PRI(責任投資原則)とは?意味や活動目的、ESGとの関係性

PRIとは、機関投資家の投資に向けた意思決定プロセスや株式の保有方針の決定に、投資先企業の財務状況に加え、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance:企業統治)のESG要素を反映させるための考え方を示す原則です。

PRIは長期的に責任投資を行うことにより、企業の経営の在り方、さらには環境や社会全体をよりよくすることを目指しています。今後署名機関も増え、さらに投資基準として重要視されるであろうPRIについて、経営に取り入れるメリットも含め、わかりやすくご紹介します。

目次

  1. PRI(責任投資原則)とは?

  2. PRIとESGとの関係性

  3. PRIを考慮するメリット

  4. まとめ:PRIを理解し、課題や目的に取り組もう

1. PRI(責任投資原則)とは?

PRI(責任投資原則)とは、機関投資家の投資に向けた意思決定プロセスや株式の保有方針の決定に、投資先企業の財務状況に加え、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance:企業統治)のESG要素を反映させるための考え方を示す原則です。では、PRIにはどのような目的があるのでしょうか。

出典:金融庁「「ICGN 機関投資家責任原則」・「国連責任投資原則」の概要」p8

(1)PRIの目的

PRIは、投資先企業の財務状況に加え、ESG要素を考慮した投資(責任投資)は、経済的に効率の良い持続可能な国際金融システムをつくり、環境や社会全体に利益をもたらすと考えています。

そのため、2006年に国連総会において提唱されて以来、深刻化している気候変動等の環境問題や人種差別等の社会問題に、財務上のリスクや機会と社会的な成果を繋げる投資を通じて貢献することを目的としています。

出典:PRI「責任投資原則」p4.5

(2)PRIの署名機関数

PRIの署名機関数は、2006年の発足以来増加し続けており、2021年には4000機関にも迫っています。また同時に、資産を保有するアセット・オーナー含む署名機関の運用資産額は、2006年の約12倍にもなる120兆ドルにまで増加しています。

これは気候変動や所得の不平等など、PRIが使命として掲げる、(経済的に報われると同時に、環境や社会全体に利益をもたらす持続可能な国際金融システムに加え、持続可能な社会への関心の高まりや、ESGに関する問題を起こした結果、財務上に重大な影響があった企業がいくつもあり、投資家間で協働して責任投資に取り組むべきだという意識ができたことによるものだと考えられます。

持続可能な社会への関心は依然として高く、2050年カーボンニュートラル(CO2排出量を削減し、吸収量を増加することで、実質的な排出量をゼロにするもの)が掲げられている現代では、日本においてもさらなる署名機関数及び運用資産額の増加がみられるでしょう。

出典:PRI「責任投資原則」p3,5

(3)PRIの6つの原則

PRIは、ESGを取り込んだ投資の方針として以下の6つの原則を定めています。

  1. 投資判断にESGを組み込む:投資方針にESGを取り入れ、内外の運用マネージャーや投資サービスプロバイダーへの要求も盛り込まれています。

  2. 活動的な株主としての役割:ESGの観点に立って企業とやり取りをしたり、ESGに基づく株式所有方針を開示して企業にアピールしたりすることがあります。

  3. 開示の要求:(グローバル・レポーティング・イニシアティブのツールなどを用いた)ESG 問題についての標準化された報告書を要求することがあります。

  4. 業界全体での取り組みを促進:資産運用業界全体でのESGの取り組みの普及と実施を推進します。

  5. 投資家間での協働:投資家間で情報共有を行い、人的資源・資金を集約したり、共同で発言や支援を行ったりします。

  6. 透明性の確保:ESG 課題問題が運用の実務面においてどのように組み込まれているかや、積極的な株主活動の状況を開示することがあります。

出典:環境省「責任投資原則」p1. p2

2. PRIとESGとの関係性

PRI(責任投資原則)は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の側面を投資判断に取り込むための国際的なイニシアチブです。PRIでは、ESGのそれぞれの項目において、以下のような観点から評価しています。

(1)Environment(環境)

・気候変動

・資源の枯渇

・廃棄物

・汚染 

・森林減少

(2)Social(社会)

・人権 

・現代奴隷制

・児童労働

・労働条件

・従業員関係 (エンプロイー・リレーションズ)

(3)Governance(ガバナンス)

・贈賄および腐敗

・役員報酬

・取締役会 / 理事会の多様性および構成

・ロビー活動および政治献金

・税務戦略

またPRIは、これらはESG要因の一部に過ぎず、例は無数にあり常に移り変わっているとしており、さらに多角的な視点から評価がなされていると考えられます。

出典:PRI責任投資原則 p4

3. PRIを考慮するメリット

基金や財団、保険会社、証券取引所などの、機関投資家や投資サービスプロバイダーからなるPRI署名機関は、ESGという中長期的な持続性の観点から投資を行い、またPRIとして企業とやり取りをすることで、安定的な投資を行いながらも、投資を通じて企業や環境、社会をよりよくすることを目標としています。

そのため、PRIを考慮した経営を行うことで、ESGの3つの観点から自社の経営を見直すことができ、より安定的な経営を行うことができるほか、PRIとも連携したESG活動をアピールすることで、PRI署名機関からの投資を受けやすくなります。

出典:PRI「PRI 署名機関の署名に関するガイドライン」p4

出典:PRI「価値観を一致させる」p7, p8, p9, p10, p11

4. まとめ:PRIを理解し、課題や目的に取り組もう

PRIは、企業の環境、社会、ガバナンス(ESG)の側面を考慮して投資を行う国際的な取り組みです。PRIを考慮し、ESG活動に取り組むことで、企業は経営における将来的なリスクの低減ができ、競争力を高めることができます。

また、PRI署名機関とやり取りをしながら、ESG課題へ対応していくことで、投資家からの信頼を確保することができます。PRIを考慮した経営を行うことで、競争力のある安定的な経営を行うとともに、投資家等のステークホルダーに対する信頼を確保しましょう。

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