トランジションボンドとは?グリーンボンドとの違いを解説

トランジションボンドとは、脱炭素経営に必要とされる資金面において有効な手立てとなることから、企業が脱炭素経営を進める上でも、ぜひ知っておきたい言葉です。

トラジションボンドを初めとするボンド(債券)には、さまざまな種類があり、その違いを違いを理解することで、トランジションボンドの必要性を理解することが出来ます。

ここでは、トランジションボンドの基礎知識やその必要性、その他のボンドとの違いをご紹介します。トランジションボンドを有効利用して、脱炭素経営を成功へと導きましょう。

目次

  1. トランジションボンドとは何か?

  2. その他のボンドとの違いとは

  3. トランジションボンドにおける企業の取り組み事例

  4. まとめ:トランジションボンドを有効利用して、さらなる脱炭素経営を目指そう!

1.トランジションボンドとは何か?

日本では、「2050年カーボンニュートラル宣言」のもと温室効果ガス削減を重視した取り組みを進めており、企業においても脱炭素経営が求められています。そこで、ぜひ知っておきたいのが「トランジションボンド」です。ここでは、トランジションボンドの基礎知識をご紹介します。

トランジションボンドとは?

今や、企業の経営は、環境貢献が当たり前の時代となっている中、環境関連事業にに用途を限定した「ESG債」が急成長を見せており、その中でも、特に注目されているのが「トランジションボンド」です。

トランジションボンドとは、CO2排出量が多い企業(=ブラウン企業)が、今後、CO2排出量削減を目指すための開発や技術などの脱炭素事業の資金用途に充てる(トランジション:移行する)目的のための債券(ボンド)のことを指します。CO2排出量削減に貢献している企業(=グリーン企業)だけではなく、ブラウン企業に対しても発行できる債券という特徴があります。

出典:日本経済新聞『急拡大するESG債市場 発行額100兆円に迫る』(2020/04/14)

出典:経済産業省『トランジション・ファイナンスを巡る動向』p,17.(2021/01/27)

トランジションが必要とされる理由

日本は「2050年カーボンニュートラル宣言」のもと、2030年までに温室効果ガスの排出量を2013年度の46%の削減、2050年には大気中の温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラルの達成を目指しています。この目的を達成させるためには、多くの企業が脱炭素経営を進める必要があり、その脱炭素社会への移行(トランジション)に向けた支援が必要となります。そこで誕生したのがトランジションボンドです。

脱炭素社会に向けた企業の移行経路(トランジション・パスウェイ)

出典:金融庁『日本におけるトランジション・ファイナンスの取組み』p,2.(2022/5/27)

トランジションボンドの位置づけ

環境関連事業に関する債券には、さまざまな種類があります。トランジションボンドにおいては、脱炭素経営に着目し、資金の用途が「戦略とガバナンス」「重要度」「科学的根拠」「透明性」という4つの要素を満たしているという特徴があります。資金の用途がトランジションの要素を満たし、これから脱炭素事業のスタート(=移行する:トランジション)を考えている企業に向けた債権ということになります。

トランジションファイナンス(概念)

出典:経済産業省『トランジション・ファイナンス (METI/経済産業省)』(2023/06/16)

出典:経済産業省『トランジション・ ファイナンス 基本指針概要』p,1.(2021/05/06)

ボンドとローンの違い

トランジションには、「ボンド(債券)」と呼ばれるものの他に、「ローン(融資)」と呼ばれるものがあります。この2つの大きな違いは、資金を提供してくれる資金供給者に違いがあり、ボンドは、機関投資家や一般投資家など投資家が提供元であり、一方、ローンの資金供給者は、銀行などの金融機関が提供元となります。

出典:環境省『トランジションファイナンスの課題への対応』p,16.(2022/12/05)

2. その他のボンドとの違い

トランジションボンドのような環境関連の債券にはいくつかの種類があり、それぞれの目的や資金用途によって違いがあります。ここでは、環境関連の債券の違いをご紹介します。

ESG債券

「ESG債券」は、「環境:Environment」・「社会:Social」・「ガバナンス:Governance」に対して積極的なアプローチをしていくための債券です。「SDGs債券」とも呼ばれ、投資家によって資金提供されており、「2050年カーボンニュートラル宣言」のもと積極的な推進が行われています。トランジションボンドを含む、環境関連債券をまとめて「ESG債券」または、「SDGs債券」と呼びます。

出典:総務省『地方公共団体における多様な資金調達について(SDGs債(ESG債))』p,1.(2023/06/20)

グリーンボンド

再生可能エネルギーや、エネルギー効率の改善、CO2排出量削減など環境問題を解決する「グリーンプロジェクト」の目的のために使用される債券です。オフィスのELD照明の導入や再生可能エネルギーの使用などが含まれます。

出典:総務省『地方公共団体における多様な資金調達について(SDGs債(ESG債))』p,1.(2023/06/20)

出典:環境省『グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版』p,38.(2022/07/05)

サステナビリティボンド

環境問題だけでなく、同時に社会問題にも取り組むために使用される債券で、グリーンボンドとソーシャルボンドを兼ね合わせた債券です。ソーシャルボンドとは、人々が公平に生活しやすい環境を整えるなど社会問題の解決に取り組む債券です。

出典:総務省『地方公共団体における多様な資金調達について(SDGs債(ESG債))』p,1.(2023/06/20)

サステナビリティ・リンク・ボンド

企業や自治体などの発行体が、自社におけるサステナビリティの目的を事前に決定し、その目的の達成度合いによって条件が変動する債券です。目的を定めることで、企業の環境貢献への意識の向上が期待でき、より高いサステナビリティ目標に取り組む事で、投資家へのアピールにもつながります。

出典:環境省『グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン2022年版』p,67.(2022/07/05)

3.トランジションボンドにおける企業の取り組み事例

ここでは、トランジションボンドを利用した企業の取り組み事例をご紹介します。

東京ガス株式会社

国内最大規模を誇るガス会社「東京ガス株式会社」は、お客様に提供するガスを石炭や石油に比べてCO2排出量が少ない天然ガスへ転換することでお客様のCO2排出量削減に貢献します。2030年以降は、「水素」や天然ガスとCO2を合わせた「カーボンニュートラルメタン」の導入を視野に入れ、より一層のCO2排出量削減にアプローチしていきます。

出典:経済産業省『東京ガス株式会社|案件概要』p,1.p,4.(2022/11/24)

日本郵船株式会社 

世界最大手の海運会社「日本郵船株式会社」は、船舶のエネルギー源を重油からLNG(液化天然ガス)に転換することで、CO2排出量を約30%削減に貢献します。その後、水素やアンモニア、カーボンニュートラルメタンなどのエネルギー源からなるゼロエミッション船の導入を目指します。

出典:環境省『トランジション・ファイナンス|事例①:日本郵船株式会社』p,1.p,4.( 2022/4/22)

出典:環境省『燃料別の二酸化炭素排出量の例』(2008/10/15)

三菱重工業株式会社

重工業メーカーの「三菱重工業株式会社」は、2040年Net Zeroの実現に向けたトラジションロードマップを作成し、自社技術を自社工場へ導入し2040年のCO2排出量をゼロにすることを掲げています。また、脱炭素技術開発により、既存のインフラを水素、アンモニアへの燃料転換により社会全体のカーボンニュートラル実現に貢献します。

出典:環境省『トランジションファイナンス|事例⑪:三菱重工業株式会社』p,1.p,4.(2022/4/18)

4. まとめ:トランジションボンドを有効利用して、さらなる脱炭素経営を目指そう!

環境関連事業の債券「トランジションボンド」について、基礎知識やその他の債券との違いなどをご紹介しました。トランジションボンドは、企業がCO2削減の取り組みへと移行(トランジション)する際に可能な債券であり、今後、脱炭素経営を積極的に視野に入れている企業に有効な債券です。トランジションボンドの知識を深めて、有効利用しカーボンニュートラルに前向きな企業を目指しましょう。

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