分散型エネルギーシステムとは?活用事例とともにくわしく解説

分散型エネルギーシステムとは、環境を汚さないエネルギー源として注目されている新たなエネルギーシステムです。

従来の発電所からのエネルギーの供給ではなく、太陽光や風力、バイオ燃料を使った、二酸化炭素の排出を抑えてエネルギーを供給できます。分散型エネルギーシステムは発電所のエネルギーに依存しないので、地震や台風などの災害の停電でのエネルギーの供給が可能です。再生可能エネルギー源を活用し電力を供給するシステムの意義や活用事例を解説します。

目次

  1. 分散型エネルギーシステムとは?

  2. 分散型エネルギーシステムの誕生した理由

  3. 分散型エネルギーシステムの活用例

  4. まとめ:分散型エネルギーシステムを積極的に活用しよう!

1. 分散型エネルギーシステムとは?

分散型エネルギーシステムとは、大規模発電所からエネルギーの供給を受けるのではなく、地元やエネルギー使用地点に近い場所で供給する小規模な発電設備でのエネルギーシステムのことです。

エネルギーの安定供給

分散型エネルギーの最大の役割の一つは、エネルギーの安定供給が可能となることです。集中型の発電所に頼る従来のエネルギー供給体系では、自然災害による停電などのリスクが伴います。しかし、太陽光発電などの自家発電を利用した分散型エネルギーでは、このようなリスクが分散され、安定したエネルギー供給が可能となります。

環境コスト・負荷の削減

分散型エネルギーは環境への負荷を軽減することが可能です。具体的には、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを用いることで、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を大幅に削減し、効率の良いエネルギー利用によってエネルギーに係るコストの削減にも繋がります。

地域社会のエネルギー自立の推進

分散型エネルギーは地域社会のエネルギー自立を推進することができます。再生可能エネルギーは地元の自然資源を利用するため、地域ごとにエネルギー供給を生産できます。これは地域経済の活性化につながり、新たな雇用創出にも役立つでしょう。分散型エネルギーは、持続可能な社会作りに不可欠な要素と言えます。

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギーシステムの構築に向けた取組」p2(平成29年1月)

分散型エネルギーシステムの役割と効果

分散型エネルギーシステムには、エネルギーの脱炭素化と災害対策の両方に効果があります。具体的には以下のことです。

(1)カーボンニュートラル実現

分散型エネルギーシステムは再生可能エネルギーの活用を推進し、これにより脱炭素化とカーボンニュートラルの実現を可能にします。また、デジタル技術を利用した出力制御や、地域の分散エネルギーのフレキシビリティ活用により、社会全体のエネルギー効率を高め、環境負荷の軽減につながると考えられます。

(2)電力インフラのレジリエンス強化

分散型エネルギーシステムは、電力供給の安定性を高め、自然災害による大規模停電のリスクを軽減します。災害時にも独立して運用することが可能になります。

(3)デジタル化と地域活性化

分散型エネルギーシステムは、電力システムのデジタル化を推進し、新たなビジネスモデルの創出に役立つと考えられます。そのことにより雇用創出による地域活性化に役立つでしょう。

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギーシステムへの新規参入のための手引き」p2 2023年4月

分散型エネルギーシステムの目指す方向性

日本のエネルギーシステムは、「気候変動対策」と「エネルギー供給の安定性確保」の点から、分散型エネルギーシステムへの移行を目指しています。この移行は、カーボンニュートラル実現と持続可能なインフラ整備・強化を促進するために行われます。

具体的には、送電プラットフォームの運用の高度化、情報インフラ整備(スマートメーターやデータ活用など)、新ビジネス参入環境整備、他産業との融合などの方向性があります。この目的を達成するための政策や法律が制定され、分散型リソースの活用が進められています。

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギーシステムへの新規参入のための手引き」p3 2023年4月

2. 分散型エネルギーシステムの誕生した理由

分散型エネルギーシステムの誕生は、環境問題への対応、エネルギーセキュリティ向上、そしてテクノロジーの進歩によります。まず、地球規模の気候変動問題への対策として、再生可能エネルギーの利用が求められ、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは地域的に分散して存在するため、それらを利用するシステムは自然と分散型があります。

次に、エネルギーセキュリティの視点からも、分散型エネルギーシステムは有効であり、地域ごとのエネルギーシステムを構築することで、災害時などにおけるエネルギーを安定して供給できるようになるでしょう。

さらに、最近のテクノロジーの進歩、特にデジタル技術や蓄電技術の進化により、分散型エネルギーシステムの実現が可能となりました。家庭や企業、公的機関などが自分たちのエネルギーを自給自足する形が増えており、これらは環境負荷の低減とエネルギーコストの削減に役立つでしょう。

出典:分散型エネルギープラットフォーム「分散型エネルギーを取り巻く状況の変化」2021年2月(P6)

太陽光発電コストの低下

太陽光発電(PV)のコストは従来に比べて大きく下がっています。理由は、国の全量買取り制度(FIT)による大量導入の政策による影響です。また半導体の技術の進歩によりメモリやCPUなど価格も下がっていることも考えられます。

出典:日経BP「太陽光発電コスト減は2100年以降も続く、2050年に2円/kWh割れか」2021年10月25日

出典:分散型エネルギープラットフォーム「分散型エネルギーを取り巻く状況の変化」2021年2月(P3)

デジタル技術の進展

分散型エネルギーシステムにおけるデジタル技術の進展は、AIやIoTを用いて、需給予測の高度化、発電所運転の最適化、デマンドレスポンス、VPPによる分散型電源の最適制御などが可能になりました。また、電力自由化の進展に伴い、地方自治体が地域エネルギー事業に主体的に関与する取組も進行中です。さらに、2020年4月には送配電部門の法的分離も行われました。

出典:分散型エネルギープラットフォーム「分散型エネルギーを取り巻く状況の変化」2021年2月(P3)

地域新電力の誕生

太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入が求められるとともに、脱炭素の流れによって事業者の参入・競争の拡大が起こっています。多くの事業者が参入しているのは、新規参入がしやすくなったことが大きく影響しています。

出典:分散型エネルギープラットフォーム「分散型エネルギーを取り巻く状況の変化」2021年2月(P4)

 再生可能エネルギーのニーズの高まり

再生可能エネルギーの導入と活用に関しては、需要家のニーズに注目が集まっています。特に産業界を中心とした需要家では、脱炭素電源の調達と表示に対するニーズが増加しており、その対応として、直接脱炭素電源にアクセス可能な非化石価値取引市場の検討などが進行しています。

また、オフサイト型PPAによる他社融通の促進や、FIP制度やアグリゲーターなどを通じた再生可能エネルギーの電力市場への統合が推進されています。

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギーシステムへの新規参入のための手引き」

3.分散型エネルギーシステムの活用例

分散型エネルギーシステムの以下の活用例を紹介します。

分散型エネルギーシステムの活用例1:大規模停電時

太陽光発電は、「自立運転機能」によって停電時でもエネルギーが供給できます。自立運転機能とは、太陽光パネルで蓄えた電気エネルギーを家庭内で使えるものです。しかし、すべての家電で使えるわけではなく制限があり、約85%と言われています。実際に、平成30年に起きた「北海道胆振東部地震」では、停電の際に、約85%のエネルギーを利用できたといった活用例が報告されています。

出典:経済産業省「分散型エネルギーリソースの最適活用に向けた取組」(P10)

分散型エネルギーシステムの活用例2:大企業や大型商業施設内

大企業や大型商業施設内に設置した太陽光パネルによる、再生可能エネルギー電源で発電したエネルギーを活用した例です。また施設外または施設から一定の距離に設置した再生可能エネルギー電源による供給も実現しています。

出典:資源エネルギー庁「分散型エネルギープラットフォームの開催について」(P10)

4. まとめ:分散型エネルギーシステムを積極的に活用しよう!

分散型エネルギーシステムとは、脱炭素社会の達成には欠かせないと言えるでしょう。また台風や地震などによるエネルギー不足が補えて災害時に役立ちます。分散型エネルギーシステムとは、安定したエネルギーの供給だけではなく、地域の活性化にもつながる可能性もあります。そのため、分散型エネルギーシステムを積極的に取り入れましょう。

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