敷地外の再エネ電力も活用可能!新しい選択肢、オフサイトPPAとは

温室効果ガスの排出により、地球温暖化がすすんでいることが問題視され、世界的に対策が求められています。そのひとつに再生可能エネルギーの利用による発電が注目されています。この再生可能エネルギーによる発電を利用する上で理解しておく必要があるのが、オフサイトPPAという仕組みです。今回はオフサイトPPAについて、日本企業の取り組みや課題点を解説していきます。企業の環境問題への対策の選択肢として、しっかり理解しておきましょう。

目次

  1. オフサイトPPAとは

  2. 企業のオフサイトPPAへの取り組み

  3. オフサイトPPAの今後の3つの課題

  4. 【まとめ】オフサイトPPAの今後の利用拡大に注目!

1. オフサイトPPAとは

まず「PPA」とは、「Power Purchase Agreement」の略で発電事業者と電力利用者の間で交わされる電力購入契約のことです。大手電力会社と一般利用者との契約の他、現在は企業が電力会社を介さず、再エネ発電事業者から直接電力を購入する「コーポレートPPA」が注目されています。

コーポレートPPAは世界各国で導入する企業が拡大しており、2019年に新たに結ばれたコーポレートPPAは1950万kWで、2017年と比べ3倍以上に増えています。このコーポレートPPAのひとつが「オフサイトPPA」となります。

出典:自然エネルギー財団『コーポレートPPA実践ガイドブック』

オフサイトPPAの仕組み

コーポレートPPAには様々な形がありますが、発電施設(ソーラーパネルなど)の設置場所による分類が「オンサイトPPA」・「オフサイトPPA」と呼ばれるものになります。オンサイトPPAは発電事業者が契約する企業の自社敷地内に発電設備を設置し、電力を供給するモデルとなり、それに対しオフサイトPPAは敷地外の遠隔地に発電設備を設置し、送配電線を介して電力を購入するモデルとなっています。

出典:環境省『PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業』(p7)

オフサイトPPAのメリット

現在の日本では、発電設備への初期投資や、設備の保守・点検の負担が少ないことからオンサイトPPAが主流となっていますが、オフサイトPPAにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

大きなメリットは発電施設の規模拡大によって電力供給量を増やすことができる点です。オンサイトPPAでは自社敷地内と設備規模に制限がありますが、オフサイトPPAは敷地外に発電設備を設置でき、物理的な制限が緩和されます。

現在多くの企業がRE100に参加し、自社使用電力の再エネ化を目指しており、達成の為には再エネ電力の供給量の拡大が必要となるため、自社敷地外でも発電が可能となることは、企業にとって大きなメリットです。

また、経済的な負担の軽減も期待されています。現在オンサイトPPAは「自家消費」という形で小売電気事業者や送配電事業者を介しないため、仲介料・燃調費の他「再エネ賦課金」の支払いが不要となっています。経済産業省では、オフサイトPPAに関しても「自己託送」とみなし、FITの賦課金の支払いを免除するかの議論がなされています。もし、この賦課金が免除ということになれば経済的な負担の軽減にもつながることになります。

出典:経済産業省『需要家による再エネ活用推進のための環境整備』(p8)

2. 企業のオフサイトPPAへの取り組み

前述したとおりオンサイトPPAが現在の主流となりますが、すでにオフサイトPPAに取り組んでいる企業もあります。こちらでは国内で初となるオフサイトPPAへの取り組みを紹介します。

国内初!セブン&アイグループ×NTTグループ

株式会社セブン&アイホールディングスでは事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化にコミットする企業団体の「RE100」へ参加しています。その中の取り組みのひとつとしてNTTグループとの協創により国内初のオフサイトPPAに取り組んでいます。

これはNTTグループのNTTアノードエナジー株式会社が設置した太陽光発電所からオフサイトPPAの仕組みで送配電網を介し、電力の供給をおこなうものです。また合わせて、NTTグループが所有するグリーン電力発電所の電力導入により、セブンイレブン40店舗とアリオ亀有の店舗運営に100%再生可能エネルギーを実現しています。

出典:セブンイレブンジャパン株式会社『国内初のオフサイトPPA太陽光発電所完成披露会を実施』

3. オフサイトPPAの今後の3つの課題

世界では利用の拡大がすすんでいるオフサイトPPAですが、日本においては法整備も含めて課題も残されており、認められていないケースもあります。

出典:経済産業省『需要家による再エネ活用推進のための環境整備』(p5)

また、その他の部分でも環境整備をすすめる上での3つの課題があげられています。

  1. 公平性の確保

自己託送(遠隔地にある発電施設から電気を自社設備に送電する仕組み)による供給は、現行の再エネ特措法上では、再エネ賦課金の支払いの対象外となります。このため、消費者など、この仕組みを活用しない需要家の賦課金支払いの負担が高まるなど、公平性の確保という観点での課題があげられます。

  1. 公正競争の確保

メガソーラー等の通常の再エネの小売供給と同様のビジネスモデルとなりますが、再エネ賦課金の対象から外れることを目的として、PPAとして活用することは、公正競争の観点からの課題としてあげられます。

  1. 需要家保護の確保

オフサイト型PPAによる他社融通スキームでは、需要家と再エネ発電事業者との間に契約行為が発生することから、現在の電力市場の価格から逸脱した金額での電力販売も可能であり、需要家保護という観点での課題もあげられます。

政府としてはこのような課題について、

  • FIT又はFIP制度の適用を受けない電源による電気の取引であること

  • 需要家の要請により、当該需要家の需要に応ずるための専用電源として新設する脱炭素電源による電気の取引であること

  • 組合の定款等により電気料金の決定方法が明らかになっているなど、需要家の利益を阻害するおそれがないことがないと認められる組合型の電気の取引であること

の要件を満たすものについてオフサイトPPAを可能とする方向性を検討しています。

出典:経済産業省『需要家による再エネ活用推進のための環境整備』(p8)

4. 【まとめ】オフサイトPPAの今後の利用拡大に注目!

  • オフサイトPPAとはコーポレートPPAのひとつで、敷地外の遠隔地に発電設備を設置し、送配電線を介して電力を購入するモデル。

  • オフサイトPPAを活用するメリットは設備を拡大することによって供給電力を増やすことができる点と、電力の自家消費となり、FITの賦課金の支払いがないという経済的負担の軽減がはかれること。

  • 日本では、オンサイトPPAが主流となっているが、RE100への参加など再生可能エネルギー100%を目指す企業にとっては今後の活用が注目されている。

  • 日本では法律上の環境整備が整っておらず、課題点もあげられているが、オフサイトPPAを可能とする方向性で検討されている。

まだ日本では浸透していないオフサイトPPAですが、今後の環境問題を考えるうえで、企業のエネルギー問題は大きく、非常に有効な仕組みと考えられています。企業の経営方針として地球温暖化への対策が求められている現在、このような取り組みも検討してみてはいかがでしょうか。

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