再エネ導入のカギ?世界の企業が注目するコーポレートPPAとは

コーポレートPPAとは、企業が発電事業者から電力を購入する際に結ぶ契約のことです。企業が電力を購入する際にコーポレートPPAという契約があります。日本ではまだ普及しておらず、一般的な電力購入との差別化がいまいち進んでいないのが現状です。

実は、コーポレートPPAを利用するとしないのでは電力コストに大きな差が生まれます。それだけではなく、コーポレートPPAを利用することで環境対策にも貢献する事ができるといった様々なメリットがあります。

ここではコーポレートPPAの概要や、企業が取り入れることによるメリット・デメリットなどを詳しく紹介していきます。

目次

  1. コーポレートPPAとは?
  2. 企業がコーポレートPPAを使用するべき理由は社会的信頼と経済的支援にある
  3. 日本で利用できるコーポレートPPAとは?
  4. まとめ:コーポレートPPAを活用して電力コストを抑えよう!

1. コーポレートPPAとは?

企業や自治体などの法人が発電事業者から自然エネルギーの電力を長期的(10年~20年)に購入する契約のことを、コーポレートPPA(Corporate Power Purchase Agreement)と言います。

今や、世界では再生可能エネルギーはコストメリットもあるという考えが一般化しており、コーポレートPPAは導入の有効な手段として用いられています。

再生可能エネルギーのコストについて深ぼりしましょう。ブルームバーグNEFの調査によると、2021年現在『新設発電所にて再エネが最安の国は世界の3分の2に増加』していることがわかっており、再エネを経済的に選択する動きが世界的に広まっていると述べています。

出典:ブルームバーグNEF『世界の脱炭素 変化とスピード』(2021年3月31日)(p.3)

日本でも、2021年7月に経産省が2030年の電源別発電コスト試算の結果を発表し、太陽光発電が30年時点で原発より安くなるという試算を示し、「再エネは価格が高い」という考えはもはや非常識となりつつあります。

出典:資源エネルギー庁『発電コスト検証に関するこれまでの議論について』(2021年7月12日)(p.4)

一方、火力発電は国際情勢により化石燃料費が変動の影響を受けやすく、今後の資源の枯渇も相まってコスト面の負担が大きくなる可能性があります。そういった理由から世界中でコーポレートPPAの需要が拡大しています。

2.企業がコーポレートPPAを利用するべき理由は社会的信頼と経済的支援

まずコーポレートPPAには大きく分けて経済性、持続可能性、ブランド価値、の3つのメリットがあります。

(1)経済性

 近年化石燃料の価格が上昇し続けている中、自然エネルギーは電力コストが安いだけでなく、長期的に固定価格で供給できるので価格変動の心配もありません。こういった長期間の安定性が見込まれる点においてコーポレートPPAの良さがあります。

(2)持続可能性

 コーポレートPPAにより、企業のCO2排出量を長期的に削減できるでしょう。また国全体でも自然エネルギーの価値、利用率が高まるため、持続可能性、つまり将来にわたってCO2や温室効果ガスの削減という目的を失わずに続けていく事ができるプロセスを見出すことができます。

(3)ブランド価値

 気候変動や自然災害に注目し、それらの対策に取り組もうとする姿勢のある企業は社会的に高い評価を受けやすく、コーポレートPPAは企業イメージを作るきっかけになります。

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA 実践ガイドブック』(2020年9月)(p.30

コーポレートPPAが求められる背景

2015年、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定をもとにして、2019年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を国連に提出しましたこの長期戦略は脱炭素社会の実現を最終到達点として設定し、日本でも2050年までの脱炭素社会の実現を目標とした所信表明がなされました。

出典:外務省『気候変動』(2020年4月2日更新)

それに伴って環境省は​​​​「サプライチェーン改革・生産拠点の国内投資も踏まえた脱炭素社会への転換支援事業」を発表。

『新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、国内の生産拠点等を整備しようとする企業等に対し、脱炭素化の推進や防災に資するオンサイトPPAモデル等による自家消費型太陽光発電設備等の導入を支援する。』

といった事業目的を設定しました。このように脱炭素社会の実現に向けて経済的な支援も行われるようになりました。

出典:環境省『サプライチェーン改革・生産拠点の国内投資も踏まえた脱炭素社会への転換支援事業

コーポレートPPAに取り組むメリットは社会的信頼とコストダウン

上記の背景により、企業は脱炭素社会に向けた活動に対して社会的信頼が得られるだけでなく、コーポレートPPAの活用に対する経済的な支援が得られるため、コーポレートPPAは利用するべきだと言えます。

また一般的な電力購入の際、企業は発電事業者と契約した固定価格に加え、送配電ネットワークを運営している事業者に対しネットワークの託送料金を支払う必要があります。

そこでコーポレートPPAの契約形態の一つであるオンサイトPPA(※次の章で解説)を利用して、従来かかるであろう託送料金を削減する事ができる他、発電設備費や維持費を企業が負担することもありません。

3.日本で利用できるコーポレートPPAとは?

コーポレートPPAの契約形態の一つにオンサイトPPAと呼ばれる契約形態があります。発電事業者が需要家(企業)の敷地内に太陽光発電設備を設置し、その設置費用や所有、管理を発電事業者が担当し、発電された電力を需要家が受け取るという仕組みのことを言い、「第三者所有モデル」とも呼ばれています。

オンサイトPPAは発電事業者が発電所の設置費用を負担します。太陽光発電設備を敷地に設置するのにかかる初期費用が一切かかりません。また発電設備を企業の敷地内などに設置する事ができるため、PPAを利用するときにかかる送配電の料金がかからないこともコストの抑制に繋がるため、全体的に投資が抑えられます。

出典:環境省『初期投資0での自家消費型太陽光発電設備の導入について』

オンサイトPPAは発電事業者が建設、運転、保守に責任を持ちます。太陽光発電は運転のメンテナンスを慎重に行われなければならず、万が一不具合が発生すれば復旧に時間がかかります。発電事業者にこれらを委託することで企業側のリスクを抑える事ができます。

他に、近年例として挙がるようになったオフサイトPPAという手法もあります。国内初の例としてセブン&アイホールディングスはNTTと協力し、今年4月からオフサイトPPAを順次導入しています。

出典:セブン&アイホールディングス『国内初の「オフサイトPPA」 太陽光発電所完成披露会を実施!』

オフサイトPPAはオンサイトPPAと違い発電場所を選ばないため、土地や屋根の条件が悪かった企業でも導入可能です。一方で、現在の制度だと送配電事業者や小売事業者の仲介が必要で、その分オンサイトPPAよりもコストメリットが小さくなってしまうことがデメリットです。現在、制度改正が議論されており、今後も定期的な情報収集が必要となります。

出典:経済産業省『再エネ導入拡大に向けた 事業環境整備について』

日本ではオンサイトPPAが事例が多くオフサイトPPAは近年電力小売り事業者を通じてようやく例が出てきたところです。一方で、今年4月から「自己託送」の制度見直しが始まり、オフサイトPPAを電力小売りを介さずに実現できる可能性が出てきており、今後の制度次第で事例も増えてくる可能性があります。

4. まとめ:コーポレートPPAを活用して電力コストを抑えよう!

コーポレートPPAはこれからの時代を担っていく電力購入の形態に変化をもたらしたと言えるでしょう。コーポレートPPAを利用することによって脱炭素社会への活動に取り組むことができる、企業の金銭的負担を和らげる事ができる、といった様々なメリットがあります。

世界中で注目されているコーポレートPPAですが、環境面、経済面で多くのメリットがあります。契約スキームの確認を徹底し企業の目的にあったコーポレートPPAを締結しましょう。電力のコストを抑えるためにもコーポレートPPAの理解を深めて、うまく活用していく事が重要です。

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