製造業者がESGに取り組むメリットとは?具体例も併せて解説!


ESGの考え方は業種を問わず浸透しつつあります。その中でも製造業はCO2の排出削減や資金の調達といった面でESGへの適応を迫られている業種ではないでしょうか。

今回はESGとは何か、製造業にとってのESG、製造業者がESGに取り組むメリットや具体的な事例などについて紹介します。

目次

  1. ESGとは何か

  2. 製造業にとってのESG

  3. 製造業者がESGに取り組むメリット

  4. ESGに取り組む製造業の企業事例

  5. まとめ:製造業にとってもESGは非常に重要

1. ESGとは何か

ESGの概要や現状、企業がESGに取り組むメリットについてまとめます。

(1)ESGの概要

ESGとは「Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つを考慮した企業経営や投資のことです。似た言葉であるSDGsが目標であるのに対し、ESGは目標を達成するための手段という意味合いが強い言葉です。

出典:内閣府『令和2年度障害者差別の解消の推進に関する国内外の取組状況調査報告書 』「ESGとは何か」

(2)ESG投資の現状

PRI署名機関数とESG投資の運用規模出典:経済産業省『SDGs 経営/ESG 投資研究会 報告書』(2019/6)(p.16)

PRI(責任投資原則)とは投資判断をするときにESGを組み込んで投資することです。2006年に提唱され、2019年6月の段階で世界の2460の機関がPRIに署名しています。このPRIの署名数も、PRIに基づくESG投資も年々増加しています。

出典:経済産業省「事務局説明資料」(p7~8)

(3)ESGに企業が取り組むメリット

ESGに企業が取り組むメリットとは、企業が社会的責任を果たしているとアピールできることです。国連が2006年にPRIを打ち出してから、投資判断にESGを組み込む動きが加速したため、企業側も自社の取り組みをアピールし、投資を呼び込む必要性が生まれています。

出典:経済産業省「事務局説明資料」(p7~8)

2. 製造業にとってのESG

製造業にとってESGはどのように関わってくるのでしょうか。それぞれについて整理します。

(1)環境(Environment)

製造業者が環境と関わるうえで注意する点として以下のことがあげられます。

  • 気候変動への取り組み

  • 自然環境の保護

  • 廃棄物を減らす取り組み

  • 生物多様性を守る

原材料の入手の段階においては、自然環境や生物多様性への配慮、加工・販売の段階においては、CO2を減らす取り組みや廃棄物を減らす取り組みが求められます。

(2)社会(Society)

社会的な面では、労働者の人権に配慮しているか、労働条件が適正か、職場環境の安全性が保たれているかという点が重視されます。目の前にある製品が、どのような経緯で作られたかの情報を開示する必要性が増しています。

(2)企業統治(Governance)

企業統治には法令順守の姿勢(コンプライアンス)や情報の適切な開示、セキュリティーなどが含まれます。製造業であれば品質管理が該当します。品質不正問題は企業にとって死活問題であり、投資側も企業統治が行き届いているかについて関心を持っています。

3. 製造業者がESGに取り組むメリット

製造業者がESGに取り組むとどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットを紹介します。

(1)他の企業と差別化できる

1つ目のメリットは他の企業と差別化できることです。消費者のSDGsへの認知度は向上しつつあります。

消費者のSDGsへの認知度の推移

出典:中小企業庁 2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組

2018年では「詳しく知っている」もしくは「聞いたことがある」と回答した人は、全体の約16%だったのに対し、2020年では約40%まで拡大しています。この2年間でも、SDGsを認知している消費者は急増しているのです。

その一方、小規模事業者のSDGsへの認知度は決して高くありません。

小規模事業者のSDGsへの認知度・取組状況

出典:中小企業庁 2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組

現段階で、SDGsにすでに取り組んでいる企業は全体の3.7%に過ぎず、SDGsについて知らない、もしくは、知っていても内容を知らない企業が半数を超えています。

ということは、周りに先駆けてSDGs目標を掲げ、ESGを意識した企業経営を実践することで他の企業と差別化できます。

(2)資金を集めやすくなる

2つ目のメリットは資金を集めやすくなることです。ESGに配慮した企業経営に対し、資金を拠出する仕組みが整えられています。その一つがサステナビリティ・リンク・ローンを借りられることです。

サステナビリティ・リンク・ローンは、企業が掲げた目標によって金利などが変動するローンのことです。借りた資金は環境目的以外にも使用できます。

企業は一般的な条件よりも好条件で資金を借りられ、融資側は企業に自分たちで掲げた目標の遂行を促せます。

出典:環境省「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン 2022年版」(p121)

(3)企業知名度が向上する

3つ目のメリットは企業の知名度が向上することです。

企業のSDGsに対する取り組みを知り、実際にとった行動

出典:中小企業庁 2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組

中小企業庁が出している『小規模企業白書』によれば、企業のSDGsへの取り組みを知ることで、その企業の製品やサービスに関心を持ったり、購入の機会につながった消費者が一定数いることが分かっています。ESGを意識し、SDGsに取り組んでいることをアピールすることで企業の知名度の向上が期待できるのです。

出典:中小企業庁 2021年版「小規模企業白書」 第4節 SDGsへの取組

4. ESGに取り組む製造業の企業事例

製造業でESGに取り組む2つの企業の事例を紹介します。

(1)雪ヶ谷化学工業株式会社

雪ヶ谷化学工業株式会社は1951年創業の特殊発泡体の専業メーカーです。天然ゴム製品や石油由来の合成ゴム製品の会社として成長し、世界的トップシェア企業になりました。

2019年以降、奴隷労働や児童労働がない天然ゴムをフェアトレードで輸入することや天然ゴム製品からアレルギー物質を取り除く技術の開発、石油由来原料を10~90%削減できる製品の開発などを通じ、ESGを意識した経営を行っています。

出典:関東経済産業局「SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介」

(2)カネパッケージ株式会社

カネパッケージ株式会社は梱包材事業を展開する会社です。この会社ではCO2の削減や多種多様な環境保全活動を行っています。

具体的には梱包材のダウンサイジング化や省資源化でCO2を削減したり、廃棄される卵の殻を使ったバイオマスプラスチック製品の開発、さらにマングローブの植林などを行いました。植林した本数は1,200万本、面積にして336ヘクタール(東京ドーム71個分)というように大きな成果を上げています。

出典:関東経済産業局「SDGsに取り組む中小企業等の先進事例の紹介」

5. まとめ:まとめ:製造業にとってもESGは非常に重要

SDGsの浸透により、企業はこれまで以上にESGを意識した経営を求められています。自社の生産活動でCO2排出削減や再生可能エネルギーを利用するだけにとどまらず、自社外のことも意識する必要性が増しています。

ESGの取り組みは環境意識の高さを示すだけではなく、他の企業との差別化や資金調達といった現実的な問題を解決する手法の一つとなりつつあります。「義務」として行うのではなく、企業存続の「手段」として積極的に取り入れる必要があるのではないでしょうか。

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