地球沸騰化とは?その意味と企業が取り組むべき課題を解説

地球沸騰化とは、地球温暖化よりも懸念される状況であり、従来の気候変動の対策では間に合わないとされています。

この記事では,地球沸騰化の意味や、地球沸騰化に至った背景、企業に生じる影響などを分かりやすく解説します。大きなリスクを背負わないためにも、一刻も早い企業の取り組みが重要です。

目次

  1. 地球沸騰化の意味とその背景

  2. 地球沸騰化が企業に及ぼす影響

  3. 地球沸騰化に効果が期待できるカーボンネガティブ

  4. 地球沸騰化に効果が期待できる取り組み事例

  5. まとめ:地球沸騰化の危機感をしっかりと受け止め、今すぐ行動できる企業を目指そう!

1. 地球沸騰化の意味とその背景

今年の7月、国連のグテーレス事務総長は会見で「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」との言葉を残し、それにより、企業などは気候変動における対策をより加速させる必要性が出てきました。ここでは、地球沸騰化の意味や、地球温暖化との違いについて解説します。

地球沸騰化とは?

地球沸騰化とは、2023年7月の世界の平均気温が観測史上最高となる見通しから生まれた言葉で、今まで定着していた「地球温暖化」よりもレベルの高いものとされています。

実際に日本でも、この夏の気温が40℃を超える地域も増えており、熱中症による救急搬送も昨年の同時期と比べて2.3倍となっています。世界に目を向けると、アメリカのデスバレーでは53℃を超える気温を観測しています。

また、地球沸騰化による山火事も相次いでおり、ギリシャのロードス島では熱波による山火事の発生、記憶に新しいハワイのマウイ島の山火事は異常気象によるハリケーンでの断線が原因だと言われています。

出典:防災新聞『災害級の暑さで地球が沸騰する時代に到達!人類が生き残るためには 』(2023/08/19)

地球沸騰化に至った背景

突然の地球沸騰化という言葉の誕生は、今までの地球環境の対応による我々人類の責任だとグテーレス事務総長は伝えています。

特に、地球沸騰化の原因となる温室効果ガスの排出量の約80%をG20(日本を含む20の国と地域)が担っているとし、この地球沸騰化が新しい常態となると警告しています。

出典:東京新聞 TOKYO Web『「地球沸騰化の時代」警告 国連総長、対策強化を要請』(2023/07/28)

地球温暖化との違い

もともと異常気象は、地球温暖化が原因と言われており、世界では地球温暖化による気候変動の対策を進めています。地球温暖化は、CO2(二酸化炭素)を含む温室効果ガスが大きく影響し、CO2は、私たちが生活するためのエネルギー源とした石炭や石油を燃やすことによりに排出されています。

温室効果ガス排出は、気温の上昇の要因であり、これが地球温暖化へとつながります。1880年〜2012年の間で世界の平均気温は0.85℃上昇し、その後も地球温暖化の影響は大きさを増し続け、2023年の7月には1880年前後の7月と比べて1.5℃上昇したとの見方もあります。

これにより、世界の平均気温が観測史上最高レベルとの見通しから地球温暖化以上の地球沸騰化という言葉で表現されています。平均気温1.5℃の上昇は、「パリ協定」の世界の平均気温を1.5℃で抑える努力の目標値に追いついてしまった結果となっています。

出典:環境省『地球温暖化の現状と原因、環境への影響|COOL CHOICE 未来のために』(2023/01/30)

出典:BBCニュース『7月は史上最も暑い月に 国連総長は「沸騰化の時代」と警告 』(2023/07/28)

出典:環境省『パリ協定の概要』p,1.(2018/10/23)

2. 地球沸騰化が企業に及ぼす影響

このまま地球沸騰化が続くと、企業にとっても大きな影響を及ぼすこととなります。ここでは、地球沸騰化が企業に及ぼす影響をご紹介します。

CO2削減の取り組みの強化

日本は、パリ協定において「2030年までに13年度比で46%のCO2削減」を目標としていますが、2022年度時点で他の国の目標と合わせても「2030年のCO2排出量は10年比で10.6%増」と推測されています。

地球沸騰化の状況は、世界の温室効果ガス排出量の約80%を日本を含むG20が排出しているとの指摘により、各国や企業にもこれまで以上のCO2削減の取り組みが求められています。

出典:産経新聞『【主張】地球沸騰の時代 対応策強化に本腰入れよ 』(2023/08/04)

出典:日本経済新聞『2030年温暖化ガス10.6%増 各国目標分析、パリ協定遠く』(2022/10/26)

出典: 防災新聞『災害級の暑さで地球が沸騰する時代に到達!人類が生き残るためには 』(2023/08/19)

自然災害による企業へのダメージ

地球沸騰化の原因は、温室効果ガスによる気候変動が大きな原因とされています。気候変動による異常気象は世界でも大きな問題となっており、2023年度7月における異常気象は世界全体で発生しています。

特に、気温の上昇が多くを占め、気温が上昇した地域では大雨も併発しており、日本においては気温の上昇と併せて気象災害も発生しています。このような異常気象は企業にとって、施設へのダメージやサプライチェーンの寸断、従業員の健康被害など、企業の経営に多大な損害を及ぼす可能性があります。

この期間の主な異常気象・気象災害

出典:気象庁『世界の月ごとの異常気象』(2023/08/15)

出典:環境省『TCFDを活用した経営戦略立案のススメ』p,9.p,10.(2023/03/08 )

3. 地球沸騰化に効果が期待できるカーボンネガティブ

地球沸騰化を食い止めるには、企業のCO2排出量削減の取り組みが重要となります。ここで、注目されるのが「カーボンネガティブ」です。ここでは、カーボンネガティブの効果についてご紹介します。

カーボンネガティブとは?

カーボンネガティブとは、大気中に放出されるCO2排出量よりも大気から吸収するCO2吸収量の方が多い状態を指します。同じような意味合いの「カーボンニュートラル」は、CO2排出量とCO2吸収量の差を「実質ゼロ」にするというもので、CO2削減効果としては、CO2排出量よりもCO2吸収量が上回る「カーボンネガティブ」の方が効果が大きいということになります。世界では、「カーボンネガティブ」の積極的な取り組みが注目を浴びています。

出典:国立環境開発法人国立環境研究所『地域における 「脱炭素社会ビジョン」』p,12.( 2023/07/20)

期待されるネガティブエミッション技術

ネガティブエミッション技術(=NETs)とは、大気中のCO2を回収して吸収し、貯留・固定化することで大気中のCO2除去に貢献する技術のことで、自然のCO2吸収・固定化の過程に、人為的な工程を加えることでCO2除去の効果を加速させる技術やプロセスを指します。大きな取り組みとして「植林・再生林」「BECCS」「DACCS」「風化促進」「ブルーカーボン・ブルーリソース」などがあります。

ネガティブエミッション技術

出典:経済産業省『ネガティブエミッション技術について』p,6.(2022/02/17)

4. 地球沸騰化に効果が期待できる取り組み事例

地球沸騰化には、企業の技術や取り組みに大きな効果が期待されます。ここでは、地球沸騰化に効果が期待できる企業の取り組み事例をご紹介します。

株式会社エコシステム

瓦のリサイクルを行なう「株式会社エコシステム」では、保水効果と浸水性に特化した特殊コンクリート製品「K-グランド」を開発しました。これは、都市部では大雨に被害による浸水が多発していることから、瓦の浸水性を生かしたコンクリートを道路に利用することで、都市部の洪水を軽減する効果があります。また、気温上昇によるヒートアイランド現象を、保水効果によって軽減させる効果もあり熱中症を予防する効果にも期待があります。

出典:環境省『都市型洪水やヒートアイランド現象を抑制するリサイクル舗装材 : 株式会社エコシステム』(2023/6/28)

株式会社ダイセキ

産業廃棄物の収集運搬、リサイクルなどを手掛ける「株式会社ダイセキ」は、リサイクル処理が難しい使用済み溶剤を引き取り、これらを再生燃料にリサイクルしています。2020年度には、廃溶剤130千トンと廃油76千トンを受け入れ、203千トンの再生燃料として出荷しました。これは、石炭155千トンのカロリー換算に相当し,

再生燃料の代替で化石燃料使用量の削減に貢献しています

出典:環境省『再生燃料による化石燃料使用量と温室効果ガスの削減 | 循環経済パートナーシップ』(2021/10/11)

ヤンマーホールディングス株式会社・有限会社フクハラファーム

「有限会社フクハラファーム」は、稲作で出たもみ殻の有効活用のため「ヤンマーホールディングス株式会社」と共同で、もみ殻を有効活用して熱と電気を供給する「もみ殻ガス化発電システム」の実証試験を進めています。

本来、もみ殻を熱利用する際に発生する「くん炭」には有害物質の発生が伴いますが、ヤンマーが開発した特許技術により有害物質を発生させずガス化を行うことに成功しました。「くん炭」は、カーボンネガティブ技術に必要な「バイオ灰」の一種であり、土壌に混ぜることでCO2の排出を防ぐことができます。

出典:環境省『もみ殻を活用した発電事業とくん炭の土壌還元による炭素固定の取り組み | 循環経済パートナーシップ』(2021/05/31)

鹿島建設株式会社

建設業の「鹿島建設株式会社」は、コンクリート製造時のCO2排出量を実質ゼロ以下に抑える技術を用いて製造された、カーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」を高速道路の橋脚工事に初導入しました。

その結果、自然に排出されるCO2排出量を100%削減、さらに10%のCO2の吸収を達成しました。差し引き22 kg/m3のCO2は橋脚に固定化され、カーボンネガティブコンクリートの使用で橋脚1基当たり59kgのCO2排出量削減の効果が実証されました。

出典:環境省『橋脚1基当たり59 kg、カーボンネガティブコンクリートのCO2削減効果』(2023/06/15)

5. まとめ:地球沸騰化の危機感をしっかりと受け止め、今すぐ行動できる企業を目指そう!

 

今や、地球は「温暖化」に留まらず「沸騰化」の時代となりました。地球沸騰化がこの先も続けば、気温が上昇し続け異常気象による自然災害が頻発し、企業は経営存続の危機となる懸念があります。地球沸騰化を食い止めるには、企業の脱炭素経営が不可欠です。今こそ、地球沸騰化の危機感をしっかりと受け止め、今すぐに行動を起こせる企業を目指しましょう。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説