CO2吸収コンクリートの実態とこれからの課題とは

Kw:CO2吸収技術、CO2吸収コンクリートとは

 

CO2吸収コンクリートの実態とこれからの課題とは

 

温室効果ガスの排出をゼロにするカーボンニュートラルに向けて、CO2吸収技術に関する研究が日々進められています。特にCO2吸収コンクリートは、今後市場に普及することによって、CO2排出量が大きく変化するかもしれません。

この記事では、CO2吸収コンクリートの概要と今後の課題、実用例などについてまとめています。

目次

1. CO2吸収技術とCO2吸収コンクリート

2. CO2吸収コンクリートの課題と対策

3. CO2吸収コンクリートの実用例(CO2-SUICOM)

4. まとめ:環境に配慮された製品を積極的に購入しよう!

1. CO2吸収技術とCO2吸収コンクリート

カーボンニュートラルに向けたCO2吸収技術と、それを実用化した一例であるCO2吸収コンクリートについて解説しています。

(1)カーボンニュートラルに向けた取り組み

日本では2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指しています。カーボンニュートラルの実現のカギを握るのが炭素を資源として利用する、カーボンリサイクルという取り組みです。カーボンリサイクルは様々な事業分野において研究が進んでおり、その研究拠点は全国に広がっています。

出典:資源エネルギー庁「CO2削減の夢の技術!進むカーボンリサイクルの開発・実装」

(2)カーボンリサイクル製品の具体例

CO2が原料として使われているカーボンリサイクル製品についていくつかご紹介します。

CDやDVD

電化製品に使われる「ポリカーボネート」という物質を、CO2を原料として製造する技術が開発されています。現時点では、製造に使用されるCO2の量よりも製造過程で排出されるCO2の方が多くなっていますが、今後の研究次第では、CO2削減につながるかもしれません。

化粧品等の容器

プラスチック容器やポリ袋に使われている「ポチエチレン」という物質にCO2を再利用するといった計画が進められています。ただ、プラスチックは焼却すると二酸化炭素だけでなく有害物質も発生するため、その対策も重要視されます。

衣類

旭化成は、衣料品などに使用されるウレタンをCO2から生成する開発に着手しました。この研究が進めば、将来的に二酸化炭素から作られた衣類などが販売されるかもしれません。

出典:資源エネルギー庁「CO2削減の夢の技術!進むカーボンリサイクルの開発・実装」

(3)CO2吸収コンクリートとは

実用化されているカーボンリサイクル製品のひとつがCO2吸収コンクリートです。CO2吸収コンクリートとは、原料のひとつであるセメントの代替材料として、高炉スラグや石炭灰などの産業廃棄物を利用したコンクリートです。

そもそもコンクリートとは通常、セメントや水、砂などによって作られており、建築物や道路など様々な用途で利用されています。セメントの原料には都市廃棄物や産業廃棄物等の廃棄物が利用され、それらに含まれる石灰石などの原料を「プレヒーター」と「キルン」と呼ばれる設備によって高温で焼却したあとに、急速冷却することでセメントが生成されます。

しかし、高温で焼却して冷却する過程で多くのCO2が発生し、セメント産業では年間4000万トン以上のCO2が排出されているため、その対策が問題視されていました。

そこで、焼却して冷却する過程においてCO2を回収する技術が開発され、その回収したCO2と廃棄物を混合させたものをセメントの代わりとして、コンクリートを作ることでCO2の排出を大幅に抑えることが可能になりました。

昨今、ロシアのウクライナ侵攻の影響で石炭の価格が上昇し、それに伴ってセメントの価格も上昇しています。このような中で、セメントの一部が代替でき、環境にも優しいCO2吸収コンクリートは効果的な製品といえるでしょう。

出典:資源エネルギー庁「コンクリート・セメントで脱炭素社会を築く!?」

出典:政府広報オンライン「二酸化炭素を吸収するコンクリート」

2. CO2吸収コンクリートの課題と対策

CO2吸収コンクリートの課題と課題解決に向けた対策について解説しています。

低価格化の実現

現在商品化されているCO2吸収コンクリートの価格は、一般的なコンクリート製品の2~3倍の価格になっているため、CO2吸収コンクリートを市場に普及させるためには、製品の価格を下げる必要があります。

強度や耐久性

コンクリートはビルや道路などの大きな構造物に利用されることが多いため、CO2吸収コンクリートも一般的なコンクリートと同様に、強度や耐久性といった安全性への対策は万全にしなければなりません。

課題解決に向けた対策

低価格化の実現に関してはCO2吸収コンクリートの製法を一から見直すという見解もあり、コスト軽減を実現するための新たなコンクリート生成手法について研究が進められています。

強度や耐久性の確保に関しては、CO2吸収コンクリートにおける品質管理や評価の手法が確立できていないため、実験や検証データを通して、管理や評価の手法の標準化が進められています。

出典:資源エネルギー庁「コンクリート・セメントで脱炭素社会を築く!?」

3. CO2吸収コンクリートの代表例(CO2-SUICOM)

CO2吸収コンクリートの代表例のひとつであるCO2-SUICOMという製品について解説しています。

(1)CO2-SUICOMとは

CO2-SUICOMとは、鹿島建設、中国電力、デンカ株式会社、ランデス株式会社の4社が共同開発したCO2吸収コンクリートです。

原料のセメントの一部を高炉スラグ等の産業廃棄物で代替することによって、1立法メートルあたり197キログラムのCO2を削減することに成功しました。

(2)CO2-SUICOMの魅力

CO2-SUICOMの魅力は、製造時のCO2排出量が実質ゼロ以下で、製造すればするほどCO2を減少させることができるという点です。

CO2-SUICOMはセメントの一部を廃棄物で代替する技術のほかに、炭酸化という新たな技術も取り入れられています。炭酸化とは、セメントとCO2を反応させることで、コンクリート内にCO2を取り込むという手法です。したがって、CO2-SUICOMの製造時におけるCO2の排出量よりも取り込むCO2の量が多ければ、排出量を実質ゼロ以下にできることになります。

さらに、研究チームの調査によるとCO2をコンクリート内に吸収させることで、コンクリートを固めて安定させるといった、セメントと同じような効果があることが明らかになりました。

CO2-SUICOMはCO2排出量を大幅に抑えることができ、強度や耐久性も優れていることから、理想的なCO2吸収コンクリートだといえます。

出典:政府広報オンライン「二酸化炭素を吸収するコンクリート」

4. まとめ:環境に配慮された製品を積極的に購入しよう!

この記事では主にCO2吸収コンクリートについて説明しましたが、カーボンニュートラルに向けて二酸化炭素の排出を減少させるような製品はたくさん開発されています。電気自動車や省エネの家電製品もその一つです。

一般的な製品に比べて価格は多少高いかもしれませんが、一人ひとりがそれらの製品を使うことで、カーボンニュートラルの実現に近づくでしょう。今後、買い物をするときはカーボンリサイクル製品があるか注目してみてください。

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