Scope4とは何?Scope1〜3も含めわかりやすく解説

最近聞かれるようになった「Scope4」について、概要をわかりやすく解説します!

さらに、そもそもScopeとは何を意味するのかについても説明し、脱炭素社会の実現に向け取り組む法人の皆さまが押さえておくべきポイントをご紹介します!

目次

  1. Scopeとは

  2. 各Scopeの概要、Scope4とは!?

  3. IR情報へのScope4記載例

  4. まとめ:Scope4の内容について理解し、削減貢献量について考えよう!

1. Scopeとは

Scope(スコープ)とは、日本語で「範囲」を意味する英語です。「その要件は今回のシステム開発のスコープ外です」などのように、ビジネスシーンでも使われます。しかし環境問題におけるScopeとは、温室効果ガスの排出量を意味するのです。

Scopeはサプライチェーン排出量の細分化方法

地球規模で気候変動の原因となっている温室効果ガスの削減は、世界共通の課題です。カーボンニュートラルの取組を進めるなか、事業者は自社の工場やオフィスからの温室効果ガス排出だけでなく、部品や原材料の調達・輸送・販売過程・廃棄などサプライチェーン全体の排出量を考慮する必要があります。

「サプライチェーンの中でどの部分の温室効果ガス排出量を指しているか」を表すのがScopeという概念です。いわばサプライチェーン排出量を細分化し、各プロセスにおける温室効果ガス排出量を正確に把握するための考え方と言えるでしょう。

出典:環境省・経済産業省「排出量算定について」

従来のScopeは3つ

環境省や経済産業省が開設しているウェブサイト「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」では、サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量であるとされ、3つのScopeが示されています。

このScope1〜3は、GHGプロトコルという国際基準で定義されているものです。GHGとは温室効果ガス(Greenhouse Gas)の略語で、世界環境経済人協会と世界資源研究所によって発足したGHGプロトコルイニシアチブという機関で作成されています。

出典:環境省・経済産業省「排出量算定について」

2. 各Scopeの概要、Scope4とは!?

GHGプロトコルにおけるScope1〜3については、グリーン・バリューチェーンプラットフォームの中で詳しく説明されています。そのポイントをわかりやすく解説します。

(1)Scope1とは直接排出

Scope1とは、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出を指します。たとえば燃料の燃焼やその他の工業プロセスからの排出がScope1に該当します。

多くの企業にとってScope1は「燃料の燃焼」を意味します。企業が利用する車両・ボイラー・炉などから温室効果ガスが排出されるからです。「その他の工業プロセス」とは、セメントや鉄を製造する際の化学反応で温室効果ガスが発生することを指しており、関係する企業は限られています。

出典:環境省・経済産業省「排出量算定について」

(2)Scope2とは間接排出

Scope2とは、他社から供給された電気、熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出を指します。発電などにともなって温室効果ガスを直接排出しているのは他社だが、自社が使用したエネルギーのために排出された温室効果ガスを算定するという点がポイントです。

ほぼ全ての事業者は事業活動に電力を利用しますので、Scope2はあらゆる企業に関係があります。ちなみに排出量は「活動量×排出係数(排出原単位)」の算式で求めることができます。排出係数は「輸送距離・重量1t・kmあたり何t」「電力1kWhあたり何t」というように定められており、Scope1-3いずれにも対応可能です。

出典:環境省・経済産業省「排出量算定について」

(3)Scope3とはScope2以外の間接排出

Scope3とは、Scope2以外に発生する間接排出のことです。すなわち事業者の活動に関連する他社の排出を指し、原料調達・製造・物流・販売・廃棄などに伴う排出が含まれます。

GHGプロトコルではScope3を15のカテゴリーに分類しています。各分類内容を見てみると、たとえば従業員の通勤もScope3として温室効果ガス排出量の算入対象です。通勤手段が電車や自動車であれば、交通手段によって発生する温室効果ガスの一定割合が、事業者が間接的に排出したものだとみなされます。

出典:環境省「排出量算定について」(2023/3/23)

(4)Scope4とは温室効果ガス削減貢献

Scope4とは、温室効果ガスの削減貢献を指します。従来使⽤されていた製品・サービスを⾃社製品・サービスに置き換えることにより、サプライチェーン上の温室効果ガス排出量ではなく「削減量」を評価しようという考え方です。

たとえば以下のような取組が、削減貢献の例として挙げられます。

  • 製品の省エネ性能向上→製品使用者による排出量削減

  • 航空機の軽量化→運航時の燃費向上による排出量削減

  • リモート会議システムの販売→通勤・出張の減少による排出量削減

エネルギー効率に優れた製品を製造する際、新しい技術を用いるなどによりScope1〜3がかえって増えてしまうというケースに鑑みて出てきたのが、Scope4です。

新製品の開発・製造で従来以上の温室効果ガス排出があった場合でも、当該新製品の販売によってトータルでは排出量削減に貢献していると言えることで、企業にもメリットがあります。

GHGプロトコルで定められているScopeは1〜3で、Scope4の定義は正式には存在しません。しかし日本国内では化学・電機電子などの業界団体や日本LCA学会などで削減貢献量のガイドラインが策定されており、Scope4と呼ばれることがあるのです。

出典:環境省「排出量算定について」

出典:環境省 「サプライチェーン排出量 詳細資料 <2023年3月16日リリース>」>【参考①】削減貢献量についてP86より

(5)G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケでも言及

2023年4月15-16日に札幌で開催された「G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ」においても、Scope4という言葉は使われていませんが、「バリューチェーン全体での排出削減を実現する視点」というテーマで論議されています。

成果文書の中では、脱炭素ソリューションを提供することで、他の事業者の排出削減への貢献すなわち「削減貢献量」を認識することに価値があるという趣旨の言及が見られます。

出典:環境省「G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ」P16

3. IR情報へのScope4記載例

IR情報の中にScope4の情報を記載している、先進的な企業事例をご紹介したします。

東レグループ

東レ株式会社は2022年7月15日に「東レグループの地球環境問題への取り組み」というIRセミナーを開催し、その内容をディスクロージャーに掲載しています。その中に以下のような記載が見られます。

「今、Scope1、2、3に続き、Scope4と言いますか、製品・サービスを通じた環境貢献量の開示議論も高まりそうな状況ですが、東レは既に、独自の算出法で環境貢献量を見える化し、2030年度に達成すべき目標を設定して様々なプロジェクトを推進しています」

具体的な取組例としては、

  • 燃焼してもCO2を排出しない水素の製造・輸送・貯蔵・利用に関する基幹素材開発

  • 高機能で省エネに寄与するエアフィルターの提供

などを挙げています。

出典:東レ「統合報告書>特集:環境IRセミナー」

サトーホールディングス

サトーホールディングス株式会社は、自社ホームページ上のIR情報サイトにリンクしている「カーボンニュートラル宣言」の中に、以下のような内容を掲載しています。

「サトーは、Scope 1~3の削減に加え、私たちが提供する商品やソリューションにより、お客さまの現場でもGHG排出量削減に貢献します(”Scope 4”)」

具体的な取組例としては、

  • 自動化などによる効率化に伴う作業時間の削減

  • 食品ロスなど廃棄物の削減

を挙げています。

出典:サトー「カーボンニュートラル宣言」

4. まとめ:Scope4の内容について理解し、削減貢献量について考えよう!

Scope4の概要について、Scope1〜3の内容と合わせて、その意義や具体例をわかりやすくご紹介しました。これからの事業者は、バリューチェーン全体における温室効果ガス削減だけでなく、自社が提供するソリューションによる削減貢献量も求められます。自社製品やサービスで、どのような温室効果ガス削減貢献ができるか、ぜひこの機会に考えてみましょう!

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