流業業界におけるLCA算定のポイントをカンタン解説!

地球温暖化の原因として温室効果ガスの排出が挙げられており、物流業界においても「LCA(ライフサイクルアセスメント)」への取組みが求められています。その為、企業は排出削減の努力をする必要があります。

ここでは物流業界向けのLCAへの注意点について解説していきます。環境問題への積極的な参加は企業価値を高めることにもつながり、LCAへの理解は必須となりますのでぜひ参考にして下さい。

目次

  1. そもそもLCAとは!?物流業界にとってメリットがあるの?

  2. 物流業界のLCA算定手順

  3. 物流業界でのLCA活用に対する注意点とは

  4. 【まとめ】イノベーションへの挑戦!LCAの活用で物流業界を元気に

1. そもそもLCAとは!?物流業界にとってメリットがあるの?

まず、LCAがどのようなものなのか、定義や仕組みについてご紹介します。

LCAとは?

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、製品(サービス)の生産工程で環境への負荷を定量的に評価する方法のことです。企業が製品を生産・流通する過程で排出する温室効果ガスの環境への負荷は大きいものですが、実際に自社がどの程度排出しているのかを明確に把握している企業は少ないのです。

LCAは企業の環境負荷を統一的なルールで管理できるようにするもので、企業全体でのマネジメントだけでなく、細分化した各工程での環境負荷物質を特定しその度合を数値化することが目的となります。

なぜLCAが必要なのか

日本は2050年でのカーボンニュートラル達成を宣言し、温室効果ガスの排出削減に取り組んでいかなければなりません。しかし企業では

  • 自社がどのくらい温室効果ガスを排出しているのか

  • いつまでにどのくらい削減すればいいのか

  • 具体的にどこから削減に取り組めば良いのか

という疑問を感じています。LCAによって温室効果ガスの排出量を数値化し、どの段階でどのくらい排出されていて、どの段階での削減が可能なのかを明確にすることで、排出削減への具体的な行動につなげることができます。

2. 物流業界のLCA算定手順

現在、LCAの手法は「ISO(国際標準化機構)」の国際規格としてISO規格が作成されています。LCAの実施はこれに基づき次のプロセスで行われます。

lca技法の枠組み出典:経済産業省『ライフサイクルアセスメント』p10

(1)目的及び調査範囲の設定

まず、最初に行うステップは「目標の設定」です。ここでは環境問題のどこにアプローチするのか、評価の結果をどのように活用するのかを明確にする必要があります。例えば、製品ごとの環境負荷の発生源の特定や同等機能の製品との比較、販売の際の消費者への情報の提供などがあげられます。

(2)インベントリ分析

次に設定した調査範囲での原材料・素材・エネルギー・製品・環境負荷などのインプットデータ・アウトプットデータを把握し、インベントリ表を作成します。これによりどの段階でどのようなものがどのくらい消費されて、どのような環境負荷が発生しているのかが把握でき、何を改善すれば良いのかが明確となります。

これを「LCI(ライフサイクルインベントリ)」とも言います。

(3)影響評価(インパクトアセスメント)

LCIをもとにCO2、NOx、SOxなどの環境に影響する各項目がどの環境問題に対してどのような影響を及ぼすのか評価するステップとなります。ここでは4つの手順で行われます。

  • 分類化

まず、CO2・NOx・SOxなどの各項目がどのような環境問題に影響を及ぼしているのかを関係つける作業を行います。

  • 特性化

それぞれに関連する項目がどの程度影響しているかを定量的に示すステップです。それぞれの影響度合についてはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で採用されている「地球温暖化係数(GWP)」をもとに共通の単位に換算され集計されます。

  • 正規化

特性化で集計された値について、他の特定範囲で算出された同じカテゴリーの指標と比較した値を算出します。これによりLCAの結果を相対的に評価することができます。

  • 統合化

各カテゴリーの環境への影響度の指標を1つにまとめ統合評価を行います。これは異なるカテゴリーに対して重み付けを行い、統合化指標が算出されます。

統合化の指標方法としては「費用換算法」、「DTT法」、「パネル法」といった方法が使われています。

(4)解釈

これまでの分析や評価結果から結論をまとめていきます。これは次の3つのステップから行われています。

  • 重要な項目の特定

  • 結果の確実性と信頼性の評価

  • 結論・提言

lca影響評価ステップ出典:環境省国立環境研究所『環境技術解説ライフサイクルアセスメント』

3. 物流業界でのLCA活用に対する注意点とは

様々な業界で活用されるLCAですが、このLCAを物流業界で活用する際にはどのような注意点があるのでしょうか。ここからはLCAの活用について物流業界にスポットを当てて解説していきます。

各段階の温暖化負荷の割合

ライフサイクルは4段階で構成されています。

  1. 製造段階

原料から鉄、プラスチックなどの素材を製造する素材製造段階と、素材を加工し部品・ユニットの組み立てから製品を製造する製品製造段階に分けられます。

  1. 物流段階

製造された製品を使用場所まで輸送する段階で、輸送の範囲、輸送方法、使用場所などは「エコリーフ作成基準(PCR)」によって決められています。

※エコリーフとは製品の全ライフサイクルステージにわたる環境情報を定量的に開示する日本独自の環境ラベルです。

出典:環境省『エコリーフ環境ラべル』

  1. 使用段階

製品の作動、待機時の電力消費や使用に必要な燃料の製造・消費に伴う負荷、交換部品や消耗品の製造などの負荷が含まれます。

  1. 廃棄段階

使用済み製品の回収・輸送・分類・破砕・焼却・無害化・埋立・リサイクル、リユース工程となります。

ライフサイクルの各段階と物流にかかわる環境負荷出典:洪京和・矢野裕児『LCAからみたロジスティックの環境負荷』(p30)

物流段階での温暖化負荷の割合は?

ライフサイクルの各段階ごとの温暖化負荷割合の平均は、製造段階が37.1%、使用段階が40.3%と高いのに比べ、物流段階では2.2%と比較的小さくなっています。

しかし、ここでの物流は製造された製品の使用場所までの輸送のみが対象となっており、製造・使用・廃棄段階で発生した温暖化負荷は算出方法がまちまちとなっています。

現段階で物流にかかわる温暖化環境負荷の占める割合は小さいと言えますが、製造・使用・廃棄段階での物流関連の環境負荷の算出条件、算出方法を確立することはライフサイクル全体の大きな課題となっています。

ライフサイクル各段階の温暖化負荷の平均割合出典:洪京和・矢野裕児『LCAからみたロジスティックの環境負荷』(p31)

その取り組みのひとつとして「カーボンフットプリント」という制度があります。これは製品のライフサイクルの各過程で排出された温室効果ガスの量を追跡し、全体の排出量として表示する取り組みです。

原材料の調達から廃棄に至るまでの環境負荷

出典:環境省『カーボンフットプリント』

これについてはまだカーボンフットプリントの認定商品が少なく、詳細な分析は難しい状況となっており、今後の信頼性確保のためにも算出条件・算出方法の検討が課題となっています。

LCAの問題点

物流業界向けLCAの問題点としては、「正確性」、「計算方法」となります。

  • 正確性

LCAの活用にはその数値の正確性が最も重要な要素となります。一つ一つの製品は条件が様々ですので正確性を上げるためには製品一つ一つごとに環境負荷を計算していく必要があります。

  • 計算方法

正確な環境負荷の値を計算するには統一された計算方法では不可能となりますので、LCAの仕組みをしっかり理解し、その製品に合わせた計算方法を利用することが重要となります。この点について今後の制度の確立が必要となっていくでしょう。

【まとめ】イノベーションへの挑戦!LCAの活用で物流業界を元気に

LCAはあくまで環境負荷の数値化で現状把握やこれからの指標を示す手法であり、これを活用するには企業が環境問題について真摯に向き合い取り組みを強化していく必要があります。物流業界にも様々なイノベーションの波が訪れています。いち早く情報を取り込み、経営に取り入れることで脱炭素社会を実現していきましょう。

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