印刷業におけるカーボンニュートラルとは?取り組み事例をわかりやすく解説

印刷業におけるカーボンニュートラルの取り組みについて、わかりやすく解説します!印刷業界においても、カーボンニュートラルは重要な課題です。企業のカーボンニュートラル取組事例もご紹介します。

目次

  1. 印刷産業の現状と、そもそもカーボンニュートラルとは!?

  2. 日本の印刷業におけるカーボンニュートラル

  3. 印刷業における企業の取組事例

  4. まとめ:印刷業における取り組みを理解し、カーボンニュートラルを実現しよう!

1. 印刷産業の現状と、そもそもカーボンニュートラルとは!?

企業が事業活動を行う上で、カーボンニュートラルへの配慮は今や必須事項です。カーボンニュートラルについて、簡単におさらいしておきましょう。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、2015年のパリ協定において定められた「今世紀後半に温室効果ガス(GHG)の人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」という世界共通目標です。

CO2など温室効果ガスは、工業・運輸・サービスなど人間のあらゆる社会活動を通じて大量に排出されます。この排出量を森林などによって吸収可能な量にまで削減することで、温室効果ガスの量を実質的にゼロにすることができるのです。

出典:経済産業省 脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」

印刷産業の現状

一般社団法人 日本印刷産業連合会では、「CO₂排出量を2013年度比で55.7%削減し、65.0万t-CO₂とする」ことを2030年度目標として掲げています。2021年度はCO₂排出量が99.2万‐CO₂となり、前年対比▲4.2%・2013年度目標対比36.3%でした。

印刷業においてCO2排出量は、電力使用量によって左右される部分が大きくなっています。そのため電力使用量削減を中心とした対策が取られることが多いのが特徴です。

印刷業界のCO2排出量推移出典:経済産業省「印刷産業における地球温暖化対策の取組」P6~10(2022/9/9)

2. 日本の印刷業におけるカーボンニュートラル

印刷産業はペーパーレス化の流れで紙媒体が減少する中、デジタル分野を取り入れて産業構造の変革が進んでいます。カーボンニュートラルの取り組みにも、新たな発想や技術が多く取り入れられているのです。

(1)印刷産業環境優良工場表彰制度

印刷業界独自の制度として、2002年度から経済産業省の後援を受けた「環境優良工場表彰」が毎年実施されています。

これは印刷工場の周辺環境対策・広域的な環境対策・工場内の作業環境改善・環境管理体制の整備を評価対象としており、書類審査と現地審査を経て、「経済産業大臣賞」「経済産業省商務情報政策局長賞」などの賞を授与しているものです。

出典:経済産業省「印刷産業における地球温暖化対策の取組」P12(2022/9/9)

(2)グリーンプリンティング認定制度

印刷産業に特化した環境配慮基準「グリーンプリンティング(GP)認定制度」 は、2006年に始まりました。印刷産業においては業界の98%を中小企業が占めるため、費用や体制面で実現可能な独自の基準を設けた認定制度です。「GP工場認定制度」「GP資機材認定制度」 「GP製品認定制度」の三つがあり、環境負荷項目における基準をクリアすると、植物の芽をデザインした環境ラベル(GPマーク)を印刷製品に表示することができます。

出典:経済産業省「印刷産業における地球温暖化対策の取組」P13(2022/9/9)

(3)低炭素製品・サービスの利用推進

環境に優しい製品やサービスの利用を推進することで、カーボンニュートラルにつなげようという取り組みも行われています。たとえば前項のGP製品の採用をクライアントへ働きかけることにより、市場全体でCO2削減を促す効果が期待できます。

このほか、CO2削減に寄与するバイオマス素材の開発・包装の簡易化など製品軽量化による輸送エネルギーの削減・低温乾燥インキの使用によるCO2排出量削減なども、同様の取り組みとして挙げられます。

出典:経済産業省「印刷産業における地球温暖化対策の取組」P14(2022/9/9)

(4)印刷技術の向上

印刷技術の高度化も、カーボンニュートラル対策になります。たとえばデジタル印刷機の導入により小ロット印刷やオンデマンド印刷に対応できれば、印刷量の無駄がなくなり、環境負荷の軽減につながります。

ほかにも両面印刷・UV乾燥・水なし印刷・LED化などによっても、省エネルギーや環境負荷の軽減・CO2削減が可能です。

出典:経済産業省「印刷産業における地球温暖化対策の取組」P16(2022/9/9)

(5)DXプラットフォームシステム

一般社団法人 日本印刷産業連合会は、印刷産業の「高付加価値創造産業」への業態転換を企図してDXプラットフォームシステム「DX-PLAT」を開発しました。DX-PLATは印刷業数社が集まってグループを作り、そのグループ内で受発注を行うという仕組みです。

これにより、中小を中心とする受注者側は経営資源を自社の得意分野に集中特化させることができ、大企業を中心とする発注者側はスムーズに発注や進捗管理をすることができます。

DX-PLATによる生産性の向上は、過剰設備の抑制など業界全体のスリム化につながり、カーボンニュートラルへも貢献します。

出典:印刷ジャーナル「全印工連 、生産協調で収益拡大〜『DX-PLAT』の本格運用へ」(2022/7/5)

3. 印刷業における企業の取組事例

印刷業におけるカーボンニュートラルの、企業取組事例をご紹介します。

サンメッセ

サンメッセ株式会社はScope1+2(直接排出+間接排出の)の目標として「2030年に2013年比で省エネ法を上回る削減」としており、取り組みとしては工場での省エネと電力の再エネ化推進を挙げています。

CO2排出量削減に取り組まないことのリスクや、社会的要請に応えてバックスティングで目標を設定するという方針から、高い目標が設定されています。

またScope3(Scope2以外の間接排出、原料調達・製造・物流・販売・廃棄などに関わる他社の排出)についてもScope1+2と同程度の削減率を目標としています。Scope3の80%を占める紙の原単位(製品を作るのに必要なエネルギーの量)を改善することが必要だと考え、印刷業界や製紙業界に働きかけています。

出典:環境省「SBT成果報告 2017年度 サンメッセ株式会社」

大日本印刷

大日本印刷株式会社はGHG排出量を2030年度までに2015年度比40%削減し、2050年までにGHG排出量実質ゼロにすることを目指しています。そのために「スーパーエコプロダクツ」という社内認定制度を設け、2025年度までにスーパーエコプロダクツの総売上高比率を10%に拡大するという目標を掲げています。

スーパーエコプロダクツとは、石油ではなくサトウキビの廃糖蜜で作られたプラスチックフィルムを用いた包装材「バイオマテック」などが挙げられます。

出典:環境省「SNBT成果報告2017年度 大日本印刷株式会社」

4. まとめ:印刷業における取り組みを理解し、カーボンニュートラルを実現しよう!

印刷業界ではカーボンニュートラルについて、CO₂排出量を2013年度比で55.7%削減する目標を掲げています。そのために独自の表彰制度や認定制度を設けたり、業界として技術開発を推進したりしています。

中小企業が多い印刷業界では消費電力の削減がカーボンニュートラル対策の中心になっていますが、同時に低炭素製品の利用などもCO2削減に有効な手段です。

印刷業におけるカーボンニュートラルの取り組みについて理解して、CO2削減へ向けた対策を実行しましょう!

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