GFANZとは?企業の目標設定事例も解説

環境問題を語るうえで重要なGFANZについて、わかりやすく解説します!GFANZはまだ発足して数年の同盟ですが、世界各地で影響力を持つメンバーが加盟しており、気候変動対策の取り組みを後押ししています。

金融という環境問題とは直接の関係がないように思える分野において、GFANZは存在感を高め、大きな注目を集めているのです。そんなGFANZの概要のほか、メンバーやGFANZに基づく目標例などもご紹介します。

目次

  1. GFANZの概要

  2. GFANZの5つのレポート

  3. 企業の目標設定事例

  4. まとめ:GFANZについて理解し、ネットゼロ移行へ向けた金融機関と投融資先との対話へ取り組もう!

1. GFANZの概要

GFANZ(ジーファンズ)とは、環境問題の解決を目指す国際機関のひとつです。金融機関を中心に組成されている点が特徴です。GFANZについて基本的な内容を解説します。

GFANZとは

GFANZはGlasgow Financial Alliance for Net Zeroの略で、日本語に訳すと「ネットゼロに向けた金融同盟」となります。ネットゼロとはいわゆるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量を吸収量と均衡させ、実質的にゼロにすること)を指します。

GFANZとは、ネットゼロへの移行を目的に設立された、銀行や保険といった金融機関の連合体を指し、2021年11月にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26において正式に発足しました。GFANZには世界45カ国から500社を超える金融機関が加盟しています。

出典:環境省「Glasgow Financial Alliance for Net Zero (GFANZ) の概要」P1

GFANZに加盟するメリット

金融機関としては、GFANZへ加盟することによって、以下のようなメリットが期待できます。

  • 信頼性のあるネットゼロコミットメントを設定するための手段が確保でき

  • ネットゼロに関する金融機関の相互連携についてサポートを受けられる

  • ネットゼロ目標に向けた横断的な課題に対する適切な技術協力支援を受けられる

世界中の気候に関する専門家で構成されたGFANZの諮問委員会は、GFANZの活動が最も野心的な基準に基づいていることを保証しています。そんなGFANZに加盟し、情報提供を受けることで、加盟各金融機関のネットゼロへ向けた活動はさらに信頼性が高まると言えます。

出典:GFANZ「About Us」

2. GFANZのメンバー

GFANZには世界中の金融機関が加盟しています。GFANZがどのような組織構成になっているか解説します。

GFANZのメンバーシップ構成

GFANZのメンバーシップ構成は以下の通りです。

  • Net Zero Banking Alliance (NZBA)・・銀行

  • Net Zero Asset Owner Alliance (NZAOA)・・基金など

  • Net Zero Investment Consultants Initiative (NZICI)・・投資コンサルタント

  • Net Zero Financial Service Providers Alliance (NZFSPA)・・金融サービス

  • Net Zero Asset Managers Initiative(NZAM)・・投資顧問・信託など

  • Net Zero Insurance Alliance(NZIA)・・保険

  • Paris Aligned Asset Owners (PAAO)・・投資家

  • GFANZは、以上7つの金融イニシアチブで構成されています。

出典:GFANZ「Membership」

GFANZに加盟している日本企業

GFANZに加盟している日本企業は2022年8月時点で26社です。

NZBA

三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、野村HD、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友トラストHD

MZAM

アセットマネジメントOne、三菱UFJ国際投信、三菱UFJ信託銀行、Mitsubishi UFJ Asset Management(UK)、MU投資顧問、日興アセットマネジメント、ニッセイアセットマネジメント、野村アセットマネジ

メント、三井住友トラスト・アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、SOMPOアセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメント、東京海上アセットマネジメント

NZAOA

第一生命、明治安田生命、日本生命、住友生命、SOMPOホールディングス

NZIA

MS&ADインシュアランスグループ、SOMPOホールディングス、東京海上HD

保険会社には、保険分野ではなくアセットオーナー分野に加盟している企業もあります。

出典:環境省「Glasgow Financial Alliance for Net Zero (GFANZ) の概要」P2

3. GFANZの5つのレポート

GFANZは金融機関がネットゼロ戦略を開発・実行する際に任意に利用することを想定し、2022年6月に5つのレポートを公表しました。それぞれの内容を見てみましょう。

(1)金融機関のネットゼロへのトランジションファイナンスに関する   提言及びガイダンス

GFANZは本レポートで、金融機関のネットゼロ移行計画における5個のテーマ(基礎、実装戦略、エンゲージメント戦略、指標・目標、ガバナンス)と、10個のコンポーネント(要素)を提案しています。

たとえば「基礎」のテーマにおいては、コンポーネントとして「目標・優先すべきこと」が挙げられ、具体的な提言として「測定可能な目標・工程・期限によって、2050年までにネットゼロを達成する組織目標を定義すること。ネットゼロに適合する企業への投融資による脱炭素化・投融資先企業のネットゼロへの適合支援」などが提示されています。

出典:GFANZ「Recommendations and Guidance on Financial Institution Net-zero Transition Plans2」p23-24

(2)金融機関向けセクター別パスウェイの使用に関するガイダンス

セクターとは業種を、パスウェイとは気候変動に係る目標・ターゲットを達成するために何をすべきかのプロセスを意味します。GFANZは「GFANZパスウェイフレームワーク」を開発し、金融機関がネットゼロ達成を進めるにあたっての移行プロセスを示しています。

出典:GFANZ「GIODANCE ON USE OF Sectoral Pathways for Financial Institutions」pⅡ

(3)実体経済の移行計画に対する金融機関の期待に関するレポート

GFANZは各企業における気候戦略や、ネットゼロ移行計画の策定に資する既存のフレームワークの要素を整理しました。このレポートでは実体経済でのネットゼロ移行計画の策定が加速されるよう、金融機関の期待を明確にしています。

出典:GFANZ「INTRODUCTIORY NOTE ON  Expectations for Real-economy Transition Plans」p1-2

(4)ポートフォリオ・アライメント測定に関するコンセプトノート

ポートフォリオ・アライメントとは、個別の企業がネットゼロに整合しているかを数値で評価することです。GFANZはポートフォリオ・アライメントに使用される指標として、ネットゼロに整合した排出削減目標を掲げる投資先企業の割合などを挙げています。

出典:GFANZ「DRIVING ENHACEMENT CONVERGENCE AND ADOPTION Measuring Portfolio Alignment」pV-Ⅵ

(5)多排出資産のフェーズアウトに関するレポート

多排出資産とは温室効果ガスを多量に排出する施設などを、フェーズアウトとは段階的に廃止することを意味します。GFANZは多排出資産について「管理されたフェーズアウト」を提案し、信頼性・資金調達・公共政策との連携などを示しています。

出典:GFANZ「The Managed Phaseout of High-emitting Asset」p6-7

4. 企業の目標設定事例

実際にGFANZに加盟している企業がどのような目標設定をしているのか、いくつかピックアップしてみます。金融機関においてはやはり、投融資先への対応が大きなカギとなっていることがうかがえます。

国外企業

Danske Bankでは、2025年までに最大排出企業100社とのエンゲージメント(対話)を実施することを目標としています。金融機関の場合、自らの事業活動で排出する温室効果ガス排出量以上に融資先・投資先からの排出量が大きいので、こうした対話は有効な取り組みとなるでしょう。

Black Rock社も、投資ポートフォリオの石炭燃料生産から25%以上の収入を得る事業への公債および株式投資から撤退する投資見解を表明しています。

出典:Net Zero Asset Managers Initiative 「Initial Target Report May 2022」p28,40

国内企業

GFANZに加盟している国内企業の多くが、2030年または2050年までの「自社事業活動ネットゼロ」を目標としています。投融資先でのネットゼロについても、第一生命・みずほFG・SOMPOアセットマネジメント・ニッセイアセットマネジメントが2050年ネットゼロを、三菱UFJ・SMBCが石油・エネルギーセクターなどでのネットゼロを目標に掲げています。

出典:UNITED NATIONS ENVIRONMENT PROGRAMME FINANCE INITIATIVE「Dai-ichi Life Insurance is first Asian member of Net-Zero Asset Owner Alliance」

出典:みずほFG「 TCFDレポート2022」p10

出典:SOMPO HOLDINGS「Accelerating "SOMPO Climate Action"Joining "NZIA: Net-Zero Insurance Alliance" and Strengthening Action Policy」(2022/6/28)p1-2

出典:Nissay Asset Management Corporation 「Stewardship Report 2021」p19-21

出典:MUFG「MUFG Progress Report」p11

出典:SMBC「Strengthening Efforts against Climate Change」p4

5. まとめ:GFANZについて理解し、ネットゼロ移行へ向けた金融機関と投融資先の対話へ取り組もう!

GFANZはネットゼロに向けた金融同盟の略称で、国内外多数の金融機関が加盟している国際組織です。自社の事業活動はもとより、温室効果ガスを排出する投融資先への影響が大きい金融機関は、ネットゼロの取り組みに大きな影響力を持ちます。

GFANZは金融機関のネットゼロへ向けた取り組みに関する各種提言をしており、加盟している各金融機関もネットゼロに関連した投融資方針を含む目標を開示しています。GFANZについて理解し、ネットゼロ移行へ向けた金融機関と投融資先の対話へ取り組みましょう。

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