CCS・CCUSとは?新しいCO2の活用方法と今後の見通しについて解説

CCSやCCUSの実用化及び市場流通への見通しについて、わかりやすくご説明します。SDGsやパリ協定における気温上昇抑制へ寄与することを目標に、人為的起源で大気へ放出されたCO2を低コストで削減する方法として、大気中のCO2を回収し地下に貯蔵するCCSやCCUSが現在注目されています。

地球温暖化への危機感が増すなかで、その対策として期待も同様に高まっていますが、一方で費用や量的な寄与に加え、リスクや発展性に関する問題も指摘されています。本記事では、CCS・CCUSについて、概要から実用化への課題、今後の見通しについて解説していきます。

目次

  1. CCS・CCUSの概要

  2. CCS・CCUSの実用化への課題

  3. 今後の市場見通し

  4. まとめ:CO2の回収にも目を向け、活用しながらカーボンニュートラルを目指そう!

1. CCS・CCUSの概要

CCS・CCUSともに基礎となる技術は昔からありましたが、カーボンニュートラルの考えが浸透し、G8洞爺湖サミットでCCSに関する宣言が成された2008年以後により研究が進められるようになりました。ここではCCSとCCUSについて、仕組みと活用方法を解説します。

(1)CCSとは

CCSとは、Carbon dioxide Capture and Storageの略語で、二酸化炭素を回収し貯留する技術を意味します。気候条件に依存せず迅速に電力を生成できる火力発電は、エネルギーを安定して供給する上で重要な役割を果たす電源ですが、環境問題の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出します。そこで、火力発電からの二酸化炭素排出を削減するための策として、放出されたCO2をほかの気体から分離して集め、地中深くに再び戻すというCCSの方法が注目されています。

CCSの流れ

出典:経済産業省『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」』

(2)CCUSとは

CCUSとはCarbon dioxide Capture、 Utilization and Storageの略語で、二酸化炭素の回収・貯留だけでなく、活用し再利用しようとする技術です。CCSで集めたCO2を活用し、化学薬品の原材料や工業での直接利用を行い、炭素の循環利用を推進します。

例えば再生可能エネルギー由来水素とCO2を反応させると、メタンなどの化学原料を生産することができます。これにごみ焼却などといったCCUを組み合わせることで、炭素を循環して利用することができます。

出典:経済産業省『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」』

出典:産業総合研究所『CCS/CCUS とは?  ~二酸化炭素の分離・回収・貯留・利用技術~  科学の目でみる、 社会が注目する本当の理由』

出典:環境省『CCUSを活用したカーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組み』p.2,3,4

2. CCS・CCUSの実用化への課題

CCS技術は、エネルギー供給の持続性を強化し、排出削減に課題を抱える産業にとって必要不可欠です。これらの技術は今後、企業の立地決定にも大きな影響を与え、日本の経済発展や雇用創出の鍵を握る可能性があるでしょう。経済的に十分な実行可能性を確立し、市場への安定した参入、投資の必要性が強調される中、実用化への課題も指摘されています。

(1) 大幅な投資の必要性

グローバルCCSインスティテュート(GCCSI)によれば、2021年時点で進行中のプロジェクトによる二酸化炭素の年間回収量は111メガトンとされています。さらに、国際エネルギー機関(IEA)の持続可能な開発シナリオ(SDS)を達成するためには、2050年までに毎年100の大規模CCS施設が必要であり、そのためには総投資額として6500億から1.3兆米ドルが必要とされています。

 公的資金の増加に加えて、民間資金の大幅な動員が不可欠ですが、政策が不透明であったり、法制度や将来的な事業収益の見通し難があったりすることから、資金供与の前提の整備が不十分とされ、計画実行に至らないケースが多々あります。

出典:新地菊子『CCS・CCUS に係るファイナンスの動向と炭素クレジット - CCUS のスケールアップに必要なファイナンスの課題と展望-』p.4,5(2022)

(2) CSSによる影響と責任

万が一CCSで長期的に貯蔵された地下の二酸化炭素が海洋や大気に放出してしまった場合には、地元、地域、および地球規模に大きな影響を与えることが懸念されます。これらは人の健康と安全に対する潜在的な影響、CO2 漏洩と塩分の移行による地下水及び深海水への影響、海洋生物及び生態系への影響を誘発するだけでなく、地震活動等のリスクもあります。さらに、漏洩を検出するためのモニタリング手法も未確立であり、その結果、リスクを質的および量的に予測することが難しいという課題もあります。

これらの潜在的なリスクは、CCS事業に大きな経済的損失をもたらすだけでなく、高い資本コストと潜在的な投資者の意欲を減少させることにより、CCS事業への投資における重要な障害となる可能性があると考えられます。

出典:柳憲一郎、小松英司、大塚直『わが国の CCS の法政策モデルとアジア地域での法制度・政策の共通基盤に関する研究』p.2(2019)

出典:認定特定非営利活動法人 気候ネットワーク『CO2回収・利用・貯留(CCUS)への期待は危うい』p.3(2019)

(3) 社会的合意の獲得

最近の傾向として、再生可能エネルギーによる電力が注目される中、石炭火力発電は反対運動や訴訟が増加しており、多くの銀行や保険会社が融資を制限しています。このような状況の中で、二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電所の新設や存続を正当化し、さらには追加のコストをかけてCCS技術を導入することの合理性を説明するのは困難だと思われます。

出典:認定特定非営利活動法人 気候ネットワーク『CO2回収・利用・貯留(CCUS)への期待は危うい』p.2(2019)

3. 今後の市場見通し

(1)ポリシーミックスの必要性

上記の課題を踏まえ、CCS技術を導入し普及させるためには、まずCCS専用の法枠組みを構築し、その法の下で効果的な政策手法を適切に組み合わせたポリシーミックスを策定する必要があります。さらに、CCS事業のコスト効率化、合理化、商用化、事業の規模拡大、インフラ整備等の政策が重要であり、法規制や採用される政策手段の効果、経済的・社会的影響を評価し、長期的かつ適切な実施管理を確保する合理的なアプローチが求められます。

出典:柳憲一郎、小松英司、大塚直『わが国の CCS の法政策モデルとアジア地域での法制度・政策の共通基盤に関する研究』p.3,4(2019)

(2)国内外における市場動向

CCSの市場におけるビジネスモデルの実現見込みに一定の不透明性が指摘されつつも、諸外国では着々と政府の支援制度が確立しつつあります。

  • アメリカ

 2008 年に先進的石炭ベースの発電技術のプロジェクトに関して税制上の優遇措置を定める法律が施行され、さらに2018年には45Q Tax Credit(税控除)により、CO2の貯蔵、CCU、CO2回収プロジェクト等に適用される税額控除が導入されています。

  • イギリス

イギリス政府は、風力、CO2回収、水素といったクリーンエネルギー分野への投資を通じて、新しいグリーン産業革命を牽引しようとする意向を、「Ten Point Plan for a Green Industrial Revolution (2020年)」において表明しました。この計画では、2023年から2032年の間にイギリスが排出するCO2を1億8000万トン減らすための10の戦略が提示され、そのうちの1つであるポイント8は、CCUSへの投資を指し、10億ポンドのファンド支援が提案されました。

CCS・CCUSはその手段や活用方法が多く、幅広い業界での活用が見込まれます。特に技術開発の進む欧州・アメリカを中心に、技術開発に対して国が助成金を出している国もあり、活用と開発ともに伸長が見込まれる市場と言えるでしょう。

一方で、日本では経済産業省が中心となってロードマップが作成されているものの施策は少なく、各企業が自主的に技術の開発や交換を進めている状況です。

電化や水素化などによる脱炭素化が困難な素材産業や石油精製産業、および火力発電所はCO2排出を避けることができない領域であり、脱炭素化の取り組みが特に重要です。CCS・CCUSは他資源に用いた技術を応用できるものも多くある分野のため、今後も市場の動向に変化が起こる可能性は十分にあるでしょう。

出典:横山隆壽『UNFCCC Post-COP26 の課題 ―パリ協定の実効性、エネルギー保障、石炭火力、CCS』p.13,16,17(2014年8月1日)

出典:経済産業省『CCS長期ロードマップ検討会 最終とりまとめ 説明資料』p.2,4,5(2023年3月)

4. まとめ:CO2の回収にも目を向け、活用しながらカーボンニュートラルを目指そう!

低炭素水素への関心が高まる中、特に欧米を中心にCCUSおよびCCSの商業化への取り組みが活発化しています。これらの技術は開発と多様な業界への適用の両面で進展しており、市場は将来も急激に変化すると見込まれます。

総合的な調査、実証、事業化のステップを経ることが、成功事例を生み出し、カーボンニュートラルの達成への貢献を増すため、今後も継続して情報を収集し注目していくことが重要です。

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