石油の需要と中国の関係性とは?世界の石油需要を解説!

石油や石炭は燃料として燃焼させると、エネルギーを得ることができると同時に二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを排出します。化石燃料は限られた量しかなく、石油や天然ガスは約50年、ウランや石炭は約100年で枯渇すると予測されています。

そのため、新たなエネルギー源の開発への取り組みが盛んになっています。しかし、世界的にエネルギー消費量は増加しているため、化石燃料にも頼らざるを得ないというのが現実です。中でも、石油の需要は中国が大きなカギを握っています。そこでこの記事では、世界の石油の需要と中国の関係性についてわかりやすく解説します。

目次

  1. 世界のエネルギーの主力とは

  2. 石油の需要と中国の関係性とは

  3. まとめ:今後のエネルギーの消費予想

1. 世界のエネルギーの主力とは?

現在、世界のエネルギーの主力となっているものはどのようなエネルギーなのでしょうか。

(1)世界のエネルギーの動向

世界のエネルギー消費量の動向を見ると、石油がエネルギー源で一番多く、エネルギーの主力を担っています。

世界のエネルギー消費量は経済成長とともに増加を続けています。石油換算で1965年の37億トンから年平均2.4%で増加し続け、2021年には142億トンに達しました。 2020年世界のエネルギー消費量は、新型コロナウイルス感染症の影響で前年比4.3%減少し、1945年以降最大の減少となりました。

しかし、2021年には、経済回復も進み、前年比5.5%増加し2019年を超える水準まで回復しました。2000年代以降、アジア大洋州地域では中国やインド等の消費量の伸びが高くなっています。

2021年における世界のエネルギー消費量の推移(エネルギー源別、一次エネルギー消費量)は以下の通りです。

  • 石油 31%

  • 石炭 26.9%

  • ガス 24.4%

  • 水力 6.8%

  • 他再生可能エネルギー 6.7%

  • 原子力 4.3%

出展:経済産業省 資源エネルギー庁『令和4年度エネルギーに関する年次報告 (エネルギー白書2023)』p.115-116

(2)日本国内のエネルギーの動向

2017年度の日本における「発電量の電源別の割合」は天然ガス39.5%、石炭32.7%、石油等8.7%、水力7.9%となっています。このように、発電においても、天然ガス、石炭や石油などに頼っている事がわかります。

主要国の発電電力量に占める再エネ比率の比較(2017年)

出展:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2019年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

2. 中国国内でのエネルギー需要

これまで、世界や日本のエネルギー事情について解説してきました。前述したように、2000年代以降、中国の消費量は世界的に見ても消費量が世界2位となっています。そこで、その理由について解説します。

(1)中国の石油の消費量 

中国は世界2位の石油消費がされている国で、世界全体の消費量の1割を占めています。また、2017年に米国を上回る世界1位の石油輸入国となっており、2022年の中国の1日辺りの石油消費量は15,009,000バレル(2,386,240リットル)となっています。

中国では石油消費の約4割が交通輸送分野で使われています。経済・製造業の発展に伴う物流規模の拡大、発電用石炭の輸送増加などにより2012年頃までは軽油の消費が多かったのですが、その後産業構造の変化、省エネ・エネルギー代替、環境規制政策等により微減しています。

一方で中間層の増加、ライフスタイルの変化によるマイカー志向、レジャー需要の高まりにより、ガソリン消費は2011年以降伸びており、2018年にはガソリン・軽油生産費が1.1となっています。しかし、燃費規制強化、EV促進政策、天然ガス自動車や高速鉄道の普及、発展による代替でガソリンの消費の伸びも鈍化に転じています。

 出展:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構『中国の石油需給 ~原油輸入増、石油製品輸出増、輸送分野の石油代替進展~』

出典:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構『2022年の石油市場を振り返る』

(2)中国のエネルギー政策

中国ではガソリンや軽油の消費や CO2対策のため、自動車の購入や走行について様々な規制が設けられ、エネルギー政策に取り組んでいます。特に北京、上海などの大都市を中心に厳しい規制が設けられています。例えば、北京市ではナンバープレートが抽選となっており、運よく入手できたとしても走行可能日がナンバープレートの奇数、偶数日により規定されています。

また、上海市のナンバープレートは入札制であり価格は約150万円と車体価格を上回る状況です。しかし、新エネルギー車は走行可能日が限定されず、公共バス優先レーンを走って良いなどの優遇措置があります。そのため、新エネルギー車はさらに人気が高まっており、北京市では新エネルギー車のナンバープレートも数年待ちの状態です。これらの規制により、中国における乗用車販売台数は低迷していますが、それでもなお世界第一位の2808万台となっています。

出展:独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構『中国の石油需給 ~原油輸入増、石油製品輸出増、輸送分野の石油代替進展~』

(3)中国の石油消費のピークとは

発展途上国は交通量が増えるのに伴い、石油需要も増大が続くのが一般的ですが、中国では電気自動車(BEV・PHEVを中心とする新エネルギー車)の普及や鉄道の利用が急速に進んでいるため、今後石油需要は大幅に減少すると予想されます。

中国ではEV(中国では新エネルギー車“NEV”)が急速に普及しており、その他輸送分野における石油代替も進展し石油需要の伸びは2000年代に比べ緩やかになっています。しかし、自動車の保有台数の積み上がりとガソリンスタンド数、給油量の増加、航空燃料需要など自動車以外の輸送燃料の伸び、石化の需要を反映した精製・石化プラント増設の状況を踏まえると石油ピークが早期に到来したとしても中国の石油消費が急速に下落することは考えにくいでしょう。

出展:一般財団法人 国際貿易投資研究所『転換点に立つ資源・エネルギー問題』p131.

(4)中国の石油消費への対応

中国の石油会社3社が太陽光や風力などの再生可能エネルギー分野への投資を行うことを表明しており、2025年までの3年間で3社の投資額は合計で1000億元(約2兆円)以上に達する見通しで、中国石油化工(シノペック)は再エネ由来の水素ステーションの拠点数を大幅に増やす見込みです。

出典:日本経済新聞『中国石油3社、再エネ転換へ鮮明 3年で2兆円投資』(2023年4月5日)

3. まとめ:今後のエネルギーの消費予想を踏まえて、世の中のエネルギー動向を理解しよう!

中国は米国に次ぐ世界2位の石油消費国であり、世界の消費の1割強を占め、消費の7割を輸入に頼っています。2017年には、米国を上回る世界1位の石油輸入国となりました。2019年時点で世界の原油貿易の23%を中国が占めています。

地方製油所の台頭や製油所や貯蔵設備の増強により原油輸入が増加する一方で過剰能力による余剰のガソリン、軽油の輸出が増加しており、シンガポールの市況に影響を与えるなど中国の石油における影響力はかなり高くなっています。

解説してきたように、中国では、これまで経済・製造業の発展に伴う物流規模の拡大、発電用石炭の輸送増加などにより2012年頃まで中国の石油消費は軽油が牽引してきました。現在は、軽油は産業構造の変化、国内の厳しいエネルギー政策や環境規制政策等により横ばいから微減傾向となっていることがわかりました。

エネルギー需要は高まる一方ですが、近年では同時に環境問題について検討する必要が出てきています。エネルギーは身近に溢れている存在ですので、企業単位でもエネルギー消費について分析し、改善の余地があるかを検証してみましょう。

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