注目のウールリサイクルとは!?ファストファッションとカーボンニュートラルについて解説!
- 2023年08月18日
- 環境問題
ファストファッションは、早く、安く、手軽なファッションを提供するスタイルとして人気を集めていますが、その急速な供給と廃棄によって環境への負荷が高まり、持続可能性に対する懸念が広がっているのが現実です。
本記事では、これの解決策として提示されている、ウールリサイクルとファッション業界の環境課題の大きさについて解説します。
目次
-
ファストファッションと環境問題
-
ファストファッションの環境問題への取り組み
-
注目されているウールリサイクル
-
まとめ:ファッションをこれからも楽しむために環境問題に出来ることから取り組もう!
1. ファストファッションと環境問題
(1)ファストファッションとは?
ファストファッション(fast fashion)は、最新のトレンドを素早く提供する低価格なファッションスタイルを指します。従来のファッション業界では、高価なデザイナーブランドの商品が限られた人々にしか手に入らなかったのに対し、ファストファッションは大衆向けにリーズナブルな価格で流行のアイテムを提供することを特徴としています。ファストファッションの魅力は以下のようなものがあげられます。
-
最新トレンドの追跡
ファストファッションブランドは迅速に最新のファッショントレンドを取り入れます。流行が生まれると、それをすぐに商品化し、消費者に提供します。これにより、多くの人が最新のスタイルにアクセスできるようになります。
-
手頃な価格
ファストファッションは低価格帯のアイテムを提供します。高品質な素材や縫製技術を使用しながらも、コストを抑えることで、多くの人々に手頃な価格でトレンドを楽しむ機会を提供します。
-
変化のスピード
伝統的なファッション業界では、新しいデザインやコレクションを開発するには時間がかかりますが、ファストファッションではデザインから製品化までのプロセスを迅速に進めることができます。これにより、季節ごとに新しいスタイルが提供され、消費者は頻繁に新しいアイテムを手に入れることができます。
ファストファッションの具体的な会社名は、ユニクロ(UNIQLO)、ジーユー(GU)、ザラ(ZARA)、エイチアンドエム(H&M)などがあげられ、生活に馴染んでいる業界です。
ファストファッションの環境問題について、詳しく知りたい方はこちら
URL:ファストファッションの環境問題とは?解決策も併せて解説!
出典:FAST RETAILING『ファスト・ファッション(fast fashion)』
(2)ファストファッションの環境問題への影響
ファストファッションは、製造にかかるエネルギー使用量やライフサイクルの短さなどから環境負荷が非常に大きい産業と指摘されています。以下に、その主な環境問題をまとめます。
-
製造段階の環境負荷
服を1着を作る為には、CO2の排出や大量の水の使用、廃棄物の発生など、様々な環境負荷が発生します。
-
大量生産・大量消費
国内における衣服の供給数は増加し、一方で衣服一枚あたりの価格は年々安くなり、市場規模は下がっています。これにより、衣服のライフサイクルが短期化し、大量廃棄への流れが懸念されます。
-
廃棄の問題
衣服がごみとして出された場合、再資源化される割合は5%程度で、ほとんどはそのまま焼却・埋め立て処分されます。その量は年間で約48万トンにも上ります。
-
リサイクルの困難さ
衣服は色々な素材が混合されてできており、また海外における生産段階は、数多くの工場や企業によって分業されているため、環境負荷の実態や全容の把握が困難な状態となっています。
これらの問題に対処するためには、衣服を製造・販売する企業と使用する生活者の双方のアクションが不可欠です。企業は、生産工程で廃棄される繊維を少なくすること、生活者に長く着てもらうための商品開発、リサイクルを想定し再利用しやすい素材選びや分解しやすいデザインなどの取り組みが求められます。
一方、消費者は、所有している一着をできるだけ長く着ること、服のお直しを施すこと、シェアリングサービスやレンタルサービスを活用することなどが提案されています。
2. ファストファッションの環境問題への取り組み
(1)生活の中で出来る環境問題への取り組み
生活の中で出来るファッション業界の環境問題への取り組みは以下のようなものがあげられます。
-
サステナブルファッションの推進
ファッション産業は、衣服の生産から着用、廃棄に至るまで環境負荷を考慮したサステナブル(持続可能)なファッションへの取り組みを急速に拡大しています。これには、生産工程で廃棄される繊維を少なくすること、生活者に長く着てもらうために色落ちしにくい染色技術やほつれにくい縫製技術などの開発、リサイクルを想定し再利用しやすい素材選びや分解しやすいデザイン、さらにはモノマテリアル(単一素材)での商品開発などが含まれます。
-
衣服のリサイクルとリユース
企業は古い衣服の回収しやすい仕組みづくりやリサイクル技術の開発、元の製品に新たな付加価値を持たせて別の製品として再生させるアップサイクルへの取り組みや、リペア(修繕)サービスの拡充などにも取り組んでいます。
(2)自社の活動が環境に与える影響を定量化する取り組み事例
グローバルなラグジュアリーグループであるKeringは、自社の活動が環境に与える影響を測定し定量化するために、環境利益損失(EP&L)というツールを使用しています。彼らは透明性を確保するためにデジタルEP&Lプラットフォームを立ち上げ、持続可能性についての認識を高めるための無料アプリ「My EP&L」を作成しました。
Keringは、自社のサプライチェーンが環境に最も大きな影響を与えていると認識しており、プロセスの改善や最適な技術の選択に取り組んでおり、彼らはステークホルダーとの透明性を達成し、企業自身と消費者が環境への影響を明確に理解し、改善に向けた行動を促す一例となっています。
出典:環境省『自社の活動が環境に与える影響を測定し、定量化する取り組み事例』(p.1)
(3)各製品の環境負荷を明示する取り組み事例
株式会社アダストリアの子会社である株式会社ADOORLINKは、自社製品の環境影響を表示するための取り組みを行っています。彼らのライフスタイルブランドであるO0uは、持続可能な素材と製造技術を使用し、各製品のCO2排出量と水使用量を公開しています。
また、製品の完全なトレーサビリティを確保し、サンプルの数量を減らすために3DCG技術を使用し、正確な需要予測のためにAIを使用しています。ADOORLINKは、持続可能なショッピングスタイルを推進し、環境に優しい素材を使用し、衣服をアップサイクルしてファッション廃棄物を減らすことを推進しています。
出典:環境省『製品ごとの環境負荷を分かりやすく表示する取り組み事例』(p.1)
(4)有機綿の普及を目指す取り組み事例
このケーススタディは、有機綿の使用を通じた持続可能性の推進について述べています。有機綿とは、有機栽培で育てられた綿のことをいいます。有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬の使用を抑え、遺伝子組み換え技術を使用せず、自然の方法で農作物を育てることをいい、これにより、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する方法で農業を行うことができます。
日本の大手繊維取引会社である豊島株式会社は、ビジネスを行う中で環境に貢献するために、ORGABITSプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトの目標は、有機綿の割合を1%から10%に増やすことです。同社はまた、有機綿の糸ブランドであるTRUECOTTONをリリースし、これにより有機綿の取引量が45%増加しました。さらに、同社はWWF日本とパートナーシップを結び、「自然と動物を救う」という寄付プロジェクトを立ち上げました。
出典:環境省『オーガニックコットンに関する取組事例』(p.1)
出典:農林水産省『【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~』
3. 注目されているウールリサイクル
ウールは循環型の繊維であり、その特性を活用することでファッション業界は循環型経済に適合する製品の開発に取り組むことができます。以下に、ウールの循環型利用についての主なポイントをまとめていますが、以下から分かる通り、ウールはファッション業界で問題視されている様々な課題の解決ができ、カーボンニュートラル促進へ貢献出来ると考えてられています。
-
再生可能な資源
羊は毎年新しく毛を生やすため、ウールは再生可能な繊維と言えます。ウールは日光、空気、牧草、水のシンプルな組み合わせで育てられます。ウールのフリースは全ての部分が利用できるため、無駄がありません。
-
再生可能で土に還る
ウールは100%天然の繊維であり、土に還る性質を持っています。これにより、ウール製品は環境に優しいと言えます。
-
ゴミと汚染を減らす
ウールの製造過程は他の繊維に比べてエネルギー消費量が少なく、水の使用量も綿に比べて70%近く少ないとされています。
-
使用期間の延長
ウールの衣服は洗濯が少なく済むためエネルギーと水の消費を削減でき、また「新品のよう」な見た目を長期間維持できます。
出典:ザ・ウールマーク・カンパニー『ウールで循環型デザインを目指す』
4. まとめ:ファッションをこれからも楽しむために環境問題に出来ることから取り組もう!
ファッション業界の企業が出来る環境問題への取り組みとして、ウールリサイクルがカーボンニュートラルを実現するための重要な手段として注目されていますが、一方で、普段の生活の中でも、リサイクルやウール製品の購入など出来ることが沢山あります。皆さまも普段の生活で出来ることから取り組んでいきましょう。