Meta社(旧Facebook)によるカーボンオフセットの取り組みについて、背景を踏まえて解説!

カーボンオフセットは、近年環境問題への対策手段として注目を集めており、アメリカの大手企業であるMeta社(旧Facebook社)は既に取り組みを行っています。

この記事では、カーボンオフセットの概要、カーボンオフセット分野における将来の展望などカーボンオフセットに関する解説とMeta社がなぜカーボンオフセットに注目しているのか、具体的にどのようなカーボンオフセットプロジェクトの取り組みを行っているのかについて解説します。

目次

  1. カーボンオフセットの概要

  2. カーボンオフセットの将来展望と課題

  3. Meta社がカーボンオフセットに取り組む背景

  4. Meta社のカーボンオフセット戦略

  5. まとめ:2030年に向けてMeta社によるカーボンオフセットプロジェクトは、より一層積極的な取り組みが予想される!

1. カーボンオフセットの概要

カーボンオフセットとは、企業や個人が日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、排出量の削減努力を行い、それでもなお排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資したり、他の企業、個人が削減した排出量をクレジットという形で購入したりすることで、排出される温室効果ガスを埋め合わせ、地球全体で温室効果ガスの排出量削減を目指すという考え方です。

出典:環境省「J-クレジット制度及びカーボンオフセットについて」(2023/3)

2. カーボンオフセットの将来の展望と課題

カーボンオフセットの将来展望と課題について解説します。

(1)カーボンオフセット分野における将来の展望

日本では、2008年からカーボンオフセットの普及促進活動が行われており、信頼性の高いカーボンオフセットの取組を推進するための基盤が整備されています。また、認証制度やプログラムの運用により、オフセット活動の透明性も高まってきており、さらに、ニーズに応えるために国際規格に準拠したオフセット・クレジット制度が創設され、多くの排出削減・吸収プロジェクトからクレジットが発行されています。

カーボンオフセットは、長野県と信濃毎日新聞株式会社、高知県と株式会社ルミネ、横浜市・横浜FC、郵便事業株式会社、全日本空輸株式会社(ANA)などの公共団体や企業なども利用しており、普及が進んでいます。

また、国際的にもカーボンオフセットのために必要となるカーボンクレジットの取引所がアメリカやシンガポールで設立され、アメリカの取引所の一つでは、合計取引量が3億トンを、シンガポールの取引所の一つでは、半年で360万トンもの取引が実施されており、急速に取引規模が拡大しています。

以上から、カーボンオフセットの将来展望として、今後さらなる市場拡大が予想されます。

出典:環境省「カーボン オフセットの現状と カーボン・ニュートラル」(2011/6)p4.p20-25
出典:環境省「我が国におけるカーボンオフセット の推進に向けた展望」(2014)p1-2
出典:経済産業省「カーボンクレジット・レポートを踏まえた 政策動向」(2023/3)p14

(2)カーボンオフセット分野における今後の課題

カーボンオフセット、温室効果ガス排出量削減の手段として利用されますが、以下のような課題が存在します。

測定・報告・検証の課題
カーボンオフセットの効果的な実施には、正確な測定、報告、および検証が必要です。プロジェクトの効果や成果を評価するための信頼性の高い方法と基準の確立が求められます。

ダブルカウンティングの回避
カーボンオフセットにおいては、二重計上(ダブルカウンティング)のリスクがあります。この問題を回避するためには、厳格な監査や透明性の確保が必要です。

持続可能性の確保
カーボンオフセットプロジェクトの持続可能性を確保するためには、カーボンオフセットによって生み出される排出削減・吸収の確実性・永続性の確保が必要となります。

普及力の確保
企業にカーボンオフセットを認知してもらい、需要を作っていく必要があり、また需要に即した供給を行っていく必要があります。また、取引されるクレジットの量、価格が不透明な状態であり、流通面においても改善がなされ、普及力を確保する必要があります。

出典:経済産業省「カーボン・クレジット・レポート」(2022/6)p32-3
出典:環境省「我が国におけるカーボンオフセット の推進に向けた展望」(2014)p1-3
出典:環境省「 カーボンオフセットの現状と カーボン・ニュートラル」(2011/6)p7-8

3. 考えられるカーボンオフセットに取り組む背景

Meta社がカーボンオフセットに取り組む背景として考えられる理由は以下のものが考えられます。

環境への責任
近年、気候変動や温室効果ガスの排出による影響は、地球全体に大きな課題をもたらすところ、企業として積極的な取り組みが求められています。そのため、企業としては、環境負荷を軽減し、持続可能な未来を実現することに対する責任を果たすことを目標にすることが考えられます

グローバルな規制と目標
例えば、パリ協定により、世界の温室効果ガス排出量を減らし気候変動への対策を進めることが求められています。そのため、このような国際的な枠組みや規制の動きが企業に波及していったことも背景として考えられます

投資家等による期待
環境問題に取り組むことは、企業のイメージ向上や信頼性の確保にも寄与することが期待されるため、投資家や顧客、従業員、地域社会などの利害関係者は、環境への配慮や持続可能性に関心を持っているため、企業としてはこの期待に応えることが必要となるでしょう。

総じて、企業一般がカーボンオフセットに取り組む背景は、環境責任、規制・目標、ステークホルダーの期待といった観点から多面的です。そのため、これらの要素が組み合わさり、Meta社が積極的なカーボンオフセット戦略を展開しているのではないかと予想されます。

出典:WWFジャパン「環境に対する企業の責任」
出典:環境省「第2節 パリ協定を踏まえた我が国の気候変動への取組」
出典:国立国会図書館「ISSUE BRIEF 企業の社会的責任(CSR)」(2005/3/24)p1-2

4. Meta社によるカーボンオフセットの取り組み

Meta社のカーボンオフセット戦略の概要と取り組み内容を解説します。

(1)Meta社が採用しているカーボンオフセット戦略の概要

Meta社のカーボンオフセット戦略は、以下の要素から構成されています。Meta社(旧Facebook社)が採用しているカーボンオフセット戦略の概要は以下の通りです(参照先リンクからの情報を基にまとめています)。

二酸化炭素排出量の測定と削減

Meta社はまず、自社の活動による二酸化炭素排出量を評価し、削減のための取り組みを行っています。エネルギー効率化や再生可能エネルギーの導入など、内部プロセスの最適化に取り組むことで、二酸化炭素排出量を削減しています。

カーボンオフセットプロジェクトへの投資
Meta社は、自社の排出量を完全に削減することが難しい場合には、カーボンオフセットプロジェクトへの投資を行っています。森林保護や再生、クリーンエネルギープロジェクトなど、地域社会や環境にポジティブな影響をもたらすプロジェクトに資金やリソースを提供しています。

再生可能エネルギーへの移行
Meta社は、自社のデータセンターやオフィスのエネルギー供給において、再生可能エネルギーの利用を推進しています。太陽光や風力など、クリーンなエネルギー源の活用により、二酸化炭素の排出を削減しています。

Meta社は、これらの取り組みを通じて、自社の二酸化炭素排出量を削減し、持続可能なビジネスモデルの構築に取り組んでいます。環境への負荷を軽減し、地球温暖化対策に貢献することを目指しています。

出典:Meta社HP「2021 Sustainability Report」

(2)Meta社によるカーボンオフセットプロジェクトの具体的な取り組み

Meta社は、気候変動対策の一環として、Aspiration Partnersというグローバルな気候金融企業とパートナーシップを結び、原生林の再植林、アグロフォレストリー、持続可能な農業実践の実施など自然ベースのプロジェクトに取り組んでいます。

Meta社は2030年までに全てのバリューチェーンでネットゼロ排出量を達成する目標を設定しており、Aspirationとのパートナーシップにより、Meta社は2027年から2035年までの期間で675万メトリックトンのカーボン除去クレジットを事前注文しています。

また、Meta社は2022年にStripe、Alphabet、Shopify、McKinsey Sustainabilityと共に技術開発のために合計9億2500万ドルを投じることを約束し、グローバルなカーボン除去能力の拡大をリードしています。

出典:Aspirtation公式Twitter
出典:greenBiz『Meta and Aspiration partner to scale nature-based carbon removal solutions』(2023/6/7)

5. まとめ:カーボンオフセットの概要や取引について理解を深めることが必要!

Meta社は、カーボンオフセットを活用しており、自社の温室効果ガス排出量の削減に加え、カーボンオフセットプロジェクトへの投資を行い、持続可能な未来を実現する取り組みを行っています。最近では、Meta社は、2030年のネットゼロ目標に向けて排出削減量を回避するために、Aspiration社と675万カーボンクレジットの取引を行うなど積極的なものとなっています。

以上のように世界的な企業が先導してカーボンオフセットを活用しているため、国際的にこの動きが波及し、ひいては日本においても主要な取り組みの一環としての位置づけがなされる場合があります。国際的な動きに対応するためにも、今からカーボンオフセットの概要や取引について理解を深めましょう。

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