パーパス経営とは?その意味と有効な活用法を解説

パーパス経営とは、企業が長期的に経営を進めていく上で重要な要素となり、社会的にも求められている経営方法です。企業の社会での立場と社会から求められているニーズを明確にするパーパス経営を起点とした経営ビジョンは、企業経営を成功へと導く効果に期待があり、すでにパーパス経営を進めている企業も多くあります。

ここでは、パーパス経営の基礎知識や、企業価値の向上に大きく関係のあるDXやESG投資とパーパス経営の関係性、実際にパーパス経営を取り入れている企業の事例をご紹介します。

目次

  1. パーパス経営とは何か?

  2. DXに必要なパーパス経営

  3. ESG投資とパーパス経営の関係性

  4. パーパス経営を取り入れた企業事例

  5. まとめ:パーパス経営の理解を深めて時代に寄り添う企業を目指そう

1. パーパス経営とは何か?

パーパスは、企業におけるインパクト追求行動のスタートとして注目を浴びており、今後、企業はパーパスに基づく経営であるパーパス経営の導入が重要とされています。ここでは、パーパス経営とインパクトの関係をご紹介します。

パーパスとは?

パーパスとは、企業理念の根拠となる「企業の存在意義」のことであり、その定義は「自社の強み」と「世間のニーズ」の2つの要素が重なる領域であるとされています。

具体的には、過去の蓄積やレガシー、企業のカルチャーや価値観をふまえて、「自社が本質的かつ独自性を持って提供できる強みは何か」と、社会・ヒューマニティや環境、経済から見て「世界が充足を求めているニーズは何か」という2つの課題を通して導かれた、「独自の強みによって社会に提供する価値」がパーパス(=企業としての存在意義)です。

パーパスの定義

出典:経済産業省『アートと経済社会について考える研究会』(2022/10/06)p,37.

パーパスの効果

パーパスの主な効果として、企業に関わる組織内外の結束力を高める効果が挙げられます。具体的には、物事の予測が難しい現代において考えられる、企業の経営改革による企業方針の迷走や経営の停滞を、パーパスを活用することで目的や対策を確実なものへと導いて解消することができます。また、多種多様な企業戦略などで企業全体での価値観の共有が難しい場合、パーパスの考え方によって、多様性を活かしながら組織や人材に一体感を生むことができます。

出典:経済産業省『アートと経済社会について考える研究会』(2022/10/06)p,38.

パーパス経営が企業に重要とされる理由

企業がパーパス経営を導入する目的として、インパクトを起点とした経営の重要性が挙げられます。インパクトとは、組織によって引き起こされる、組織に関わる全ての人々の心身的・社会的幸福や、自然環境の状態の変化のことです。

パーパスとは企業の存在意義、つまり「組織がステークホルダー(組織に関わる全ての人)に対して、どのような価値=インパクトを創造しようとしているかを示すもの」です。パーパスがあることにより、企業はどのようなインパクトを生み出すのかを明示することができ、またインパクト創出のきっかけとすることもできます。

ほかにも、現代の企業経営には欠かせないDXやESG投資において、パーパスが重要だとされています。

出典:金融庁『インパクト創出と企業価値向上は 両立するのか』(2023/08/04)p,5.p,23.

2. DXに必要なパーパス経営

企業の経営においてはDXの導入が進められており、DXは、企業を存続させるためにも重要な取り組みとなります。ここでは、DXの基礎知識とパーパス経営の関係性についてご紹介します。

DXとは?

DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、企業の価値を上昇させる為に必要な戦略です。具体的には、データやデジタル技術を用いて、顧客や社会のニーズに合わせた上で、サービスや商品、ビジネスモデル、企業文化を新しく変化させていく取り組みを指します。

DXとは?

出典:経済産業省『Digital Governance Code 2.0』(2023/04/13)p,3,4.

DXに有効なパーパスビジョン

DXは新しい変化に向けた取り組みであり、DXに必要な事として、企業のパーパスや将来のビジョンを明確にすることが挙げられます。企業や組織としての社会の役割を考える(パーパス)と共に、将来どのような企業を目指すのか(ビジョン)を一緒に考え整理することがDXの基盤となり、経営者・社員と企業全体で共有することで、DXの取り組みが実現するものとされています。

出典:経済産業省『Digital Governance Code 2.0』(2023/04/13)p,5.

3 ESG投資とパーパス経営の関係性

ESG投資とは?

ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance )の3つの要素に着目した投資のことで、短期的ではなく中長期的な企業価値の向上や企業の安定を目的とした投資です。

これにより、環境問題や社会問題に取り組むことでビジネスの可能性を広げ、利益につなげようとしているか、ESG情報を分析して将来的なリスクの原因や対応を明確にしているか、といった観点から企業の将来性や安定性が評価されます。

出典:経済産業省『国内株式パッシブ運用における エンゲージメント活動』(2018/02/14)p,20.p,21.

パーパス経営に必要なインパクト指標

ESG投資によって投資家を集める場合、インパクト指標を活用することで、企業に対する投資家の理解を深められ、より一層の投資の呼び込みに期待が出来ます。インパクト指標とは「事業や活動の結果として生じた、社会的または環境的な変化や効果を示す指標」のことで、企業に関わる人々に企業のESGに関する取り組みの情報を提供する手段にもなります。

このインパクト指標にパーパスを軸にしたビジネスモデルや事業を織り込むことで具体性が明確となり、企業の取り組みを明確に情報提供することが出来ます。企業側においてもひとつひとつのビジョンが明確になる事で、達成するべき指標が分かりやすくなり、事業展開がよりスムーズになります。

また、投資家との対話においても、パーパスを含めたインパクト指標を活用する事で、企業の具体的なビジネスビジョンに対して投資家から理解を得られ、投資が加速することが期待できます。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会『“インバクト指標’ 'を活用し、 バーバス起点の対話を促進する』(2022/06/10)p,5.

p,13.

出典:財務省『ESG投資について』(2022/11/24)p,17.

出典:金融庁『インパクト投資等に関する検討会報告書 (案)』(2023/06/21)p,22.

4. パーパス経営を取り入れた企業事例

パーパス経営は、今後企業経営において重要なアクションとなります。ここでは、パーパス経営を取り入れた企業の事例をご紹介します。

株式会社東北銀行

金融機関の「株式会社東北銀行」は、2022年に経営理念・パーパス・長期経営計画の3要素からなる「とうぎんVision」を制定しました。パーパスとして「地域力の向上」を掲げ、「地域の人がずっと住み続けたいと思える場所」×「経済の活力」を目標に、地域に根差した取り組みをしています。

出典:金融庁『経営強化計画(ダイジェスト版)』(2022/09/07)p,9.

キリンホールディングス株式会社

「キリンホールディングス株式会社」は、長期経営構想「キリングループ・ビ ジョン2027」実現に向けて、長期非財務目標として「キリングループCSVパーパス」を制定しました。

これは、社会と価値を共創し、持続的に成長するための指針となっており、「健康・地域社会・環境などの社会課題の取り組み」×「一人ひとりとのつながりを強めてお客様の期待に応える」という課題のもと、自然と人を見つめるものづくりで「食と健康」を通じて社会に貢献しています。

出典:金融庁『1.「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の開示例』(2019/12/20)p,12.

日揮ホールディングス株式会社

大手エンジニアリング会社の「日揮ホールディングス株式会社」は、「人と地球の健やかな未来づくりに貢献する」という視点のもと、自社のパーパスを「Enhancing planetary health」と定義し、パーパスを起点とした長期ビジョン「2040年ビジョン」を制定しました。

これは、「エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立」、「資源利用に関する環境負荷の低減」、「生活を支えるインフラ・サービスの構築・維持」といった社会課題の解決を目指すものとなっています。

出典:金融庁『記述情報の 開示の 好事例集 2021』(2022/03/24)p,114.

第一三共株式会社

大手製薬会社「第一三共株式会社」は、2030年の経営ビジョンとして「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」という経営理念を掲げています。「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを自社のパーパスとし、革新的な医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供するという課題に取り組んでいます。

出典:金融庁『記述情報の 開示の 好事例集 2021』(2022/03/24)p,106.

5. まとめ:パーパス経営の理解を深めて時代に寄り添う企業を目指そう

パーパスは、長期的な視野で企業経営を考えた時に重要な要素であり、今後の企業経営の考え方に欠かせないものです。

企業が目指す姿と企業に求められているニーズの共通する部分に、企業のパーパスが生まれ、そのパーパスを起点として長期的なビジョンを描いていくことが、今後の企業経営には重要となってきます。ぜひ、パーパス経営の理解を深め、企業全体でその経営理念を共有し、時代に寄り添い必要とされる企業を目指しましょう。

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