的に公表するレポートとなっています。

従来であれば、いわゆる財務情報のみを発表することが基本でしたが、現在では非財務情報であるサステナビリティレポートを公表することは企業として非常に重要な取り組みとなっています。

非財務情報の重要性

現代は企業への投資を行う際に、財務情報のみを見て判断する時代から変化しています。

それぞれ、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った「ESG」という指標が、企業の長期的な成長を判断する基準として投資において一般的になってきており、ESG投資の総額も右肩上がりで伸長しています。このことから、非財務情報であるサステナビリティレポートが重要な投資判断の基準となってきていることがわかります。

つまり、企業として財務情報はもちろん、非財務情報を開示しなければ投資を得られないという時代に突入しているのです。

出典:日本経済新聞『世界のESG投資額35兆ドル 2年で15%増』(2021年7月19日)

3. レポートの新基準?GRIスタンダードとは

GRIが2016年に発表した「GRIスタンダード」は、サステナビリティレポートなど非財務情報を公表する際に必要なテンプレートであり、世界中で活用が進んでいます。

実際に、世界大手企業の上位250社のうち、75%がGRIスタンダードを利用して非財務情報を公表しています。

出典:国際開発センター(IDCJ)SDGs室『GRI・GRIスタンダードについて』

GRIスタンダードは、当初のガイドライン(G1,G2,G3,G4)を再編したものであり、非財務情報が財務情報と同じく重要な観点になったことから、非財務情報においても確固たる基準が必要であるとしてつくられました。

GRIスタンダードにおいて、サステナビリティレポートはどんな内容で記載されるのか、従来のレポートとの違いを把握しましょう。

GRIスタンダードの構成とは

GRIスタンダードは、共通スタンダードと項目別スタンダードから成り立ちます。

  • 共通スタンダード

共通スタンダードは、報告原則をはじめ、組織プロフィールの記載方法などGRIスタンダードを利用する上でのルールが記載されています。

そもそもGRIスタンダードは全世界的に共通のテンプレートとして活用されるのが目的なので、自由に記載されるのではなく一定のルールに則って実施される必要があるからです。

  • 項目別スタンダード

項目別スタンダードは、「経済」、「環境」、「社会」の3つのカテゴリに大別されており具体的な取り組み実績を公表する上でのルールが記載されています。

例えば自社のサステナビリティレポートがGRIスタンダードに準拠しているとするには、少なくとも共通スタンダードの記載ルール全てを満たしている必要があります。

出典:CSRcommunicate『GRIスタンダード 日本語版の公開』(2017年4月20日)

従来のレポートとの違い

GRIスタンダード以前は、2000年に発表されたG1を皮切りに、2002年にG2、2006年にG3、2013年にG4といったガイドラインが公表されていました。この2つの内容に大きな変更点はありませんが、G4はガイドラインであり、GRIスタンダードとは性質が違います。

G4をはじめとするガイドラインはあくまで参照するためのものとなっており、どんな内容を記載するのが推奨されるのかを提示するものでした。

一方で、GRIスタンダードは「スタンダード」となっており、サステナビリティレポートとして記載すべき「要求事項」や記載した方が良いという「推奨事項」などがはっきりと明確化されています。

従来のレポートとは内容が似ていても、より規定力が高いのがGRIスタンダードとなります。このようにして、GRIスタンダードはより一層サステナビリティ報告書の標準的な慣習をつくることに貢献しています。

出典:Sustainablejapan 『【国際】GRI、新版「GRIスタンダード」を発表。G4からの切替期限は2018年7月1日』

出典:CSRcommunicate『GRIスタンダード』(2015年3月23日)

GRIが推奨する報告書のポイントとは

GRIが推奨する報告書のポイントは、多様なステークホルダーに対して経済・環境・社会へのインパクトが大きいものが報告されるという点です。

非財務情報の公表については、GRIスタンダードだけではなく、SASBスタンダード(Sustainability Accounting Standards)といったものもありますが、SASBスタンダードは投資家や市場が求める財務に関わる情報の掲載を重視しています。

GRIスタンダードは、SASBスタンダードに比べて、より持続可能な開発などサステナビリティへの意識が高いと言えるでしょう。

出典:国際開発センターSDGs室『GRI・GRIスタンダードについて』

4. まとめ

GRIスタンダードは、世界的に活用が進んでいる非財務情報を公表するためのテンプレートです。

概念的に捉えがちなサステナビリティなど、非財務情報を公表する上で、どんな情報の記載が必要かが明記されています。大手企業もほとんどがGRIスタンダードを活用したサステナビリティレポートを発表しています。

また、非財務情報の公表にはSASBスタンダードというテンプレートもあります。しかし、SASBスタンダードはGRIスタンダードに比べて、投資家向けの財務情報よりの内容が中心となっており、多種多様なステークホルダーのニーズを満たしにくいものとなっています。

もしも、投資家向けに公表するためのレポートであればSASBスタンダードでも問題ありません。

しかし、社会潮流となっているSDGsへの取り組みはもちろん、成長著しいESG投資を受けることを考えると、より汎用的なGRIスタンダードでのサステナビリティレポート公表をおすすめします。

ぜひ、GRIスタンダードを活用して、自社の取り組みをチェックしてみてください。

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