カーボンフットプリント(CFP)の算出・計算方法を解説!
- 2024年04月03日
- CO2算定
カーボンフットプリント(CFP)の概要から計算方法について、わかりやすく解説します!カーボンフットプリント(CFP)は、企業がカーボンニュートラルへの取組みを実施するうえで、重要な指標です。
カーボンフットプリント(CFP)を算出・表示することで、消費者は購入しようとしている製品がどの程度環境負荷を伴うものなのかを、知ることができます。本記事ではカーボンフットプリント(CFP)の概要、カーボンフットプリント(CFP)計算の流れ、具体的な算出事例などをご紹介します。
目次
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カーボンフットプリント(CFP)の概要
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カーボンフットプリント(CFP)計算の流れ
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カーボンフットプリント(CFP)を計算している企業事例
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まとめ:カーボンフットプリント(CFP)を計算して、公共調達やIRへ役立てよう!
1. カーボンフットプリント(CFP)の概要
カーボンフットプリント(CFP)は、商品やサービスのライフサイクルを通じて排出された温室効果ガスの量を数値として表示したものです。カーボンフットプリント(CFP)の概要について解説します。
(1)カーボンフットプリント(CFP)とは
カーボンフットプリント(CFP)は、商品やサービスのライフサイクルの各過程で排出された「温室効果ガスの量」の合計をCO2量に換算して表示したものです。商品やサービスのライフサイクルとは、原材料の調達、製造、搬送、使用、廃棄などサプライチェーン全体を指します。
カーボンフットプリント(CFP)は、サプライチェーン全体の排出量の可視化によって、削減効率の高いポイントが把握できたり、個々の企業単位ではなく、関連する企業同士が一体となった削減対策につながったりするため、重要視されています。
(2)カーボンフットプリント(CFP)の意義
カーボンフットプリント(CFP)の算出によって、企業はサプライチェーンのどの段階でCO2排出量が多いのかを把握し、効果の高い排出削減対策を打つことができます。また消費者が気候変動問題に関心を持つきっかけとなったり、CO2排出量が少ない製品を選ぶことができるようになります。
企業が排出削減と事業の成長を実現させていくためには、カーボンフットプリント(CFP)によって消費者が、より環境負荷の小さい製品を選択するような仕組みを普及させる必要があります。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」p7(2023/3)
(3)カーボンフットプリント(CFP)が利用されるシーン
カーボンフットプリントは、国際的にもさまざまなシーンで利用されるようになっています。欧米ではカーボンフットプリント(CFP)へ取組む企業が公共調達において優先されたり、EUではカーボンフットプリント(CFP)を活用した規制も定められています。その他投資や仕入れにおける判断材料や、消費者へ向けたブランディングやマーケティング手段の一環としての活用も広がりつつあります。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」p7-8(2023/3)
(4)カーボンフットプリント(CFP)の課題
カーボンフットプリント(CFP)においては、明確な算定ルールが定められていない分野もあります。そうした製品については、企業が独自に算定方法を検討するなどしなければならず、公平性や汎用性が課題となります。カーボンフットプリント(CFP)を調達などに利用する場合は、別途客観的な検証が必要となる場合も考えられます。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」p3,11(2023/3)
2. カーボンフットプリント(CFP)計算の流れ
経済産業省と環境省が公表している「カーボンフットプリント ガイドライン」では、カーボンフットプリント(CFP)算出の基本的な方法が説明されています。
(1)計算方針の検討
まずは、カーボンフットプリント(CFP)の計算方法を検討します。そのためには、カーボンフットプリント(CFP)に取組む目的や活用方法を明確にすることが重要です。また検討の際には、参照するルールの選択も必要です。参照先となるルールとしてはISOなどの国際的な基準、行政の出している指針、業界で定めているガイドラインなどがあり、その中から複数のルールを参照することもできます。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン 第一部」p3,4(2023/3)出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン 第二部」p14(2023/3)
出典:一般社団法人日本化学工業協会「化学産業における製品のカーボンフットプリント算定ガイドライン」p3(2023/2/28)
(2)計算範囲の設定
次に、カーボンフットプリント(CFD)計算対象製品のライフサイクルのうち、どこまでを計算範囲とするのかを明確にします。カーボンフットプリント(CFD)には製品の原材料調達から製造までを計算対象とする「Cradle to Gate CFP」と、さらに流通、使用、廃棄までを含める「Cradle to Grave CFP」があります。製品の特性に合わせ、適切な範囲を選択・設定する必要があります。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン 第二部」p14(2023/3)
(3)カーボンフットプリント(CFP)の計算【基本的な考え方】
計算の方針と範囲を決定したら、実際の排出量計算に着手します。排出量は製品のライフサイクルの各段階において、「活動量×排出係数」という計算式によって導き出されます。
たとえば製品1個あたりの素材Aの調達量が2,5kg、素材Aの排出係数が12 kgCO2e/kgの場合、当該製品の原料調達における1個あたりの排出量は2.5kg×12=30kgCO2eということになります。この計算を、計算範囲にある全てのプロセスで行い、その結果を合計します。
排出係数には、以下のような選択肢があります。
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エネルギー事業者から直接入手
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燃料調達時の排出係数+設備建設由来の排出係数+事業者別排出係数
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IDEA(※)等の2次DBによる排出係数
※サプライチェーン排出量の算定に利用可能なデータベース( Inventory Database forEnvironmental Analysis、国立研究開発法人産業技術総合研究所、一般社団法人サステナブル経営推進機構)
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン 第二部」p14,57(2023/3)
出典:環境省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位について(Ver.3.2)」p4
(4)カーボンフットプリント(CFP)の計算【具体的な手順】
a.ライフサイクルフロー図の作成
カーボンフットプリント(CFP)の計算にあたって、算定対象とした各プロセスを示す「ライフサイクルフロー図」を作成します。
b.算定手順書の作成
次に対象製品や算定方針を記述した「算定手順書」を作成します。ライフサイクルフロー図で各プロセスに番号を付し、算定手順書にも同様の番号を振ることで、抜け漏れのないようにします。
c.活動量と排出量の記入
算定手順書に記入した各プロセスごとに、排出量計算に使用する活動量と排出係数を記入します。
d.算定シートへの入力
排出量算定ソフトや表計算ツールなどを利用し、プロセスごとの活動量と排出係数を入力します。縦軸にプロセスを網羅し、横軸には活動量、排出係数、排出量の順番で項目を当てます。
e.プロセスごとの排出量計算
プロセスごとに活動量×排出係数=排出量となるように、計算式を設定します。計算結果の単位を間違えないよう注意が必要です。
出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン(別冊)CFP 実践ガイド」p8,11,13,16(2023/5)
(5)検証・報告
計算したカーボンフットプリント(CDP)は、算定ロジックやデータ収集方法の適切性について検証を受けたうえで、算定報告書としてとりまとめます。検証は内部検証に加え、第三者による検証を実施する場合もあります。また報告にあたっては、算定者の意図に反して他社製品との⽐較に用いられることの防⽌も必要です。
出典:経済産業省・環境省「カーボンフットプリント ガイドライン 第二部」p14-15(2023/3)
3. カーボンフットプリント(CFP)計算の企業事例
カーボンフットプリント(CFP)については、日本でも取組みが進みつつあります。日本企業のカーボンフットプリント(CFP)計算事例についてご紹介します。
株式会社コーセー
株式会社コーセーでは、全社CFP戦略の第一歩として2022年度に特定の基幹商品で、カーボンフットプリント(CFP)算定と表示を試行的に実施しました。試行の目的は算定や表示に関する実務上のノウハウを蓄積することや、製品ライフサイクルにおいて特に環境負荷が大きいポイントを特定することなどでした。
次の段階としては、試行結果をもとに方針を検討し、主力商品を対象に小範囲で算定や表示を実施する予定です。同社では最終的に、グローバルブランドへ対象を拡大することを視野に入れています。
出典:環境省「脱炭素経営フォーラム カーボンフットプリント算定による気づき、今後の展開『雪肌精 クリアウェルネス シリーズ』」p6
明治ホールディングス株式会社
明治ホールディングス株式会社では、代表製品である「明治ミルクチョコレート」を対象に、カーボンフットプリント(CFP)の算定を2022年に開始しました。製品の原材料調達から廃棄・リサイクルまでを算定対象としており、日本国内におけるカーボンフットプリント(CFP)の取組み拡大や、消費者へ脱炭素に貢献する商品の選択を促すことを目指しています。算定だけでなく、消費者へのわかりやすい表示についても検討しています。
出典:明治ホールディングス株式会社「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」p1(2022/11/18)
製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業参加企業
環境省では、令和4年度から「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」を公募しています。令和5年度については甲子化学工業株式会社・チヨダ物産株式会社・株式会社ハースト婦人画報社・マルハニチロ株式会社・ミニストップ株式会社の5社が、参加企業として選定されました。
参加企業は自社製品・サービスのカーボンフットプリント(CFP)算定、CO2削減目標や対策の検討、消費者へ向けた表示などを行うことになっています。環境省ではこうした取り組みを通じて、モデル企業の創出や、ガイドラインのアップデートなどを目指しています。
出典:環境省「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業への参加企業決定について」(2023/8/24)
4. まとめ:カーボンフットプリント(CFP)を計算して、公共調達やIRへ役立てよう!
カーボンフットプリント(CFD)とは、製品やサービスのサプライチェーン全体を通じたCO2排出量を指標化したものです。一律の計算ルールがなく各企業で算定方法を検討しなければならないという課題はありますが、CO2削減対象となるプロセスの特定や購入時の判断要素として、世界各国で活用が広がっています。
カーボンフットプリント(CFP)の算定には、算定目的に合わせた算定方法の検討・算定範囲の設定・算定後の検証などの手間がかかりますが、日本でも環境省のモデル事業選定企業などで、取組みが進みつつあります。
自社製品やサービスのカーボンフットプリント(CFP)を計算して、環境負荷対策の一環として公共調達やIRなどへ活用していきましょう。