ISO30414とは?企業や事業者の事例も解説

最近注目されている国際基準「ISO30414」とはなにか、わかりやすく解説します!ISO30414は企業にとって最も重要な、「人的資本」に関係する指針です。事業を動かす原動力はやはり「人」であり、人的資本への投資はどの企業にとっても優先度の高い課題となっています。

ISO30414について理解し事業活動に役立てることによって、さまざまなメリットが期待できます。ISO3014を活用している企業や事業社の事例もご紹介します。

目次

  1. ISO30414の概要

  2. ISO30414が注目される理由

  3. ISO30414を活用する企業・事業者の事例

  4. まとめ:ISO30414について理解し、人的資本経営に取り組もう!

1. ISO30414の概要

ISO30414は、人的資本に関する国際的な情報開示基準です。ISOにはいろいろな基準がありますが、ISO30414はその中でも比較的新しく作られたものになります。ISO30414の概要について、解説します。

ISOとは

ISO(International Organization for Standardization=国際標準化機構)は、スイスのジュネーブに本部を持つ非政府国際組織です。169の国から標準化団体が加盟し、さまざまな国際規格を開発しています。ISOが開発した規格は24993個もあり(※2023年10月26日現在)、技術・管理・製造などあらゆる分野をカバーしています。

出典:ISO「About Us」

ISO30414とは

ISO30414とは、ISOが2018年12月に公開した、人的資本報告に関するガイドラインです。人的資本とは、使えばなくなる「資源」ではなく、適切な投資をすれば価値が増大する「資本」として労働力をとらえようという考え方です。ISO30414は、人的資本の組織への貢献を可視化し、労働力の持続可能性を支援することを目的として作られています。また企業だけでなく、官公庁や各種団体などにも適用することができます。

出典:ISO「ISO 30414:2018」

出典:経済産業省「人的資本経営コンソーシアム好事例集」p3-5

2. ISO30414が注目される理由

現在ISO30414は、さまざまな企業から注目されています。近年はサステナビリティなど企業の非財務情報への関心が高まっています。そのような状況下で、ISO30414へ視線が注がれる理由について解説します。

人的資本情報開示の必要性

企業価値の向上や成長には人的資本への投資が重要であるという考えが、企業や投資家の間で浸透しつつあります。従来、人的資本への投資は単に利益を減らすコストであるととらえられていたために、優先度の低いテーマでした。

しかし近年、人的資本や知的資本の量・質などの無形資産こそが、企業の競争優位の源や持続的な成長の推進力であるとの認識が広がったために、今では多くの投資家が企業の人的資本に関する情報開示を期待するようになりました。

2023年1月には「企業内容等の開示に関する内閣府令」が改正・公布され、人的資本情報開示は上場企業にとってIR上も必須の事項となっています。

出典:内閣官房「人的資本可視化指針」P1

出典:金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案に対するパブリックコメントの結果等について」

人的資本開示のフレームワーク

人的資本情報を開示すると言っても、唯一絶対の基準や方法があるわけではありません。人的資本情報開示のフレームワークは大きく分けると、原則や規範を示しつつ、具体的な開示内容は各社の裁量によるとした「原則主義」によるものと、具体的かつ詳細な開示項目があらかじめ設定された「細則主義」に基づくものがあります。

ISO30414は細則主義に基づくガイドラインとなっており、具体的な開示項目が挙げられています。

出典:内閣官房「人的資本可視化指針」P10

出典:ISO「ISO 30414:2018」

ISO30414を活用するメリット

ISO30414など人的資本情報開示のフレームワークにおいては、人的資本に係る指標が提示されています。単なる指標の公表にとどめず、経営戦略に連動させた人材戦略などを合わせて検討することで、企業価値向上につながる人的資本投資が促進されます。

またISO 30414では、全ての情報について開示すべきであるとはされていません。自社内で把握するべきもの・開示するべきものの両方について記載があり、開示項目検討にあたっての参考とすることができます。

出典:経済産業省(EY 新日本有限責任監査法人)「令和3年度産業経済研究委託事業(人的資本投資の実態把握等に関する調査)報告書」(2022/3)p45,93

ISO30414における主要なガイドライン

ISO30414で示されている人的資本情報開示についての主なガイドラインは以下の通りです。

  • コンプライアンスと倫理

  • コスト

  • 多様性

  • リーダーシップ

  • 組織文化

  • 組織の健康、安全、福祉

  • 生産性

  • 採用、モビリティ、離職率

  • スキルと能力

  • 後継者育成計画

  • 従業員の可用性

出典:ISO「ISO 30414:2018」

3. ISO30414を活用する企業・事業者の事例

実際にISO30414を活用している、企業や事業者の事例を紹介します。IRとして人的資本情報を開示するだけでなく、人事戦略の立案などにISO30414が役立っているケースも見られます。

三井化学株式会社

三井化学株式会社では、ISO30414の11項目/58指標に関するデータ抽出・分析を実施しています。ISO30414で定義されている「人的資本ROI」などを数年にわたってモニタリングすることで、従業員の生産性向上を目指しています。

出典:三井化学「人材マネジメント」

さいわいデンタルクリニック

北海道北広島市にある歯科医院「さいわいデンタルクリニック」は、人的資本に関する情報開示としてインターネット上で「People Fact Book」を公開しています。

開示項目には「社員に対するビジョン」「多様性」「エンゲージメント」など13項目があり、それらはISO30414をガイドラインとして作成されていることが記載されています。「ISO30414指標」というページではISO30414のガイドラインを列挙した上で、「PeopleFact Book」の中ではどの項目を開示しているかを明示しています。

出典:さいわいデンタルクリニック「People Fact Book 2022」p20

株式会社リンクアンドモチベーション

東京都中央区に所在する経営コンサルタント「株式会社リンクアンドモチベーション」は、日本・アジアでは初めてISO30414の認証を取得したことを2022年3月に発表しました。

また株式会社リンクアンドモチベーションは「Human Capital Report 2021」を発行しており、ISO 30414で定められたデータの開示に加え、組織戦略や経営方針なども示しています。このレポートでは特に「採用」「育成」「制度」「風土」について、詳細を紹介しています。

出典:リンクアンドモチベーション「日本・アジア初!人的資本に関する情報開示のガイドラインである『ISO 30414』の認証を取得!」(2022/3/31)

JPYC株式会社

暗号通貨「日本円ステーブルコイン」を発行する企業「JPYC株式会社」は、人的資本に関する情報開示として「人的資本レポート」を公開しています。

このレポートでは、ISO30414などを参考にした6つの指標(基本情報・生産性・エンゲージメント・ダイバーシティ・スキル・コンプライアンス)をモニタリングしていることを述べています。またISO30414の要求事項において、人事慣行などが社の方針と矛盾している場合は、開示内容などに関して注釈を付しています。

出典:JPYC「人的資本レポート」(2022年5月)p9,13,16JPYC「人的資本レポート」(2022年5月)p9,13,15,16

4. まとめ:ISO30414について理解し、人的資本経営に取り組もう!

ISO30414は人的資本に関する情報開示のガイドラインです。ISO30414は企業や投資家における人的資本への関心の高まりに伴い注目を集めています。

ISO30414は単に人的資本情報開示項目の参考になるだけでなく、経営戦略に結び付いた人事戦略を検討するうえでも役に立ちます。ISO30414について理解し、人的資本経営や人的資本情報開示に取り組みましょう。

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