コーポレートガバナンスとは?意味や目的、強化する方法と効果を解説

コーポレートガバナンスとは、日本企業の稼ぐ力および企業価値の低迷を危惧した政府によって策定されました。コーポレートガバナンスは、今後企業がグローバルに戦い続けるうえで重要な指針といえます。この記事では、コーポレートガバナンスの意味や目的、また強化する方法とその効果について解説しています。

目次

  1. コーポレートガバナンスとは?

  2. コーポレートガバナンスの目的と効果

  3. コーポレートガバナンスの課題

  4. まとめ:コーポレートガバナンスの強化が企業価値の向上に繋がる!

1. コーポレートガバナンスとは?

企業にとって重要な行動指針になるコーポレートガバナンスについて解説します。

(1)コーポレートガバナンスの意味

コーポレートガバナンスとは、企業が株主や顧客、従業員や地域社会に対する立場を踏まえた上で透明かつ公正な事業運営を行い、また迅速な意思決定を行うための仕組みを意味します。これにより、企業価値の向上持続的な経営成長に繋がり、企業と投資家、さらには日本経済全体の発展に好影響を与えると考えられています。

出典:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」p2

(2)コーポレートガバナンスコード(基本原則)

コーポレートガバナンスには、5つの基本原則が制定されています。

【株主の権利・平等性の確保】

企業では、少数株主や外国人株主等の権利や確保、権利行使に関わる環境や平等性に課題や懸念が生じやすいです。そのため株主の実質的な平等性を確保するとともに、株主の権利が確保されるような適切な対応を行い、また株主がその権利を適切に行使できる環境を整備することが求められています。

【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】

会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員・顧客・債権者・地域社会等のステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを認識し、またこれらのステークホルダーとの協働に務めることを求められています。取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシッ プを発揮する必要性を唱えています。

【適切な情報開示と透明性の確保】

企業は、会社の財政状態や経営成績に関する財務情報、また経営戦略や経営課題、リスクやガバナンスに関する非財務情報においても法令に基づく開示を適正に行うとともに、開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきであることを求めています。近年、サステナビリティが重視されることから、企業の非財務情報の開示はとくに重視されており、企業価値および持続的な成長に大きく影響する事項です。

【取締役会等の責務】

企業の取締役会は、株主に対する受託者責任および説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を積極的に図る必要があります。これにより企業の取締役会は、企業戦略等の方向性を示し、それに伴う監督・役割・責務を適切に果たすことが求められています。

【株主との対話】

中長期的な企業価値の向上および持続的な成長のため、株主総会においても企業は株主と建設的な対話を行う必要があります。対話を通じて投資家や株主の意見を理解し、それに対する明確な説明とその理解を得る努力が求められています。

出典:株式会社東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード」p3 p4

2. コーポレートガバナンスの目的と効果

企業のおけるコーポレートガバナンスの目的とその必要性を解説します。

(1)企業家精神の発揮

コーポレートガバナンスは企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な 企業価値の向上を図ることが目的とされています。

出典:経済産業省:「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」p10

(2)企業の持続的な成長

政府は、近年の日本企業全体の稼ぐ力は諸外国に比べると低迷しており、また研究開発や人的資本などの無形資産への投資を含めて、中長期的な成長を実現するための投資が必ずしも増えていないと指摘しています。

今後さらに国際社会のビジネス競争は激しくなると予測されることから、人材の有効活用を通じたイノベーションによる付加価値の創出生産性の向上を促すことを求めています。また、近年のESG要素の重要度の高まりを受け、企業の価値観やビジネスモデル、潜在的なリスクや戦略等の非財務情報の開示が企業価値の向上に繋がると言われています。

出典:経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」P6 p7

(3)中長期的な企業価値の向上

これまで、企業価値は収益等の財務情報で判断される傾向がありました。しかし近年、財務以外の経営ビジョンや理念、また中長期的な経営戦略知的財産情報等が重視されています。

また国際的に重視されるESGをはじめとするサステナビリティ関連は、企業価値の指標となっています。これにより、企業は投資家や株主と財務情報と非財務情報をまとめた統合報告書の発行が重視され、また投資家等との積極的な対話が求められています。

出典:経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」p8

3. コーポレートガバナンスの課題

企業の持続可能性に繋がるコーポレートガバナンスですが、課題があるのも事実です。ここでは、コーポレートガバナンスの課題について解説します。

(1)企業の持続的成長に寄与しているか不透明

コーポレートガバナンスは、企業の中長期的な収益性や生産性の向上を図る観点から、攻めのガバナンスや企業家精神の発揮を後押しする仕組みの構築を目指し策定されています。

しかし企業からは、ガバナンスコードが成果をもたらしたという実感が得られていないと指摘が上がっているのが現状です。したがって、ガバナンス・コードの規定に応じた取組みを、中長期的な企業価値の向上や成長に繋げるための工夫が必要とされています。

出典:一般社団法人・日本経済団体連合会「再改訂コーポレートガバナンス・コードの実効性の向上」

(2)企業や投資家を形式主義に陥らせている可能性

企業のガバナンスコードの細かい項目を実践する上での負担と、ガバナンスコードの必要性に関して納得が得られていない項目があると指摘されています。それにより企業が適切と考える経営体制と、ガバナンスコードの内容と合致していない部分があり、企業の戦略の実行を阻害していると考えられてます。

ガバナンスコードは、趣旨や原則に基づいて企業が適切な判断の上で事業運営に組み込むことが求められていますが、企業や投資家はガバナンスコードに従う形式判断をとっている傾向があるといわれています。企業と投資家との対話も短期的あるいは業績中心であったり、投資家も議決権行使助言機関のアドバイスに形式的に従うことが多いとされています。

出典:一般社団法人・日本経済団体連合会「再改訂コーポレートガバナンス・コードの実効性の向上」

4. まとめ:コーポレートガバナンスの強化が企業価値の向上に繋がる!

コーポレートガバナンスの強化は、企業の持続的な成長と、中長期的な価値向上に繋がります。課題があるのも事実ですが、それ以上に企業にもたらす効果は大きいといえます。グローバル競争を勝ち抜くためにも、コーポレートガバナンスの強化に取り組みましょう。

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