リジェネラティブ農業とは?今、注目のリジェネラティブ農業と農業の未来を解説!

リジェネラティブ農業とは、土壌に注目した環境にやさしい畑作りのことで、農業分野で大きな注目を浴びています。日本でもリジェネラティブ農業への関心が高まっており、農業の新たな形を生み出すと共に持続可能なリジェネラティブ農業に大きな期待がかかります。

ここでは、リジェネラティブ農業の基礎知識や関心が高まっている理由、リジェネラティブ農業の有効な手立て、取り組みを行う企業の取り組み事例などをわかりやすくご紹介します。

目次

  1. リジェネラティブ農業について

  2. リジェネラティブ農業に有効な農業法

  3. リジェネラティブ農業を導入している企業の取り組み事例

  4. まとめ:リジェネラティブ農業に注目し環境保全に貢献できる企業を目指そう!

1. リジェネラティブ農業について

ここでは、今後の農業の方法として導入が注目されるリジェネラティブ農業の基礎知識をご紹介します。

リジェネラティブ農業とは

リジェネラティブ農業とは、「環境再生型農業」とも呼ばれ土壌本来の力を引き出し、土壌環境の回復を図り、状態を整えることを目的とした土壌の環境を最優先に考えた方法で行う農業のことです。

その手法として、農薬や化学肥料の使用を避け不耕栽培や遺伝子組換えを行わないことや、畑を耕すのを最小限にする「不耕起」、植物などで土を覆う「カバークロップ」、ローテーションで栽培する「輪作」などがあります。

リジェネラティブ農業による土壌の回復は、土壌の温室効果ガス吸収・貯留作用の向上が望め、世界の40%の農地でリジェネラティブ農業に取り組むことで、温室効果ガス排出量を約6億トン(CO2換算)削減することができるとしています。

出典:農林水産省『⾷品企業に求められるESGマネジメント』p,43.(2022/10/17)

出典: 日本経済新聞『環境保全型農業は企業が先導 生物多様性保全へ認識変化 』(2023/12/01)

出典:World Economic Forum『5 benefits of regenerative agriculture – and 5 ways to scale it』(2023/01/11)

リジェネラティブ農業が注目される理由

地球温暖化による異常気象や気温の上昇は、農作物の収穫減少や品質低下を招くとして、農業にとって重大なリスクと考えられています。

世界の農業分野の温室効果ガス排出量は、全体の約1割を占めいる状況で、また、農業での化学肥料や農薬使用による水質汚染や土壌環境低下は、生物多様性を脅かすも懸念があることから、世界では、農業分野においても温室効果ガス排出量削減や生物多様性を保全する動きが強まっています。

そこで、土壌の再生によって生物多様性を促進し、健康な土壌が温室効果ガスを吸収することで、温室効果ガス削減に役立つリジェネラティブ農業が注目されています。

出典:農林水産省『みどりの 食料システム戦略』p,2.(2023/03/13)

出典:農林水産省『「みどりの食料システム戦略」について~スマート農業のゼロカーボンへの貢献』p,3.(2023/02/16)

出典: 日本経済新聞『環境保全型農業は企業が先導 生物多様性保全へ認識変化 』(2023/12/01)

出典:茨城大学『「耕さない農業」が土壌炭素を貯留し土壌微生物の多様性を高める 約20年間の調査で実証 分解促進による潜在的な脆弱性にも注目|NEWS|』(2022/10/27)

2. リジェネラティブ農業に有効な農業法

ここでは、リジェネラティブ農業に有効とされる農業方法をご紹介します。

不耕起栽培

不耕起栽培とは、土を耕すのを最小限にして農作物を育てる方法です。例えば、農作物を育てる際、耕うん機で土を耕してから種蒔きをする場合がありますが、耕うん機で土壌を混乱させてしまうと、本来の土壌の性質や土壌内の微生物が失われてしまいます。

しかし、不耕作で土壌のかく乱を最小限に抑えることで、土壌内の微生物や水分のバランスを保つことができ、土壌内に蓄積されたCO2を大気中へ放出するのを防ぐことができます。

出典:茨城大学『「耕さない農業」が土壌炭素を貯留し土壌微生物の多様性を高める 約20年間の調査で実証 分解促進による潜在的な脆弱性にも注目|NEWS|』(2022/10/27)

出典: 日本経済新聞『環境保全型農業は企業が先導 生物多様性保全へ認識変化 』(2023/12/01)

出典: Regenerative Organic Alliance『Why Regenerative Organic?』

カバークロップ

農地を植物で覆うカバークロップも、リジェネラティブ農業の有効な農法です。その効果として、カバークロップに使用した植物から得られる有機物の供給や、土壌の浸食を防ぎ回復させる、病害虫から作物を守る、雑草が生えるのを防ぐなどがあります。土壌が健康で病害虫の被害を最小限に留めることができれば、農薬や化学肥料を使用せずに農作物を育てることができます。

出典:独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター『カバークロップ導入の手引き』p,1.(2013/11/07)

農地の多様性を持続させる(輪作)

輪作は、同じ土地に数種類の異なる農作物を一定のローテーションで栽培する農法です。例えば、1年目は稲、2年目は大豆、3年目は小麦、4年目は菜種、そしてまた稲に戻るという仕組みです。

農作物は、同じ畑で作り続けると収穫が減ってしまう懸念がありますが、数種類を組み合わせて1パターン化することで、安定した収穫が可能となります。また、タイプの異なる農作物を育てることで、土壌の栄養バランスが保てる効果もあります。

出典:ホクレン農業協同組合連合会『輪作で 持続可能な 畑づくり』p,4.(2020/11/16)

出典: 日本経済新聞『環境保全型農業は企業が先導 生物多様性保全へ認識変化 』(2023/12/01)

3. リジェネラティブ農業を導入している企業の取り組み事例

最後に、リジェネラティブ農業に取り組んでいる企業の事例をご紹介します。

西日本電信電話株式会社(NTT西日本)

西日本電信電話株式会社(NTT西日本)は、温州みかんを対象とした、土壌環境と収穫・品質の関係性の研究を進めています。これは、全国の有機栽培や従来の農法(慣行栽培)を行っている温州みかん農場の情報をもとに、それぞれの土壌の特徴やみかんの育成具合、品質などの実態を解明する研究です。

有機栽培では、微生物が集まるマイクロバイオームが豊かになることが実証され、この研究によって、高品質の温州みかんを収穫するための最適な土壌環境がわかるものとなっています。

出典:農林水産省『令和4年度 農林⽔産省 農林⽔産技術会議事務局 研究開発動向等調査委託事業 報告書』p,172.( 2023/07/03)

出典: 日本経済新聞『環境保全型農業は企業が先導 生物多様性保全へ認識変化 』(2023/12/01)

パタゴニア・インター ナショナル・インク ⽇本⽀社

パタゴニア・インターナショナル・インク 日本支社は、2016年から食料品の取り扱いを開始しました。もともと、パタゴニアはSDGsの取り組みに積極的な企業として有名です。

そのパタゴニアは、「食べれば食べるほど、環境がよくなる」という食料システムを掲げて、持続可能な方法で生産されたビールやフルーツアーモンドバー、サーモンなどを販売しています。特にビールは、炭素貯留につながる多年生穀物「ターザン」が原料となっており、より多くの炭素貯留を可能としたリジェネラティブ農業の促進に力を注いでいます。

出典:農林水産省『ビジネスモデル ヒント集』p,27.(2020/06/02)

4. まとめ:リジェネラティブ農業に注目し環境保全に貢献できる企業を目指そう!

リジェネラティブ農業は、農業の基盤となる土壌環境をいちばんに考えた、環境にやさしい農法のことです。農薬や化学肥料を使わないことで土壌の生物多様性を守ることや、土壌の状態を回復させ健康な土壌を取り戻す目的があります。環境にやさしい土壌で栽培された農作物は安心して食べることができ、「食」の安全にもつながります。

また、この農法で得られる効果は食の安全だけではなく、土壌が持っている炭素貯留の働きによってカーボンニュートラルにも貢献することができます。今後、拡大が注目されるリジェネラティブ農業の理解を深め、持続可能な農作物を支援し環境保全に貢献できる企業を目指しましょう。

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