CDPが統合質問書にプラスチック情報開示を追加!プラスチック問題やプラ新法も解説!
- 2023年11月05日
- 環境問題
近年話題となっているテーマの一つに海洋プラスチックごみの問題があります。プラスチックによる海洋汚染は深刻の度合いを増しています。この問題についてCDPも強い関心を示しました。
そして、CEPは統合質問書にプラスチック情報開示を追加するなど、企業に対する働きかけを強めました。今回はCDPのプラスチック問題に対する働きかけや2022年4月から施行した「プラ新法」の内容などについてまとめます。
目次
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CDPとは
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CDPプラスチック情報開示の始動
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プラスチック問題に取り組む理由
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2022年4月から施行される「プラ新法」
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まとめ:中小企業も今すぐプラスチック対策を意識するべきだ
1. CDPとは?
CDPは2000年に設立された国際的な環境非営利組織で、本部をロンドンに置いています。CDPは2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を等しくするネットゼロの実現するため、今後数年間で速やかに行動するとしています。
こうした目標を達成するため、CDPは企業や政府・自治体などに質問状を出し、環境影響に関する情報公開を促しています。CDPによる情報開示の仕組みは環境報告の世界的基準となっています。
出典:環境省「CDPからの情報提供」(p4)(2022/3/3)
2. CDPプラスチック情報開示の始動
CDPは海洋に流れ込むプラスチックについて強い関心を持っています。そのため、今後作成される統合質問書の中でプラスチック情報の開示を求めると発表しました。統合質問書の概要やプラスチック情報の追加理由などについてまとめます。
(1)統合質問書とは何か
統合質問書とはCDBが2025年から実施しようと考えている「気候、水、森林だけでなく、関連するすべての環境関係について質問」する総合的な質問書のことです。
出典:CDB 日本事務局「CDP2022気候変動質問書 「生物多様性」解説ウェビナー」(p26)(2022/5/13)
参考:Alt属性()
出典:環境省「CDPからの情報提供」(p.7)(2022/3/3)
CDPが企業に送付していた質問書は以下の3つのカテゴリーに分かれています。
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気候変動質問書
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水セキュリティ質問書
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フォレスト質問書
CDPの回答要請を受けた企業や自主的にCDPの質問に回答する企業の答えがCDPに届けられ、それらの解答をもとにA~D-のスコアをつけて機関投資家やサプライチェーンの企業に公表しています。
2022年9月22日、CDPは質問書にプラスチックに関する質問を追加すると発表しました。これは、すでに表明されていた新たな質問書(統合質問書)の方針に沿ったものです。CDBのいう「すべての環境関係の質問」にプラスチック関連が加わったと考えてよいでしょう。
出典:環境省「CDPからの情報提供」(p7)(2022/3/3)
出典:CDP「「CDP プラスチック情報開示」が始動 2023 年から統合的な質問書に」(p2~3)(2022/9/22)
(2)CDPがプラスチック情報開示を追加する理由
CDBがプラスチック情報開示を追加したのは、プラスチックごみによる海洋汚染が深刻になっているからです。
UNEP(国連環境計画)によると、現在、海には推定で7,500億トン〜2億トンものプラスチックが存在し、年間1,100万トンの増加が見込まれています。これらのプラスチックは海洋生物に深刻な被害を与えています。
これらの処理にかかる費用が年間1,000億ドルに達し、企業は大きな財務リスクに直面します。
しかしながら、多くの企業は自社がプラスチック汚染にどの程度加担しているかや、そのことが商業的・法的なリスクや企業イメージを損なうリスクを秘めているか、十分に理解していないとCFDは指摘しています。こうした現状を踏まえ、CBDは企業に対しプラスチックに関する情報開示を求めているのです。
出典:CDP「「CDP プラスチック情報開示」が始動 2023 年から統合的な質問書に」(p2)(2022/9/22)
(3)2023年度は試験的運用
CDPは2025年までに質問書を大きく変えようとしています。その一環として、2022年から生物多様性に関する質問が追加されました。プラスチックに関する質問は2023年から試験的に導入される予定です。
CDPは「どの企業が最初に開示を要請されるかを含め、CDP のプラスチック情報開示初年度の全容は、開示プラットフォームの 4 月開始に先立ち、2023 年初頭に発表される予定」としています。
出典:CDP「「CDP プラスチック情報開示」が始動 2023 年から統合的な質問書に」(p2)(2022/9/22)
3. プラスチック問題に取り組む理由
なぜ、CDPだけではなく世界各国でプラスチック問題への取り組みが進んでいるのでしょうか。その理由の一つがマイクロプラスチックの有害性です。マイクロプラスチックとは直径5mm以下のプラスチックの破片のことです。それよりもサイズが小さいものはマイクロビーズと呼ばれます。
マイクロプラスチックはPCBやダイオキシン、DDTといった人体に有害とされる化学物質を取り込みやすいことがわかっています。マイクロプラスチックは有害物質を広い範囲に拡散させてしまっています。
海の生物がマイクロプラスチックをエサと間違って食べてしまうと炎症や摂食障害を起こすことがわかっています。食物連鎖で有害物質が大きな魚に蓄積されてしまう問題も発生しています。
もはや、マイクロプラスチックは一国だけで処理できる問題ではなく、世界全体で対応しなければならない問題になっています。
出典:千葉商科大学「海が汚染され、海の生物も人も危ない! マイクロプラスチック汚染問題とは」
4. 2022年4月から施行された「プラ新法」
プラ新法とは「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」のことで、2022年4月から施行されています。新法の目的はプラスチックの排出抑制とリサイクルを含む再資源化の促進です。この中で定められた海洋プラスチック対策は以下のとおりです。
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ポイ捨て・不法投棄の撲滅・適正処理
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海岸漂着物の回収処理
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海洋ごみの実態把握
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マイクロプラスチックの抑制対策
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代替イノベーションの推進
海洋プラスチック対策は始まったばかりですが、CDPやプラ新法をはじめとして、今後もますます積極的に進められると考えられます。
5. まとめ:中小企業も今すぐプラスチック対策を意識した取り組みを!
CDPの指摘にあるように、海洋プラスチックごみはおびただしい量になっており、早急な対策が必要です。しかし、各企業のプラスチックに対する認識が不十分であるため、CDPは質問書を通じたデータ化を急いでいます。
今後、2025年までにバージョンアップされたCDPの統合質問書は企業の環境問題への取り組みをはっきりさせるリトマス試験紙の役割を果たすでしょう。企業はCDPスコアを上げるためにも、環境問題全体への対策を強化するでしょう。
サプライチェーンの一環の一端を担う中小企業に対しても、CO2と同様にプラスチックの廃棄を抑えるよう要請する可能性があります。そうなることを見越し、中小企業も今すぐプラスチック対策を意識することが求められるでしょう。