SBT認定企業とは? SBTの概要から認定企業事例についても解説

地球温暖化対策のひとつであるSBTとその認定企業について、わかりやすく解説します。SBTは各企業の温室効果ガス排出削減に関する、国際的な取り組みです。パリ協定が求める排出削減水準に基づき、世界各国の企業が賛同・参加しています。

SBTにおいて各企業は中長期的な目標を定め、その達成に向けて取り組むとともに、対外的にも情報公開する必要があります。本記事ではSBTの概要、SBT認定の状況や方法、SBT認定企業の実際の取り組み事例などについてご紹介します。

目次

  1. SBTの概要

  2. SBT認定について

  3. SBT認定企業の取り組み事例

  4. まとめ:SBT認定を取得して、温室効果ガス排出削減に貢献しよう!

1. SBTの概要

SBTとはSciense Based Target(科学に基づく目標)の略称で、温室効果ガス削減目標を意味します。SBTの概要について解説します。

SBTとは

2015年のパリ協定では、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える努力を追求することを世界各国が約束しました。SBTはこれに基づき、各企業が温室効果ガス排出量をどれくらい、どれくらいの期間で削減するか目標設定する取り組みです。

SBTは国際的な慈善団体SBTi(SBTイニシアチブ)によって運営されており、SBTiは参加各企業のSBTをとりまとめ、その策定や達成を支援、検証しています。

出典:SIENCE BASED TARGET「ABOUT US」

SBTに取り組む意義

気候科学に基づくパリ協定での共通基準によって認定された目標であるSBTに取り組むことで、各企業は投資家・顧客・仕入れ先・自社社員などのステークホルダー(利害関係者)に対し、自社がパリ協定に整合する持続可能な企業であることを示すことができます。

その結果投資家からの評価向上、顧客から選別されるリスクの回避や選考される機会の獲得、サプライチェーンの調達リスク低減、社内のイノベーション促進などのメリットが得られます。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」p12

2. SBT認定について

SBTはSBTiによる認定が必要ですが、「2年以内にSBT認定を取得する」と宣言する「コミット」による参加も可能です。SBT認定について解説します。

SBT認定企業数の動向

SBTiのホームページでは、SBTに参加している企業が一覧で公開されています。参加状況を年度別に集計すると、下表のとおりとなります(「短期目標」のみ集計、2024年3月13日現在)。

 

世界全体

内日本企業

年度

コミット

認定

合計

コミット

認定

合計

2015

5

1

6

 

 

 

2016

5

7

12

 

 

0

2017

 

17

17

 

3

3

2018

5

33

38

1

7

8

2019

9

93

102

 

10

10

2020

13

187

200

 

17

17

2021

188

515

703

3

72

75

2022

806

1,044

1,850

17

198

215

2023

1,374

2,256

3,630

41

451

492

2024

364

701

1,065

19

172

191

特に2022年以降、世界全体および日本において、参加企業数・認定企業数ともに大きく増加しています。また日本企業については、参加企業における認定企業の割合が大きくなっています。

出典:SCIENCE BASED TARGETS「COMPANIES TAKING ACTION」
出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」p40-43

SBT認定の手順

SBT認定を受けるには、SBTiのホームページからコミットし、それから24カ月以内に目標を設定・提出、SBTiの承認を得ます。目標の承認を得るために各企業は、温室効果ガス排出に関する自社の現状や将来の見通しの把握、排出削減の取り組み内容構想、目標達成に向けたロードマップ策定などが必要です。

また承認された目標については社内外のステークホルダーと共有し、その達成状況についてモニタリングを行い情報開示していくことも求められます。

出典:SCIENCE BASED TARGET「SET A TARGET」
出典:環境省「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブックp4(2021/3)

短期目標、長期目標、ネットゼロ目標の違い

SBTには「短期目標」「長期目標」「ネットゼロ目標」の3種類があります。短期目標は、企業の今後 5~10 年間の排出量削減目標です。長期目標は、ネットゼロ(排出量からCO2吸収量を差し引いた実質排出量が0であること)を達成するために必要な排出削減量です。

ネットゼロ目標は、短期目標と長期目標の両方が含まれます。SBTiは2021年10月に「企業ネットゼロ基準」を発表しており、そのため2022年以降ネットゼロ目標をコミットする企業が増加しています。

出典:SCIENCE BASED TARGET「COMPANIES TAKING ACTION」

3. SBT認定企業の取り組み事例

SBTに取り組むことで企業は、実効性のある温室効果ガス削減策を遂行することができます。SBT認定企業の取り組みみ事例をご紹介します。

H&Mグループ

ヘネス・アンド・マウリッツを核としたスウェーデンのアパレルH&Mグループは、「サプライヤーエンゲージメント目標」を求めるSBTの考え方に基づき、スコープ3排出量(サプライチェーン全体における間接排出量)を 2030年度までに2019年度対比で56% 削減することをコミットしています。

H&Mグループの仕入れ先は、炭素削減目標の達成を約束し、目標をどのように達成するかを詳細に記したロードマップを提出するよう求められます。さらにH&Mグループのサステナビリティ チームによって、結果の振り返りも行われます。またH&Mグループでは、仕入れ先の再生可能電力の調達もサポートしています。

出典:SCIENCE BASED TARGET「Supplier Engagement Case Study - H&M Group」

株式会社電通

株式会社電通(以下「電通」)は、ネットゼロ目標を2030年ではなく敢えて2040年に設定しています。元々は2030年にネットゼロの達成をコミットしていましたが、SBTの「ネットゼロ標準プロセス」を基にして、達成目標の年度を見直しました。

電通では例えば航空機からの温室効果ガス排出を削減するために、リモート会議の活用や環境に優しいルートを選択するデータソリューション導入などへ取り組んでいます。電通は2020年のスコープ1・2排出量(当該企業の直接および間接排出量)が、2019年対比で39%削減されたと報告しています。

出典:SCIENCE BASED TARGET「Net-Zero Case Study - Dentsu」

ソニーグループ株式会社

ソニーグループ株式会社(以下「ソニー」)は、SBTに参加するより以前の2010年に、2050年までに環境負荷ゼロを達成する世界環境計画「Road to Zero」を発表していました。この目標達成では、スコープ1~3それぞれの排出量を2008年対比で90%削減する必要があります。

SBTへの参加により、世界的なイニシアチブから目標承認を得て、ソニーはより大きな権威を得ることができました。目標達成のためソニーでは、画質を維持したまま、より高いエネルギー効率を持つLED ディスプレイや、最大99%の再生材料から作られ、製造時のCO2排出量を最大80%削減できる独自の再生プラスチックSORPLASなどを開発しています。

出典:SCIENCE BASED TARGET「Case Study - Sony」

4. まとめ:SBT認定を取得して、温室効果ガス排出削減に貢献しよう!

SBTは企業による温室効果ガス削減目標であり、国際イニシアチブSBTiによって運営されています。SBTは科学的な憲章に基づきSBTiの認定を受ける必要がありますので、SBTへの参画により各企業は自社が持続可能な企業であることを各ステークホルダーへ示すことができます。

世界各国で多くの企業がSBTへ参加しており、その中で多数の日本企業がSBTについて認定を受けています。SBTの認定を受けるにはSBTiのホームページからエントリーし、現状分析やロードマップの策定などを行う必要があります。

SBTの認定を取得して、ステークホルダーに情報開示しつつ、実効性のある温室効果ガス排出削減に貢献しましょう。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説