サステナビリティ委員会とは?取り組み方、設置状況や役割など解説

日本は少子化、高齢化が進み、人口減少による労働人口の減少、また、地方の過疎化など労働環境について大きな課題が生まれています。今後の日本での労働環境を考える上でILO(国際労働機関)の活動は大きな指針となるでしょう。

ここではI LOがどのようなもので、ILOにより日本の労働環境がどのように変化していくのかを解説します。雇用問題は企業の経営に大きく関わる重要な問題となりますので、参考にしてみてください。

目次

  1. ILOとは?

  2. ILOによる日本の働き方革命のメリットとデメリットとは

  3. ILOが考える2035年の働き方により労働環境はどう変化する?

  4. 【まとめ】ILOの活動に注目し今後の労働環境の変化に対応しよう!

1. ILOとは?

まず、ILOとはどのような機関で、どのような目的のために活動しているのかを知っておく必要があります。

ILOの概要

ILO(国際労働機関)は「International Labour Organization」の略で、労働条件の改善を通じて社会正義を基礎とする世界の恒久平和の確立に寄与すること、完全雇用、社会対話、社会保障などの推進を目的とする国際機関です。

1919年にスイスのジュネーブを本部として設立され、日本は設立からの原加盟国となっています。(1940年に脱退、1951年に再加盟)

加盟国は、アフリカ、アジア・太平洋、欧州、米州の4つの地域に分けられそれぞれの地域総局に所属します。日本はアジア・太平洋地域(バンコクに事務局)に所属していますが、東京・渋谷にILO駐日事務所が置かれており、ILO駐日事務局は本部直轄となっています。

ILOの活動分野

ILOの活動は労働における様々な問題の解決や、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向けて、仕事の創出、社会的保護の拡充、社会対話の促進、労働者の権利の保障という4つの戦略目標の達成を目指しています。

内容については以下のような項目となっています。

  • 児童労働

2025年までにあらゆる形態の児童労働の撤廃を目指しています。

  • 労働安全衛生

世界では毎年多くの労働者が労働災害や、職業性疾病で命を落としています。ILOではその予防のための啓発を行なっています。

  • 団体交渉と労使関係

団体交渉はILO憲章での基本的権利となり、労使が公正な賃金と労働条件を確立するため団体交渉・労働協約の促進を行なっています。

  • ジェンダー・平等・多様性

すべての働く男女の権利の促進、男女平等の達成を目指しています。国際労働基準の設定や適用の推進を行なっています。

  • 協同組合・社会的連帯経済

協同組合は企業と同様に経済発展に寄与するものとし、1億人以上の雇用を創出、世界人口の4分の1の生計を支えています。

  • 家事労働

家事労働は世界のインフォーマル(非公式)雇用の多くを占めており、劣悪な労働条件、搾取、人権侵害に直面しています。ILOではその権利を守り、均等な機会、待遇を促進しています。

  • 若年雇用

若年層へのディーセントワーク実現を推進し、能力構築や政策提言、啓発活動を進めています。

出典:ILO駐日事務局「ILOの活動分野」

他の国際機関との違いは?

ILOの他にも国際機関として有名なものに、WHO、UNICEF、WTOなどがありますが、それぞれの活動の違いについても解説します。

  • ILO

労働に関する国際機関。労働権利、雇用、社会保障、労働市場、技能開発などに取り組んでいます。

  • WHO

WHO(世界保健機関)は保健に関する国際機関です、疾病予防や医療の向上に取り組んでいます。

  • UNICEF

UNICEF(国際連合児童基金)は子供の権利に関する国際機関です。子供の保護、教育、健康などに取り組んでいます。

  • WTO

WTO(世界貿易機関)は貿易に関する国際機関です。貿易の自由化、ルールの整備などに取り組んでいます。

このような国際機関は他にも多数あり、それぞれが異なる分野に特化し、国際的な問題の解決に向けて活動しています。

2. ILOによる日本の働き方革命のメリットとデメリットとは

ILOでは日本の労働環境の改善のために様々な活動を行なっています。では、ILO主導により働き方の改革が行われることでのメリット・デメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく解説します。

ILOによる働き方改革を行う企業へのメリット

ILOは国際労働基準の設定の他、「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」の国際基準となる「OSHMSに関するガイドライン」を策定しています。

これは職場の安全衛生水準向上を図るため、自主的に行う継続的な安全衛生管理の仕組みで、厚生労働省の「OSHMSに関する指針」はILOのガイドラインに準拠しています。

OSHMSは、ISO(国際標準化機構)により「ISO45001」という国際規格となっており、ISO45001の認証取得は企業に大きなメリットとなります。

(1)安全な労働環境の構築

ISO45001の取得により企業は安全な労働環境を整えることができます。安全な労働に対してしっかり体制をつくり管理することが可能となり、問題点の洗い出しや改善策の提案などがやりやすくなるでしょう。

(2)顧客やクライアントへのアピール

国際規格の取得は安全衛生への取組みが進んでいることを顧客やクライアントにアピールすることができます。

これは企業イメージのアップにつながり、新規顧客の獲得や投資家への投資の判断材料となります。

(3)従業員満足度のアップ

国際規格の取得により安全で働きやすい労働環境が実現すれば従業員の仕事への満足度も向上し、離職率の低下にもつながります。

出典:ILO駐日事務局「国際労働基準」

出典:ILO「OSH Management System」(2011.4.28)

出典:厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステム」(2019.9)

ILOによる働き方改革を行う労働者へのメリット

ILOはすべての人へむけたディーセントワークの実現を目指し活動しています。ディーセントワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」のことで、具体的には自由・平等・安全と人間としての尊厳を条件とした生産的な仕事となります。

働きがいのある仕事は、すべての人に仕事がある上で、その仕事は権利、社会保障、社会対話が確保され、自由と平等が保障される人間としての尊厳を保てる生産的な仕事です。ディーセントワークの実現により以下のようなメリットが考えられます。

  • 長時間労働の改善による従業員の健康や生産性の向上

  • ワーク・ライフ・バランスの改善による従業員のストレスや疲労の軽減

  • 障害者の雇用促進による社会全体の福祉の向上

  • 児童労働や強制労働などの人権侵害の防止

  • 安全で健康的な労働環境の確保による従業員の健康や生産性の向上

  • 社会保障制度の充実による社会全体の福祉の向上

ILOによる働き方の改革が進むことにより労働環境が改善されれば、労働者にとって生活の質が向上し、より安寧な生活を送ることができるでしょう。

出典:ILO駐日事務局「ディーセントワーク」

ILOによる働き方改革でのデメリット

働き方の改革を進めることで、以下のようなデメリットも考えられます。

  • 労働時間の規制が厳格になることで、一部の企業や従業員にとっては生産性や収入が低下する可能性がある。

  • 特定の産業や地域において、国際労働基準や労働市場政策の導入が遅れることで、不公平な競争環境が生まれる可能性がある。

  • 国際労働基準や労働市場政策の導入によって、企業のコストが増加することで、一部の企業にとっては経営上の課題が生じる可能性がある。

改革を行うことで得られるメリットは大きいですが、その影響により起こりうる問題点をできるだけ最小限に抑え、解決していくことが求められるでしょう。

3. ILOが考える2035年の働き方により労働環境はどう変化する?

ILOは2017年に「仕事の未来世界委員会」を発足し、仕事の未来を取り巻く機会と課題について議論を行なっています。2019年6月にはILO創設100周年の記念総会において「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を採択しました。

それに伴い、日本でも厚生労働省では「働き方改革」実現に向け労使トップや有識者による働き方改革実現会議などで議論がすすんでいます。

また、「働き方の未来2035」という報告書では次のような内容がまとめられています。

時間や場所にしばられない働き方

インターネットやモバイルなどの情報技術の発展により、異なる空間に居てもネットを通じてコミュニケーションが可能となった。また、必ずしも同時刻に作業をしなくてもネットワーク上に記録を残すことで共同作業ができるようになった。

物理的に同じ空間で同時刻に共同作業することが不可欠だった時代は「時間」が仕事の評価指標の中心だったが、今後は働いた「時間」だけでなく、成果による評価が重要視されるようになる。

充実感を得られる働き方

働くことが単にお金を得るためだけでなく、社会貢献や周囲の人との助け合い、地域共生、自己の充実感など、多様な目的を持って行動する社会へと変化する。そのための必要な能力開発、教育など多様な自己実現の場が提供されていくことが予測される。

企業組織の変化

物理的に空間と時間を共有する「企業」は一つのコミュニティのような存在だったが、今後の企業はミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人がプロジェクトの終了とともに柔軟に企業の内外を移動する形になる。

これにより企業が人を抱え込む「正社員」というスタイルは変化を迫られることになり、それぞれの人の能力や評価に対する情報がより幅広く共有される社会となっていく。

労働者と企業との関係性

人は仕事内容に応じて働く時間を自由に選択することになり、「フルタイマー」「パートタイマー」という分類がなくなる。

また、兼業や副業が当たり前のこととなり、複数の仕事をこなすことで収入を形成することになる。これは金銭的報酬だけでなく、社会的貢献を目的とする場合も考えられ、多様な働く目的を実現することができるようになる。

これにより企業規模が大きいことのみでは働く人のニーズを満たすことはできず、企業評価として「働く人にどれだけのチャンスや自己実現の場を提供できるか」が重要となる。

地方のグローバル化

ITの進展により働く場所の制約が無くなり、自分のスキルを活かし、子育て、仕事、介護、趣味などのバランスをとりながら地域に根差した豊かな生活が可能となる。また、ITにより小さな町や村が直接海外とつながることが可能となり、地方の価値を海外に向けて提供していくグローバル社会が加速していくことが予測される。

介護や子育てへの制約をうまない社会

労働人口の減少により、AIやロボット技術の進化を活用した介護・子育て、家事などのアウトソーシングが可能となる。また、働き方の自由度が高くなることで、自ら介護や子育てを行いたい人が相応の時間を割いたり、休んだりすることも容易となる。

ジェンダー・障害者・人種・国籍の制約の壁を突破

空間や時間の制約のない働き方が一般化し、性別・人種・国籍などの制約が消滅する。

AIの発達は多言語間のコミュニケーションのハードルを下げ、VR技術と合わせて例え地球の裏側にいたとしてもあたかも隣で仕事をしているかのような状況となることが予測される。日本が発展していくためには「世界で最も働きやすい場所」となる必要がある。

出典:ILO「仕事の未来に向けたILO100周年創設記念宣言」

出典:厚生労働省「働き方の未来2035」(2016.8)

4. 【まとめ】ILOの活動に注目し今後の労働環境の変化に対応しよう!

仕事の世界は、科学技術の飛躍的な進展、気候変動の影響、生産手段と雇用の変化、人口動態などにより大きく変化しています。ILOが主導する今後の仕事のあり方や、労働環境の改善などに注目しておくことはこれからの企業が発展するには必須となるでしょう。

未来の働き方がどのように変化していくのかを理解し、適応した経営を行うことが重要となりますので、この記事を参考に自社の仕事について検証してみてはいかがでしょうか。

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