世界の食料問題と現状|気候変動が与える労働性低下について

私たちが生きていく上で欠かせない「食事」。世界ではさまざまな場面で「食料問題」が課題とされています。紛争や武力衝突による避難、気候変動による食べ物不足、またそれによる食料の価格高騰など様々な問題が絡み合って十分に食料を確保できない状況が続いています。

世界の飢餓人口は一時期減少を見せましたが、これらの問題により再び増加傾向にあり、今でもその問題は世界中で対策して行かなければなりません。

現在、世界ではどのような問題があり、問題に対してどのような取り組みを行っているのでしょうか。この記事では、世界の食料問題や気候変動による影響についてまとめています。

目次

  1. 食料問題の概要

  2. 気候変動による生産性低下

  3. 世界の食料問題への取り組み

  4. まとめ:食料問題の現状と今後の取り組みについてを知ろう

1. 食料問題の概要

食料問題と概要とその背景について、説明していきます。

(1)食料問題について

食料問題は、世界中で見られる複雑な問題です。この問題は、単に食べ物が不足しているということだけでなく、その背景には多様な要因が絡み合っています。食料問題の主要な側面を以下に詳述します。

食料の不足について

  • 栄養不足: 世界の多くの地域、特に発展途上国では、人々が十分な栄養を摂取できていない状況があります。これには飢餓だけでなく、栄養素の偏りも含まれます。

  • 食料の分配不均衡: 世界には食べ物が十分にあるにも関わらず、その分配が不均衡であるため、一部の地域では過剰な食料があり、他の地域では極端な不足が生じています。

食料問題の原因について

  • 気候変動: 気候変動による極端な気象条件は、農業に悪影響を及ぼし、作物の生産量を減少させる原因となっています。

  • 経済的・社会的要因: 貧困、経済的不平等、教育の欠如、インフラの不備などが、食料へのアクセスを制限しています。

  • 政治的・紛争の要因: 政治的な不安定さや紛争は食料供給ができなくなります。

食料問題による影響について

  • 健康問題: 栄養不足は、成長障害、疾病のリスク増加、学習能力の低下など、健康に深刻な影響を与えます。

  • 経済的影響: 食料不足は、労働力の低下や経済成長の妨げとなる可能性があります。

食料問題の解決には、これらの要因を包括的に考慮し、持続可能な方法での食料生産と分配を目指す必要があります。それには、政府、非政府組織、民間企業、そして個々の市民の協力が不可欠です。

出典:アジア経済研究所『目標2 飢餓をゼロに――現在と将来の世代に十分な食料を供給する(清水 達也)』(2022年1月)

(2)世界の飢餓の現状

世界の飢餓の現状は深刻で、数億人が影響を受けています。2018年の調査によると、世界の飢餓人口は8億2千万人以上で、世界総人口の約9人に1人が飢餓に直面しているという状態です。特にアフリカ、アジア、ラテンアメリカの一部地域で顕著であり、主な原因は経済的不平等、気候変動、政治的・軍事的紛争です。

これらは農業生産に悪影響を及ぼし、食料へのアクセスを制限しています。国際機関やNGOは食料援助を行っていますが、問題は根深く、持続可能な農業の推進や経済的安定化、教育の向上が長期的な解決策として重要です。また、国際的な協力と資源の共有が必要とされています。

出典:アジア経済研究所『目標2 飢餓をゼロに――現在と将来の世代に十分な食料を供給する(清水 達也)』(2022年1月)

出典:世界食料デー World Food Day 2019

2. 気候変動による生産性低下

気候変動による食料供給等に与える影響について解説していきます。

(1)気候変動とは

気候変動は、地球の気候システムにおける長期的な変化です。これには地球の平均気温の上昇、気象パターンの変化、極端な天候イベントの増加が含まれます。気候変動には自然の要因と人為的な要因があります。自然の要因には、大気の内在的変動、海洋の変動、火山活動によるエアロゾルの増加、太陽活動の変化などがあります。特に、海洋は大気と熱や水蒸気を交換し、気候に大きな影響を与えます。一方、人為的な要因としては、化石燃料の燃焼による二酸化炭素の増加、森林破壊などがあります。これらは地表温度の上昇や水循環、地球表面の反射率の変化を引き起こします。化石燃料の大量消費による二酸化炭素の増加に伴う地球温暖化への懸念が増大しており、人為的な気候変動への注目が高まっています。

出典:気象庁『気候変動』

(2)気候変動が食料供給に与える影響

気候変動が引き起こす気温の上昇や異常気象によって、世界では食料へのさまざまな影響が懸念されています。

平均気温が上昇することにより、穀物収量の増減や、畜産や養殖業における疾病発生、漁獲量への影響が指摘されています。  

高緯度地域では収量の減少幅が小さくなるか、作物によっては収量が増加します。逆に、 低緯度地域では収量の減少幅が大きくなります。トウモロコシの収量は、大半の地域の大部分の気候シナリオ下で減少し、より 極端なシナリオになるにつれ、減少幅も大きくなります。

コムギの収量に対する影響は全球で見れば軽微ですが、 南アジアとサハラ以南アフリカでは顕著になります。 頻発化が予想される熱波による暑熱ストレスは疾病に対する家畜の抵抗力を弱め、繁殖性や産肉量、泌乳量が低下します。気候変動や降水量変化は、寄生虫や疾病の発生分布に変化をもたらします。 海水温の上昇により、一部魚種の減少、回遊息の変化、疾病リスクの増大が指摘されています。

大気中の CO2 濃度の上昇が海洋酸性化を引き起こし、貝類やイカ類、マングローブや珊瑚礁に関係する漁業に甚大な影響を及ぼします。 赤道直下付近の熱帯海域では温度が上がり過ぎ、漁獲量が激減することも予想されています。さまざまな国々が気候変動により、食料供給に多くの影響を受けています。

出典:農林水産省『4.気候変動が食料供給等に与える影響』P.58

(3)気候変動の労働生産性低下

気候変動による温暖化は、特に屋外労働者に影響を及ぼし、労働生産性の低下につながっています。高温による熱ストレスは、疲労を増加させ、集中力や身体的能力を低下させ、熱中症のリスクが高まり、労働者の欠勤が増えることがあります。これは農業や建設業など、屋外での作業が多い分野に特に顕著です。

経済学者によると、気温の上昇は全体的な経済生産性にも影響を及ぼし、特に熱帯地方や乾燥地帯での影響が大きいとされています。労働生産性の低下は経済成長の鈍化につながる可能性があり、適応策として労働環境の改善や熱中症対策の強化が求められています。

出典:国連大学『気候変動の経済分析において見逃される生産性損失 』(2014年11月4日)

3. 世界の食料問題への取り組み

世界の食料問題に対し、国際機関や政府は持続可能な農業推進、食料援助、技術革新、政策改革を進めています。詳しい取り組みについて説明します。

(1)食料問題の取り組み

食料問題への具体的な取り組みの一例として、国際機関による「気候スマート農業」の推進が挙げられます。この取り組みは、気候変動に強く、環境に優しい農業方法を実践することを目的としています。

気候スマート農業は、気候変動に対応しながら持続可能な農業を実現するためのアプローチです。この取り組みは、農業生産性の向上、気候変動への適応、温室効果ガス排出の削減という三つの主要な目標を持っています。

スマート農業の実践には、以下のような具体的な方法が含まれます。まず、持続可能な土地管理と水資源の効率的な利用により、農地の肥沃度を保ちつつ、収穫量を増加させます。また、灌漑システムの改善や雨水収集システムの導入によって、水資源の利用効率を高めることが重要です。

さらに、気候に強い作物の品種を導入し、干ばつや高温などの極端な気候条件に耐えられる農業システムの構築を目指します。これに加えて、農村コミュニティへの教育と技術支援を通じて、持続可能な農業方法の普及を図ります。

スマート農業の実施は、地球温暖化の進行を緩和し、食料安全保障を強化する上で重要です。国際機関、政府、NGO、農業コミュニティが連携し、スマート農業の理念と実践を広めることで、持続可能な農業の実現に貢献しています。この取り組みは、将来の食料危機に対処し、地域コミュニティの脆弱性を減少させるために不可欠です。

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構『スマート農業の実現に向けた取り組みの 現状と今後の展望』

(2)日本の食料支援の取り組み

日本の食料問題に対する取り組みは、主に食料自給率の向上、食品ロスの削減、そして持続可能な農業の推進に焦点を当てています。以下に、これらの主要な取り組みを詳述します。

1.食料自給率の向上

  • 国産農産物の利用促進: 国産農産物の消費を促進することで、国内農業の活性化を目指しています。

  • 新技術の導入: 農業分野での先進技術の導入や革新的な栽培方法の開発により、生産効率を向上させる取り組みが進んでいます。

2. 食品ロス削減

  • 「食品ロス削減推進法」: 2019年に施行されたこの法律は、食品ロスの削減に向けた国と企業の役割を明確にしています。

  • 消費者啓発: 消費者に対して、食品の適切な保存方法や賞味期限・消費期限の違いについての啓発が行われています。

3. 持続可能な農業の推進

  • 環境に配慮した農法: 有機農業や減農薬栽培の促進を通じて、持続可能な農業の実現を目指しています。

  • 地域ごとの特色ある農業: 地域特有の農産物を活用した地産地消の推進や、地域ごとの特色ある農業の振興が進められています。

4. 国際協力

  • 海外への農業技術支援: 日本は海外の途上国に対して農業技術支援や食料援助を行っており、国際的な食料問題への貢献を目指しています。

これらの取り組みは、食料安全保障の強化と持続可能な食料システムの構築に向けて、国内外で進められています。日本は、限られた自然資源と高い食料依存度の中で、これらの課題に取り組んでいます。

出典:食品ロス統計調査(世帯調査・外食産業調査):農林水産省

出典: 消費者庁「食品ロス削減関係参考資料」

4. まとめ:食料問題の現状と今後の取り組みについてを知ろう

世界的な食料問題は、人口増加、気候変動、資源の不均等分配によりますます深刻化しています。世界中で年間25億トン以上の食品ロスが発生しているのにもかかわらず、8億人を超える人々が飢餓で苦しんでいるという現状があります。企業として、これらの課題への取り組みは不可欠です。持続可能な農業の促進、食品ロスの削減、新技術の導入、地産地消の推進を通じて、食料安全保障の向上に貢献しましょう。

また、国際協力を含む広範な取り組みにより、世界的な食料問題への対処を目指すことが重要です。貴社の協力が、持続可能な未来への大きな一歩となります。環境に配慮した製品開発や事業戦略を通じて、このグローバルな課題に積極的に取り組んでいきましょう。

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