カーボンニュートラル実現を目指すロードマップとは?

カーボンニュートラル実現までのロードマップとは?2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みであるパリ協定が2016年に発効されてから、世界各国がカーボンニュートラルを実現させるために取り組んでいます。カーボンニュートラルを実現させる上での指標となるのが、目標や進め方を具体的に示したロードマップです。世界や日本が示すカーボンニュートラルのロードマップへの理解を深めながら、企業はどのような取り組みができるかについてご紹介します。

目次

  1. カーボンニュートラルに関する基礎知識

  2. 世界が示すカーボンニュートラルのロードマップ

  3. 日本のカーボンニュートラルのロードマップと取り組み状況

  4. まとめ:カーボンニュートラルのロードマップへの理解を深め、企業の取り組みを考えよう!

1. カーボンニュートラルに関する基礎知識

カーボンニュートラルのロードマップとは、国が策定したカーボンニュートラルを実現させるための計画です。まずはじめに、カーボンニュートラルとはどのようなものなのか、なぜ取り組むことが重要視されているのかなど、基本的な知識をご紹介します。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルは「脱炭素」とも呼ばれています。カーボンニュートラルが実現された社会(脱炭素社会)が意味するのは、石油や石炭など化石燃料に依存せず、温室効果ガス排出量が実質ゼロの社会です。

資源エネルギー庁は2050年のカーボンニュートラル実現に向け、具体的にイメージ図を示しています。2018年度における日本の温室効果ガス排出量は12.4億トンですが、温室効果ガス排出量をできるかぎり削減し、どうしても排出される量と同量の温室効果ガスを吸収や除去により実質ゼロにするというのが基本的な考え方です。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

カーボンニュートラルが重要視されている背景

カーボンニュートラルの実現に向け、世界各国が取り組んでいる理由は、カーボンニュートラルへの取り組みが気候変動問題の緩和や力強い経済成長をもたらすためです。世界各国がグリーン成長戦略を盛り込み、カーボンニュートラル実現に向け取り組んでいます。

たとえば、日本は成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げ、グリーン社会の実現に最大限力を入れる方針です。日本はグリーン社会を実現させるために、環境投資や再生可能エネルギー普及をさらに推進する計画です。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』(2021/3/16)

出典:首相官邸『グリーン社会の実現』

2. 世界が示すカーボンニュートラルのロードマップ

世界各国が独自にロードマップを打ち出し、カーボンニュートラル実現に向け取り組んでいます。主要国が示すカーボンニュートラルのロードマップの内容についてご紹介します。

(1)アメリカ

バイデン大統領が就任したことをきっかけにアメリカはパリ協定に復帰し、2030年までにCO2排出量を2005年比で50〜52%削減するとの新たな目標を発表しています。具体的な取り組みについて部門別に以下の方針を示しています。

  1. 電力:2035年までに炭素が発生しない発電のための技術中立的なエネルギー効率化・クリーン電力基準を策定する。

  2. 自動車:新車を全て電化するために必要となる燃費基準を策定する。

  3. 建物:2030年までに全ての新設商用ビルの炭素排出をゼロにする新基準を策定し、2035年までに建物のカーボンフットプリントを半減させる。

  4. 石油・天然ガス:公有地における新規の石油ガス開発を禁じ、石油・天然ガス部門の排出基準を再び強化する。

またグリーン関連では、4年間でEV普及や建築のグリーン化、エネルギー技術開発等の脱炭素分野に約200兆円投資することを公約しています。

出典:BBC NEWS『バイデン氏、気候変動対策の「勝負の10年」サミットでCO2削減の新目標を発表』(2021/4/23)

出典:電力中央研究所『米国における国境炭素調整を巡る動向』(2021/2/17)(p.4)

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020/12)(p.11)

(2)中国

世界最大のCO2排出国である中国は、2018年と2019年連続で、CO2排出量が増加しています。2030年までにCO2排出量を減少傾向に転じ、2060年までにカーボンニュートラルを実現させることを目標に掲げています。

具体的な取り組みについては、中国はEVやFCVなどの脱炭素技術に力を入れる方針で、2020年度は新エネ社の補助金予算に約4500億円を投じる計画です。

出典:BBC NEWS『中国のCO2排出量、2060年までに実質ゼロに 習主席が表明』(2020/9/23)

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020/12)(p.10)

(3)EU

EUは2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指しており、2021年7月にカーボンニュートラルを実現させる計画を発表しています。

航空燃料への課税や20年以内にガソリン車やディーゼル車の販売禁止などが盛り込まれており、今後EU議会にかけられ、加盟27カ国の承認を得ることができれば可決されます。グリーン関連では、官民で10年間に120兆円のグリーンディール投資を計画しています。

出典:BBC NEWS『EU、気候変動対策計画を発表 2050年までにカーボンニュートラル』(2021/7/15)

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020/12)(p.11)

3. 日本のカーボンニュートラルのロードマップと取り組み状況

日本は2021年6月に、地方自治体や地元の企業や金融機関が中心となり進めていく地域脱炭素ロードマップを公表しています。ここでは、地域脱炭素ロードマップの概要や、地方自治体や企業の取り組み状況についてご紹介します。

日本が示すカーボンニュートラルのロードマップ

2020年10月26日に開催された第203回臨時国会で、日本は2050年におけるカーボンニュートラルを実現することを宣言しました。その後カーボンニュートラル実現に向け検討を重ね、2021年6月に地域脱炭素ロードマップを公表しています。地域脱炭素ロードマップでは、地方自治体や企業、金融機関が中心となり、2030年までに集中して取り組むべき、カーボンニュートラルに移行するための対策や施策とそれを支える国の政策が取りまとめられています。

出典:経済産業省『日本の2050年カーボンニュートラルに向けた道筋』(2020/11/11)

出典:環境省『国・地方脱炭素実現会議(第3回)で『地域脱炭素ロードマップ』が決定!!』(2021/7/9)

日本のカーボンニュートラル実現に向けた取り組み状況

日本では、地方自治体や企業が中心となり、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが広がっています。2020年12月14日時点でカーボンニュートラルを宣言している自治体は191、2020年12月11日時点でカーボンニュートラルを宣言している企業は72社です。

出典:資源エネルギー庁『2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020/12)(p.8.9)

4. まとめ:カーボンニュートラルのロードマップへの理解を深め、企業の取り組みを考えよう!

気候変動問題に対する危機感や経済的な成長への期待から、日本を含む世界各国がカーボンニュートラルに熱心に取り組んでいます。企業が持続可能な企業として生き残るためにも、カーボンニュートラルへの取り組みは欠かせません。カーボンニュートラル実現の道筋を示したロードマップへの理解を深め、企業も脱炭素に向けた取り組みを始めましょう

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