物流におけるカーボンニュートラルの達成に向けた企業の取り組み事例を紹介!

物流業界において、今、カーボンニュートラルへの取り組みが促進されています。カーボンニュートラルとは脱炭素に向けた施策のひとつで、日本は2050年までにカーボンニュートラル達成を目指しています。

物流は、生産者から消費者や企業に商品が届くまでの一連の流れの中で、多くのCO2を排出します。カーボンニュートラル実現には、物流業界における脱炭素の取り組みが欠かせません。この記事では、物流業界におけるカーボンニュートラルへの取り組みを、企業事例と併せて具体的に紹介します。

目次

  1. カーボンニュートラルとは?

  2. 物流業界におけるCO2排出量の現状とは?

  3. 物流業界における省エネ化・再エネ化を促進!

  4. 物流におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み

  5. カーボンニュートラルに取り組む企業事例

  6. まとめ:カーボンニュートラルを推し進め物流業の未来を開こう!

1. カーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの放出と吸収が均衡に保たれ、温室効果ガスの排出量を実質ゼロの状態を指します。この目標を達成するには、排出される温室効果ガスの量を減らすだけでなく、同時に森林の管理や植樹によってCO2の吸収能力を保つか、または強化することが求められています。

出典:環境省『カーボンニュートラルとは - 脱炭素ポータル』(2023/01)

2. 物流業におけるCO2排出量の現状とは?

物流の中でも自動車を利用した「輸送」「配送」は、部門で区別すると「運輸部門」に含まれ、2021年度における日本のCO2排出量10億6,400万トンのうち、運輸部門のCO2排出量は1億8,500万トンで全体の17.4%を占めています。そのうちの約4割を貨物自動車(トラックなど)で占めており、これは日本全土のCO2排出量の6.9%に値します。

運輸部門におけるCO2排出量

出典:国土交通省『環境:運輸部門における二酸化炭素排出量 』(2023/05)

3. 物流業における省エネ化・再エネ化を促進!

輸送の省エネ法規制の改定

省エネ法とは、もともとは「エネルギーの使用の合理化に関する法律」のことで、物流などの省エネへの取り組み方の基準を示すとともに、エネルギーの使用状況の報告を義務付けていました。2050年カーボンニュートラルに向けて、2023年4月1日より省エネ規制法は「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」へと改正されました。これにより、非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーの使用の合理化と、非化石エネルギーへの転換が求められています。

出典:国土交通省『環境:輸送事業者の皆様へ(省エネ法)』(2023/05)

物流業界で期待される再エネ利用

国土交通省は2050年カーボンニュートラルに伴う成長戦略として「地域交通グリーン化事業」を制定、温室効果ガス(CO2)排出削減等政府方針実現のため、次世代自動車の普及を促進しています。これにより、2030年度の運輸部門におけるエネルギー起源CO2削減は2013年度の約35%減と見込まれています。

出典:国土交通省『国土交通省の補助事業「地域交通グリーン化事業」』

4. 物流におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み

(1)エコドライブの普及促進

CO2削減には、車両から排出されるCO2を減らすことが重要で、GPS動態管理システムの活用等でエコドライブを徹底することで、全車両の燃費改善を図りカーボンニュートラル達成を目指すことができます。

出典:環境省『脱炭素経営フォーラム(2022年度) - 貨物輸送事業者による カーボンニュートラル実現に向けて』p,9.(2023/03)

(2)待機時間削減によるアイドリングストップ

アイドリングによるCO2排出も大きな課題であり、不要なアイドリングをなくすためには、納品時間指定撤廃や荷受け情報の共有をすることで輸送効率化を上げることで待機時間削減によるアイドリングストップが効果的です。

出典:環境省『脱炭素経営フォーラム(2022年度) - 貨物輸送事業者による カーボンニュートラル実現に向けて』p,9.(2023/03)

(3)次世代車両の導入・新燃料の活用

貨物トラックから排出される排気ガスによるCO2排出量を削減するためには、CO2排出量を抑える、または、ゼロにすることがとても重要となります。具体的には、物流の運送車両に低炭素型車両(ハイブリッドカー・プラグインハイブリッドカー)やEV自動車(電気自動車)の導入や新燃料(リニューアブルディーゼル、バイオ燃料)を活用することでカーボンニュートラルの実現に向けた大きな取り組みができます。

出典:環境省『脱炭素経営フォーラム(2022年度) - 貨物輸送事業者による カーボンニュートラル実現に向けて』p,9.(2023/03)

(4)モーダルシフトの推進

物流の一連の流れの中で、CO2排出量を削減することも物流におけるカーボンニュートラル達成への取り組みの一つとなり、モーダルシフトはカーボンニュートラルを実現する大きな期待があります。モーダルシフトとは、トラックなど自動車で行っている貨物輸送をCO2排出が少ない船舶や小さい鉄道などの利用への転換を図ることです。

モーダルシフトの推進

出典:国土交通省『国土交通省における 地球温暖化緩和策の取組概要』p,21.(2021/01)

5. カーボンニュートラルに取り組む企業事例

ネスレ日本株式会社

ネスレ日本株式会社は、JR貨物・全国通運・中越通運・鹿島臨海鉄道・鹿島臨海通運の6社と物流を共同化し、産業の垣根を超える物流の在り方でカーボンニュートラルに取り組んでいます。新潟県が全国に農産物を鉄道輸送していることに着目し、空回送していたコンテナを活用してペットボトル飲料を新潟県まで配送することで、トラックの台数を減らし88%のCO2排出削減を実現させました。

引用:経済産業省 METI Journal ONLINE『カーボンニュートラル時代、新しい物流 』(2022/01)

富士通株式会社

富士通株式会社では、工場から納品まで1パターンだった輸送方法を3パターンに増やすことでCO2排出量の削減に成功しています。顧客の希望納期や輸送区間に応じて適切な輸送方法を選択するシステムを導入するにあたり、商品発注から納品までにかかる必要な時間(納入リードタイム)を追加し、受注後4日移行の納品ではモーダルシフトを開始しています。物流センタ ーの統廃合や調達部材の共同輸送も併せて取り組んだ結果、首都圏で20%の削減効果を実現しています。

出典:資源エネルギー庁『サプライチェーン全体での削減活動を推進』p,2.(2022/04)

株式会社スタンダード運輸

株式会社スタンダード運輸は、独自に『カーボンフリー輸送』を企図し、運送業の新しい形を生み出しています。具体的には、受注から納品までに関わる荷主や協業事業者などが協力することで、余分な配車や移動をなくし、CO2排出量と労働時間の両方を削減する新しい運送業の姿を目指しています。新しい取り組みを社外に発信することで知名度・認知度の向上に成功しています。

出典:環境省『中小規模事業者向けの脱炭素経営導入』p,37.(2022/11)

6. まとめ:カーボンニュートラルを推し進め物流業の未来を開こう!

物流業とカーボンニュートラルの関係を企業事例を含めてご紹介しました。物流業におけるカーボンニュートラル達成には、エコドライブや脱炭素自動車の導入、モーダルシフトなどでCO2排出量を削減することで大きく貢献できます。物流は、私たちの生活の基盤でもあり不可欠なものです。

持続可能な未来に向けて脱炭素化を推し進めることはとても重要であり、物流の明るい未来を切り開くためにもカーボンニュートラルの理解を深めて取り組みを始めてみましょう!

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