持続的な海洋経済、ブルーエコノミーとは?企業の取組も紹介

ブルーエコノミーと、ブルーエコノミーに取り組む企業について、わかりやすく解説します!ブルーエコノミーとは、海洋に関連した経済活動を表す概念であり、持続可能性が最大のポイントとなっています。

環境に配慮した海洋利用は、今や世界的な課題です。本記事ではブルーエコノミーの概要や、ブルーエコノミーに悪影響を及ぼす要因、ブルーエコノミーによる成長分野などを取り上げます。また、日本企業のブルーエコノミーへの取り組み事例もご紹介します。

目次

  1. ブルーエコノミーの概要

  2. ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼす要因と成長の原動力

  3. ブルーエコノミーに取り組む企業事例

  4. まとめ:ブルーエコノミーについて理解し、持続的な海洋経済を実現しよう!

1. ブルーエコノミーの概要

ブルーエコノミーとは、持続可能な海洋資源の利用を指す概念です。ブルーエコノミーの概要について解説します。

(1)ブルーエコノミーとは

ブルーエコノミーとは、主に海洋資源の使⽤が持続可能であるかどうかを決定する、幅広い経済分野とそれに関連する政策のことです。ブルーエコノミーは、経済成長や社会的包摂、生活の維持・向上と、持続可能な海洋環境の両立を⽬指しています。

そのためには、海洋に関連した分野での社会経済的発展と、環境や⽣態系の劣化を引き換えにしないことが必要ですが、現在⼈為活動によって、海洋の健全性が⼤幅に低下していることが明らかになっています。

出典:WORLD BANK FROUP「The POTENTIAL OF BLUE ECONOMY」p8

(2)ブルーエコノミーが注目される理由

ブルーエコノミーが注目されているのは、健全な海洋は貧困削減や全ての人が共に生きることができる社会の実現に⼤きく貢献するからです。小さな島で国土が構成される開発途上国(SIDS)や、沿岸の開発途上国(LDCs)の経済と⽂化は、海洋を基盤として築かれています。

「国や人の不平等を解消する」という持続可能な開発⽬標(SDGs)の実現のためにも、ブルーエコノミーを通じて、SIDSと沿岸LDCsにおける貧困層の⽣計向上や雇⽤機会創出によって貧困をなくすと同時に、低炭素で資源効率の⾼い海洋利用を追求することが重要だと考えられています。

出典:WORLD BANK FROUP「The POTENTIAL OF BLUE ECONOMY」p11

2. ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼす要因と成長の原動力

ブルーエコノミーには、さまざまな経済活動が関係しています。ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼす要因と、ブルーエコノミー発展の原動力となる取り組みについて解説します。

(1)ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼす要因

気候変動はブル―エコノミーに対して、海水の酸性化や海⾯上昇、⽔温上昇、海流の変化などの悪影響を及ぼします。中でも海水酸性化の影響は、⽣態系全体にわたって、最も深刻かつ広範囲に及ぶ可能性があります。

気候変動以外では、海洋資源の過剰な採取・採掘、海洋および沿岸の⽣息地や景観の破壊、海洋汚染による海洋資源の急速な劣化なども、ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼす要因です。

出典:WORLD BANK FROUP「The POTENTIAL OF BLUE ECONOMY」p10-11

(2)ブルーエコノミーにおける成長の原動力

ブルーエコノミーにおいては、さまざまな分野で海洋の利用による持続可能な成長が期待できます。

活動領域

成長の主な原動力

漁獲

食品や栄養の需要など

海洋生物資源の化学利用

ヘルスケアなど

ミネラル・淡水・エネルギー源の抽出

抽出物それぞれの需要

洋上発電

再生可能エネルギーの需要

海上輸送

貿易の発展や輸送需要など

海岸開発

沿岸部の都市化

レクリエーション

観光業

 

ブルーエコノミーでは、経済発展と海洋の健全性を両⽴可能なものとして考慮する必要があります。すなわち海洋に関連する活動を通じて、持続可能かつ公平な経済成長を⽀援することを⽬的とした⻑期戦略が重要です。

出典:WORLD BANK FROUP「The POTENTIAL OF BLUE ECONOMY」p9-10

3. ブルーエコノミーに取り組む企業事例

ブルーエコノミーの実現に向けて、さまざまな企業が新たな試みを行っています。日本企業におけるブルーエコノミーの取り組み事例をご紹介します。

(1)株式会社ニッスイ

株式会社ニッスイでは、海産物加工事業を営むニッスイグループにとって、水産資源の状態は中長期的な事業のリスクやチャンスに関わる重要な要素であると考えています。そのためニッスイグループ全体で、調達した水産資源の状態について調査を行っているほか、持続的な水産資源の利用のための取り組みを行っています。

たとえば、目的とする魚以外の生物を獲ってしまう混獲を減らすため、小型魚種やサイズの小さい魚が漁具の特定のサイズの穴を通って逃げることができる新たな漁法(PSH)を、グループ会社が開発しています。

出典:株式会社ニッスイ「天然水産資源の持続的な利用」

(2)株式会社MOL PLUS

スタートアップ投資事業を行う株式会社MOL PLUS(以下MOL PLUS)は、英国のMocean Energy Ltd.(以下Mocean)と相互協力の覚書を締結し、同社への出資を決定しました。

Moceanは波の振動を利用して電力を生成する波力発電によって、海中の検査・保守機器に電力を供給するデバイスを開発し、CO2回収・貯留市場に供給しています。MOL PLUSではMoceanの技術が、脱炭素化や多様なエネルギーミックスに大きく寄与する事を期待しています。

出典:株式会社MOL PLUS「MOL (Europe Africa)・MOL PLUSと英Mocean Energy社が、海上オフグリッド電源ソリューションや波力発電の社会実装を目指す覚書を締結」(2023/11/13)

(3)株式会社ダイセル

化学品事業者である株式会社ダイセル(以下ダイセル)では、海洋分解性に優れた天然由来素材「高生分解性酢酸セルロース・CAFBLO(キャフブロ)」を開発しています。酢酸セルロースは、木材などから得られたセルロースと酢酸から作られる素材です。

プラスチック材料と同様に加工することができますが、使用後は水と微生物の働きで自然に還ります。ダイセルでは海洋プラスチックごみ問題に対する解決策とすることを目指し、CAFBLOの用途開拓を進めています。

出典:株式会社ダイセル「海洋分解性に優れ環境に優しい天然由来素材『高生分解性酢酸セルロース』」

(4)株式会社イノカ

コンサルティングやシステム開発を手がける株式会社イノカでは、人とマングローブ林の持続可能な営みをつくる「ブルーフォレストプロジェクト」を開始しました。赤道付近の地域に分布するマングローブ林は、多くの生き物が暮らす生物多様性の中心ですが、人間の経済活動によって急激に面積を減らしています。

マングローブ林がなくなると生態系に打撃が与えられ、水産資源に依存している沿岸地域の人々の生活を困窮させ、さらに大量のCO2が大気中に放出されることにもなります。イノカは自社の持つ環境移送技術を活用して、マングローブ林の保全や活用の研究などを行う予定です。

出典:株式会社イノカ「ブルーカーボン生態系としても注目が集まるマングローブ林を環境移送し、都市部でのマングローブ研究・保全を加速する『ブルーフォレストプロジェクト』を立ち上げ」(2023/10/12)

4. まとめ:ブルーエコノミーについて理解し、持続的な海洋経済を実現しよう!

ブルーエコノミーは、持続可能な海洋利用と経済発展を両立させるという活動です。人間の経済活動によって海洋環境が悪化しており、海洋に文化や経済を依存している島や沿岸の開発途上国の生活にも影響を与えています。

特に気候変動や海洋資源の乱獲、海洋汚染などが、ブルーエコノミーへ悪影響を及ぼします。一方持続可能な海洋利用は、経済成長の大きな原動力でもあります。このため日本でも多くの企業が、ブルーエコノミーへの取り組みを進めています。

ブルーエコノミーについて理解し、企業における事業活動と海との関わりを見直していくことで、世界中が公平に発展できる持続的な海洋経済を実現しましょう。

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