ESGインテグレーションとは?事例とともに紹介

近年世界ではESG投資が注目されていますが、そのESG投資の一種であるESGインテグレーションも注目されています。ではESGインテグレーションとはどのような投資なのでしょうか。今回の記事ではESGインテグレーションの概要や手法、さらに事例まで紹介します。

目次

  1. ESGインテグレーションとは

  2. ESGインテグレーションの手法とは?

  3. ESGインテグレーションの事例

  4. まとめ:ESGインテグレーションを理解して、企業価値を高めよう!

1. ESGインテグレーションとは

まずはESGインテグレーションについて概要を説明していきます。

どんな投資なのか

ESGインテグレーションとは投資家が環境、社会、ガバナンスの要素を投資マネジャーが体系的かつ明示的に考慮し、財務分析に取り入れ、企業を分析して投資先を選定する投資手法です。財務情報と非財務情報の両方の情報を使うことで、より正確に企業を分析することができ、ESG投資の様々な手法の中でも最も利益を重視する手法になります。

出典:金融庁「ESG関連公募信託をめぐる状況」p2~5

なぜ注目されるようになったか

ESGインテグレーションが注目されるようになったのは企業の売上や利益などの財務データの説明力の低下が原因です。つまり財務データが企業価値の決定にそれほど影響しなくなっています。

その結果非財務データの影響力が向上し、財務データと非財務データを掛け合わせて企業を分析するESGインテグレーションが注目されるようになりました。

ESGインテグレーションの効果は

ESGインテグレーションをすることでより精度の高い企業分析が可能になります。なぜなら財務データだけでなく非財務データも考慮していることから、より多くの企業の情報を収集することができるからです。さらに銘柄選定にESGインテグレーションを利用すると長期的に高いパフォーマンスが期待できるという効果もあります。

出典:環境省「ESG金融懇談会(第3回)議事概要」p,1.p,2.(2018/07/04 )

2. ESGインテグレーションの手法とは?

では具体的にESGインテグレーションの手法を見ていきます。非財務情報については分析する人によって方法が異なっていますが、財務情報については今回はDCF法というものを紹介します。

財務情報と非財務情報を統合させる

ESGインテグレーションは財務情報と非財務情報を掛け合わせて企業価値を分析して、投資先を選定することです。

掛け合わせるには損益計算書や賃借対照表などの財務情報を用いて企業のESGへの取り組みを考慮して実際に企業価値を計算していきます。つまりこの投資手法ではESGに配慮した経営をしている企業が高い評価を得やすくなります。

ではその計算はどのように行うのかをこれから説明していきます。

DCF法を用いて企業価値を計算する

DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)とは将来のお金の流れを現在の価値に換算し、全て足すことです。この方法を用いて企業の価値を導き出し、その企業が将来利益を得られるかどうかを判断します。

具体的な計算式は以下の通りです。

式現在価値(PV)=FCD11+r+FCD1(1+r)2++FCDn(1+r)n+継続価値(1+r)n

FCDkk年目のフリーキャッシュフロー

r:割引率

h:予測最終期間

この式を計算するにはフリーキャッシュフローや割引率、予測最終期間などの数値を準備する必要があります。それぞれどのように準備すればよいのか説明していきます。 FCFフリーキャッシュフローとは株主に分配できるお金のことです。損益計算書と貸借対照表から算出します。

FCD=EBIT*(1-法人税率)+減価賠償費-設備投資-Δ運転資本

割引率:将来のお金の価値というものは現在の価値に換算すると減少します。そこで割引率を用いてどの程度価値を減少させるかを決めます。

予測最終期間は投資利益が最高になるのは何年間株を保有すればよいかという期間のことです。専門家によって意見が分かれますが、大体5〜10年が利益が最高になるそうです。

出典:経済産業省『エクイティ・ファイナンスに関する基礎知識』p,8.p,9.p,10.(2021/10/26 )

3. ESGインテグレーションの事例

ESGインテグレーションは、投資家が投資先を選ぶ基準として利用されます。ESGインテグレーションを有効的に活用することで、企業にとっても投資家を獲得するための有効な手立てとなります。ここでは、企業におけるESGインテグレーションの事例をご紹介します。

三菱UFJ信託銀行

金融機関の「三菱UFJ信託銀行」は、企業の持続的成長に着目する積極性のある投資家に対して、ESG要因を含んだ非財務価値(人的資本技術や研究開発ブランドなど)を活用することでESG課題の解決や事業の拡大などにつなげる取り組みをしています。

この取り組みを「「価値転換プロセス」と名づけ、企業価値の向上を目指しています。投資家には、非財務価値を併せた価値転換プロセスにおける、自社の持続的成長をアピールすることで企業価値向上の持続可能性の認識を共有しています。

出典:三菱UFJ信託銀行『ESG インテグレーションの現在』p,16.p,17.p,18.(2019/7/25 )

オムロン株式会社

大手電気機器メーカーの「オムロン株式会社」は、ESG要因のサステナビリティの課題を抽出し、これらの課題にしっかりと取り組み解決することが、中長的な企業価値の向上になると考えています。

サステナビリティの取り組みや重要課題の特定やその進捗結果の情報をさまざまな媒体で開示することで、企業の存在価値をアピールすることに成功しています。

出典:経済産業省『オムロンの統合経営における ESGインテグレーションの取り組み』p,14.p,15.(2018/02/15)

第一生命保険株式会社

生命保険会社の「第一生命保険株式会社」は中長期視点での幅広い資産を保有する投資企業として、2023年度末までにESGインテグレーションを完了することを掲げています。

2020年度にESGアナリストを設置し、2023年度末までに自社の全資産を投融資先企業のリサーチプロセスや、運用方針などに取り込み、2019年度の投資金額約5,500億円の倍増以上の増額を目指しています。

出典:環境省『第一生命のインパクト投資』p,4.p,5.(2020/04/16)

4. まとめ:ESGインテグレーションを理解して、企業価値を高めよう!

このようにESGインテグレーションは財務情報だけでなくESGの観点からも企業の価値を評価して投資先を決定します。

この投資手法はこれからも注目される可能性がありますのでESG経営に力を入れている企業が投資先として選ばれやすいです。ESGインテグレーションを理解して投資家がどんな視点で投資先を選んでいるのかを知り、ESG経営に力を入れることで企業価値の向上に繋がるでしょう。

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