CO2削減のヒントに?国別、起源別でみるCO2排出量の割合

地球温暖化の原因となっているのがCO2(二酸化炭素)で世界各国で排出量の削減に向けた取り組みがおこなわれています。では、CO2の排出量の割合は世界でどのようになっているのでしょうか。

ここではCO2の排出量について国別の割合や、排出内容の割合について解説していきます。世界共通の目標であるCO2排出量の削減にむけた取り組みとあわせてみていきましょう。

目次

  1. 各国のCO2排出量の割合では、新興国が増加している

  2. エネルギー産業が4割!?排出起源でみるCO2排出量の割合

  3. 世界が注目。CO2排出削減に向けた動き

  4. 【まとめ】CO2の排出量とその割合から削減の方向性を検討しよう

1. 各国のCO2排出量の割合では、新興国が増加している

排出量の最も多い国は中国

出典:JCCCA『世界の二酸化炭素排出量(2018)』

最も排出量の多いエネルギー関連のCO2排出量は2004年に先進国とその他の地域で割合が逆転しています。これは中国を代表する新興国の産業発展によるものです。2019年には世界のエネルギー関連のCO2排出量は333億トンで、2018年から横ばいとなっています。アメリカが1億4000万トン(2.9%減)減少している他、EUで1億6000万トン(5%減)、日本は4500万トン(4%減)と削減に向けた取り組みに一定の成果が出ています。これにより、先進国は自国の削減と合わせて新興国、途上国に対してCO2排出削減に向けた支援も必要と考えられます。

出典:国立環境研究所『国際エネルギー機関、2019年のエネルギー関連CO2排出量は333億トンで予想に反し横ばいと報告』

出典:グローバルノート『世界の二酸化炭素(CO2)排出量国別ランキング』(2021年7月14日)

先進国以外の排出量は2019年には4億トン近く増加し、その80%はアジアからのものとなっています。この地域ではエネルギー使用量の50%を占める石炭需要が拡大しています。最も排出量の多い中国では2番目に多いアメリカの2倍近い排出量となり、世界の約3割を占めています。中国の習近平国家主席は2020年9月の国連総会の一般討論のビデオ演説で、「CO2の排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年にはカーボンニュートラルを実現する」と表明しています。

出典:BBCニュース『中国のCO2排出量、2060年までに実質ゼロに 習主席が表明』

世界でみる日本のCO2排出量

出典:国立環境研究所『日本国温室効果ガスインベントリ報告書』(p20)

2019年度の日本のCO2排出量は11億2300万トン、温室効果ガスの排出量は12億1200万トンで、1990年度から4.9%の減少していますが、世界でみるとロシアについで排出量の5番目に多い国となっています。割合的には総排出量の約3%程度となりますが、その他の新興国からみればまだまだ排出大国と言えるでしょう。

また、国民ひとりあたりの排出量はアメリカ、韓国、ロシアに次いで4番目に多く、先進国の排出量の削減は今後もさらに加速させていく必要があります。

出典:環境省『世界のエネルギー起源CO2排出量(2018)』

2. エネルギー産業が4割!? 排出起源でみるCO2排出量の割合

エネルギー起源CO2の排出

出典:国立環境研究所『日本国温室効果ガスインベントリ報告書』(p47)

日本でのCO2の排出量は温室効果ガスの91.3%を占め、うち、燃料の燃焼にともなう排出が94.7%と、そのほとんどです。内訳はエネルギー産業で40.5%、製造・建設業で23.5%、運輸業が18%となります。

1990年からの推移をみると、製造・運輸は25.6%減、運輸業で1.6%減と減少傾向となっていますがエネルギー産業は21.5%増と大きく増え続けています。CO2排出量の削減にはこのエネルギー産業部門での取り組みが重要となるでしょう。

出典:国立環境研究所『日本国温室効果ガスインベントリ報告書』(p48)

では、ここからはこのCO2排出量の削減に向けた世界の動きと、日本の取り組みについてまとめていきます。

3. 世界が注目。 CO2排出削減に向けた動き

パリ協定

世界では、1992年に国連気候変動枠組条約が採択され、1995年より、毎年「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が開催されています。ここでは各国首脳により、地球環境についての話し合いが行われており、温室効果ガス排出削減についても議論されています。

2015年にパリで行われた「第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」では、2020年以降の温室効果ガス削減に向けた新たな国際的な枠組が定められ、1997年の京都議定書からさらに踏み込んだ取り決めが採択されており、2016年に発効されています。これは京都議定書が先進国を対象にしているのに対し、新興国、途上国を含めた全ての国での取り組みとなっています。

概要としては、

世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること。

  • 主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。

  • 全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し,レビューを受けること。

  • 適応の長期目標の設定,各国の適応計画プロセスや行動の実施,適応報告書の提出と定期的更新。

  • イノベーションの重要性の位置付け。

  • 5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。

  • 先進国による資金の提供。これに加えて,途上国も自主的に資金を提供すること。

  • 二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用。

出典:外務省『2020年以降の枠組:パリ協定』

となっており、先進国、新興国合わせた世界全体で取り組むための内容となっています。日本では2030年までの目標として、温室効果ガスの排出量を2013年度比で26%削減するという目標を掲げています。

※2021年4月には気候変動サミットで菅首相は2030年度目標を2013年度比46%へ引き上げることを表明しています。

SDGs

SDGsは2015年の国連サミットで採択された、「2030年までに持続可能でより良い世界を目指すために決められた17のゴール(目標)」のことで、地球上の誰ひとり取り残さない世界の創出を目指した取り決めとなっています。

この中には、貧困や、飢餓、教育などの他に気候変動に対する項目も取り入れられています。

出典:外務省『SDGsとは』

CO2排出削減へむけた日本の取り組み

日本ではCO2排出削減への取り組みとして、

  • イノベーションの推進

エネルギー起源CO2削減のための次世代エネルギー(宇宙太陽光・高度化した風力・次世代蓄電池・海流発電)へのイノベーションと、実用化・普及のためのイノベーション、市場・インフラ・制度・規制のイノベーション。

  • グリーンファイナンスの推進

イノベーションに取り組む企業の見える化や対話を通じたESG投資のメカニズムの構築と、日本の資本市場のグリーンブランド化。

  • ビジネス主導の国際展開・国際協力

環境性能の高い技術、製品の世界展開を通じ、世界の排出削減へ貢献とパリ協定の長期目標に整合したインフラの輸出。

の3点を掲げています。

出典:環境省『パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略』

また、2020年10月の臨時国会の所信表明演説において菅首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しています。

※カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量から、森林などによる吸収量を差し引いて実質ゼロを意味しています。

これにより政府は、「予算」、「税制」、「金融」、「規制改革・標準化」、「国際連携」と言った様々な分野での施策を打ち出しています。

出典:環境省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』

4. 【まとめ】CO2の排出量とその割合から削減の方向性を検討しよう

  • 世界でのCO2排出量の先進国と新興国での割合は2004年に逆転し、現在は中国を筆頭に新興国からの排出量が増え続けている。これは新興国の経済発展によるもので、先進国では新興国に対してのCO2排出削減への支援が求められている。

  • 中国のCO2排出量は、2019年に98億トンを超え、世界全体の約3割にのぼっている。中国では2030年までに減少、2060年までにカーボンニュートラルを実現すると表明している。

  • 日本のCO2排出量は2019年に11億トンで世界で5番目の排出大国となっており、国民ひとりあたりの排出量も世界4番目と高い排出量になっている。

  • 日本のCO2排出は94.7%が化石燃料の焼却にともなう排出となっており、特にエネルギー産業部門が4割を占め、この部門での削減の推進が重要視されている。

  • 日本ではCO2排出削減について、パリ協定、SDGsを通し、イノベーションの推進、グリーンファイナンスの推進、ビジネス主導の国際展開・国際協力を柱として、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて取り組んでいる。

今後は世界各国の連携と、エネルギー問題についてのイノベーションが必要となるでしょう。

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