航空業界におけるCORSIA適格とは?その意味と今後の動向について解説

航空業界の脱炭素に向けた取り組みであるCORSIAとその適格クレジットや燃料についてご紹介します!CORSIAは、航空業界でカーボンニュートラルの実現を目指すには不可欠な要素です。日本もCORSIAに参加していることから、航空業界に関わる企業は、CORSIAが適格とするクレジットや燃料について理解を深める必要があります。

ここでは、航空業界に必要とされるCORSIAの基礎知識やCORSIA導入の背景、日本の航空業界におけるCORSIAの今後の動向、CORSIA適格を視野に入れた企業の事例などをわかりやすくご紹介します。

目次

  1. 航空業界におけるCORSIA適格とは

  2. 日本におけるCORSIA導入の背景

  3. 日本の航空業界におけるCORSIAの今後の動向

  4. 航空業界におけるCORSIA適格に向けた取り組み事例

  5. まとめ:航空業界におけるCORSIA適格に関する動向に注目し変化に素早い対応を!

1. 航空業界におけるCORSIA適格とは

複数の国をまたぐ移動手段である航空機では、各国がパリ協定に基づいた削減目標を適用することが難しいために、国際民間航空機関(ICAO)が国際航空全体の削減目標等を設定しています。ここでは、その一つであるCORSIAの基礎知識と、CORSIAが提示している炭素クレジットや燃料に関する基準をご紹介します。

CORSIAとは

CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)とは、「国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み」のことです。パリ協定の各国削減目標の対象とならない国際航空では、国際民間航空機関(ICAO)が温室効果ガス削減目標を設定しています。

ICAOでは、技術、運用改善、代替燃料(SAF)での排出量削減に加え、どうしても削減できない炭素は、炭素クレジットを活用することによる、2020年水準からの温室効果ガス排出量の増加防止を目標としており、この枠組みを定めるのがCORSIAです。2023年5月の段階では、日本を含む193ヵ国がCORSIAに参加しています。

出典:自然エネルギー財団『[ポジションペーパー] 炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ』(2023/05/12)

CORSIA適格クレジットとは

炭素オフセット(=カーボンオフセット)とは、自社の温室効果ガス排出量を認識し、積極的に削減に取り組むとともに、削減が難しい部分は他の場所で発生した排出量削減・吸収量等(クレジット)を購入・支援して埋め合わせる手法です。

出典:農林水産省『カーボン・オフセット』(2020/08/11)

CORSIAは国際航空で活用される炭素クレジットについて、方法論や透明性、実証性など、19の項目からなる適格要件を設けており、その審査を行うとともに、適格したクレジットを公開しています。CORSIA適格クレジットには、American Carbon Registry (ACR)やArchitecture for REDD+ Transactions (ART)が挙げられ、日本でもJ-クレジットが申請を行っています。

出典:ICAO「CORSIA Emissions Unit Eligibility Criteria」p.5~8

出典:ICAO「CORSIA Eligible Emissions Units」p.2~10

出典:J-クレジット「第30回J-クレジット制度運営委員会資料」p.4,5(2023/04/28)

CORSIA適格燃料とは

CORSIA適格のSAF(CEF:CORSIA適格燃料)は、ISCC(国際持続可能性カーボン認証)とRSB(持続可能なバイオ燃料のための円卓会議)の2つのスキームによってのみ認証されます。

CEFの製造を目指す企業は、ISCC CORSIA PLUSもしくはRSBの認証スキームに則って、通常の航空燃料と比較すると正味10%以上の温室効果ガスの削減をしていること、原生林や湿地、泥炭地のような炭素貯留量の高い土地から2008年以降に転換されたり、それらの炭素ストックを減少させたりするような土地のバイオマス由来でないことを示さなければなりません。

また、2024年以降ではこれらに加え、土地の炭素貯留量や水利用、土壌の健全性、大気汚染、生物多様性の保全、適正な化学物質の使用、人権、先住民の土地の利用権、水利用の権利、貧困地域の発展、食料安全保障の各項目に設けられた基準を満たさなければなりません。

出典: 国立研究開発法人 科学技術振興機構『1.2 世界の潮流と日本の位置づけ』p,45,46.(2023/04/14)

2. 日本におけるCORSIA導入の背景

日本は参加が義務化される2027年以前よりCORSIAに参加し、航空業界の脱炭素化に取り組んでいます。ここでは航空業界の現状や、CORSIA導入に至るまでの背景をご紹介します。

航空業界におけるCO2排出量

航空業界における2021年度のCO2の直接排出量は、国内航空分野は3億2793万トン(CO2換算)、国際航空分野では3億8446万トン(CO2換算)となっています。2030年度には、CO2直接排出量が国際航空分野では3億4144万トン(CO2換算)、国際航空分野では5億4145万トン(CO2換算)まで増加する見込みとなっています。

出典:独立行政法人日本貿易振興機構『国際航空で2050年にCO2排出実質ゼロへ、ICAOが採択(世界) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース』(2022/10/12)

日本におけるCORSIA導入の背景

ICAOによると、航空業界におけるCO2排出量は、2050年までに現在の2〜5倍に増えると予測されています。島国である日本にとって、航空機は国際的な移動手段として重要なものです。

社会的な責務を果たすとともに、航空産業ならびに海外からの旅行産業を持続的に発展させていくには、業界を通した温室効果ガス排出削減への取り組みが不可欠です。そのため、2021年にはCORSIAを導入、2022年7月には国際航空分野において2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、国際的なリーダーシップを発揮して航空業界の脱炭素化に取り組んでいます。

出典:航空連合『2022-2023 産業政策提言』p,1,2.(2022/10/14)

3. 日本の航空業界におけるCORSIAの今後の動向

航空業界では、CORSIAのもと脱炭素に向けた取り組みが進められています。ここでは、日本の航空業界におけるCORSIAの今後の動向をご紹介します。

航空業界における脱炭素へのロードマップ

航空業界はCO2排出量削減の長期目標として、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標として掲げています。その目標に向け、2035年までの目標としてCORSIAの「2020年以降の国際航空全体のCO2排出量を増加させない」ことを短中期目標とし、1.新技術の活用、2.運航改善、3.SAF(持続可能な航空燃料)の活用、4.炭素クレジットの取り組みを進めています。

2024年度〜2035年度のCO2排出量のベースラインは、「2019年度のCO2排出量×85%」とし、それ以降は段階的にCO2排出量を削減し、2050年のカーボンニュートラル達成を目指します。

航空業界における脱炭素へのロードマップ

出典:国土交通省『令和5年3月30日 航空局』p,3.(2023/04/10)

カーボン・クレジット市場の活性化

炭素オフセットは、CO2排出量のベースラインに対して実際のCO2排出量が上回った場合に、その差をクレジットで埋める手法(=カーボン・クレジット)です。日本のカーボン・クレジットには、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用による温室効果ガス排出削減量を認証する制度「J-クレジット」がありますが、CORSIA適格には認定されておらず、航空産業だけでなく他の産業も含めた市場全体で、J-クレジットの積極的な活用などカーボン・クレジット市場の活性化が重要とされています。カーボン・クレジットの考え方

出典:経済産業省『カーボン・クレジット・レポートの概要』p,15.p,16.p,20.(2022/06/14)

出典:航空連合『2022-2023 産業政策提言』p,2.(2022/10/14)

出典:自然エネルギー財団『[ポジションペーパー] 炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ』(2023/05/12)

CO2排出量削減効果のあるSAFの開発

SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは、廃棄物や再生可能エネルギーを原料とした持続可能な航空燃料のことで、従来のジェット燃料と比較すると、約60〜80%のCO2排出量削減効果があります。

2020年時点での世界のSAF供給量は、ジェット燃料のわずか0.03%(約6.3万kl)の供給量となっており、2030年のSAF使用量を「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」ことを目標とする日本においては、2030年度に必要なSAF供給量を170万klと見込んでいることから、かなりのSAFが不足していることがわかります。国産のSAF開発が進められる中、SAFの原料となる廃食油の3割が海外に輸出されており、その廃食油を使って製造されたSAFを輸入している現状にあります。

出典:航空連合『2022-2023 産業政策提言』p,2.(2022/10/14)

出典:国土交通省『SAFとは何か?』(2023/02/02)

出典:国土交通省『持続可能な航空燃料(SAF)の 導⼊促進に向けた施策の⽅向性について (中間取りまとめ(案)』p,2.p,3.p,7.(2023/05/26)

4. 航空業界におけるCORSIA適格に向けた取り組み事例

最後に、航空業界でCORSIA適格のクレジットや燃料の開発を目指している企業の事例をご紹介します。

日本航空株式会社

日本航空株式会社は、長期目標として2050年にCO2排出量を実質ゼロにすることを目標に、2030年度までに全燃料搭載の10%をSAFに置き換えるとしています。SAFにおいては、海外での共同調達を進めていますが、安定したSAFの供給確保のためSAFの製造者と利用者とともに一連のサプライチェーンでの協議が進められています。

出典:国土交通省『JALグループにおける SAFの取り組みについて』p,2.p,3.(2022/04/22)

全日本空輸株式会社

全日本空輸株式会社は、CORSIAの対象となる国際線に加えて、CORSIA対象外の国内線の燃料においてもSAF導入の体制を構築する考えを示しています。また、CORSIA適格クレジットにおいては、日本のクレジットの取り扱いがないことから、炭素オフセットのクレジットを利用すると海外に資金が流れることを課題とし、再生エネルギーによる日本のクレジット創出とCORSIA適格化で、国内で資金を循環させる必要があると主張しています。

出典:国土交通省『成田空港における CO2排出量削減に向けた取り組みについて ~サステナブルNRT2050』p,16.p,18.(2021/06/22)

ENEOSホールディングス株式会社/ENEOS株式会社

エネルギー事業を展開する、ENEOSホールディングス株式会社/ENEOS株式会社は、航空機の燃料となるSAFの安定した供給を確保するため、自社でのSAF製造体制を早期に構築すると同時に、SAF輸入体制の確立を進めています。また、SAFの原材料の不足にあたっては、再エネ由来のCO2フリー水素とCO2の合成反応により製造される液体燃料の再エネ合成燃料の開発・実装を目指しています。

出典:国土交通省『航空分野におけるGHG削減に向けた ENEOSグループの取組みについて』.p,3.p,5.(2022/04/25)

5. まとめ:航空業界におけるCORSIA適格に関する動向に注目し変化に素早い対応を!

航空業界のCORSIA適格についてご紹介しました。航空業界では、2050年度のCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現を目指しています。CORSIA適格は、国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組みのことで、日本では、CORSIAの「2020年以降の国際航空全体のCO2排出量を増加させない」ことを2035年までの目標としています。

また、SAFはCO2排出量削減に大きな効果があることから、積極的な導入が求められます。今後の航空業界のCORSIA適格に関する動向に注目し、変化にスピーディーに対応できるようにしましょう。

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サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説