企業のCO2排出量を見える化?英国の非営利法人CDPについて解説

CDPという組織をご存知でしょうか。CDPは各企業の活動によって生じるCO2排出量はもちろんのこと、水資源や森林など地球環境にどの程度影響しているかを調査・開示している非営利団体です。集められた情報は世界全体に開示され、ESG投資を行う機関投資家などが投資対象の判断を行なっているのです。

この記事では、CDPの活動内容から日本企業がCDPの活動に積極的に参加するメリットなどを解説していきます。

目次

  1. 企業のCO2排出量を見える化するCDPとは

  2. CDPが実施している情報開示プログラムについて

  3. CDPから最高ランクのA評価を受けている企業

  4. まとめ:CDPの情報開示プログラムに参加して企業価値を高めよう

1. 企業のCO2排出量を見える化するCDPとは

CDP(旧Carbon Disclosure Project)は2000年に英国で設立された非政府組織(NGO)です。企業や都市などが経済活動を行うことで、どの程度環境への影響があるかをCDP独自のプログラムでデータ集計し、全世界へ開示しています。

なぜCDPが設立されたのか

気候変動によるリスクが顕著になりつつあった2000年、一部の投資家は企業がどの程度気候変動に対応しながら事業を行なっているか、情報の開示を求めていました。

この情報を広く収集して分析し、公開することで機関投資家の関心を高めながら結果として企業の気候変動に対応する流れを推進していくことを目的として設立されたのです。

CDPの主な活動内容について

CDPは炭素、水、森林減少に関する一次情報を機関投資家からの要望に応えて世界中から収集し、そのデータを基に各企業や都市などがもたらす環境への影響を計測、把握して開示しています。

また、CDPは集めたデータを分析して各企業の地球環境への対応を採点し、ランク付けがなされます。企業の環境への意識やガバナンス、気候変動に対するリーダーシップを示せているかどうかなどを総合的に判断して、質の高い企業をCDPの Aランクとして表彰しているのです。

CDPの活動に賛同している投資家

CDPは主に機関投資家からの要望によって企業に情報公開を求めています。各投資家はこの情報を利用し、人々と地球環境の持続可能な経済活動のための投資判断を行なっているのです。CDPに賛同している投資家は全世界で590機関を超え、運用投資総額は110兆米ドルを超えています。

出典:CDPジャパン「説明資料」

日本でも農林中金やニッセイアセットマネジメントなど主たる機関投資家がCDPの活動に賛同し、開示された情報を基に投資判断を行なっているのです。

出典:CDPジャパン「署名投資家一覧」

2. CDPがCO2排出量などのデータを集めるために実施している情報開示プログラムについて

CDPが行う情報開示プログラムとは

CDPは地球環境に対して関心の高い機関投資家などの要請によって、企業の環境情報を得るために3種類の質問状を企業に送付します。

現在、気候変動・水セキュリティ・森林の3種類が運営されており、質問内容は毎年更新されています。

企業からの回答はCDPのスコアリング基準に則り公平に評価され、8段階のランク付けがなされます。

Aが最高位で、それに続いてA−・B・B−・C・C−・D・D−とランク分けされ、各企業がどの程度の意識で環境に対応しているかが分かるようになっています。

質問状の送付対象企業は各国の主要なインデックスファンドの該当企業で、日本ではFTSEジャパンインデックスの該当企業から時価総額上位500社を対象としていますが、該当していなくても自主的に回答することも可能です。

2020年の気候変動に関する質問状に対して日本企業の回答率は65%で、CDPのAランクに該当した企業は53社でした。

出典:CDPジャパン「CDP気候変動レポート2020:日本版」

情報開示プログラムに回答するメリット

それではCDPの情報開示プログラムに回答するメリットは何なのでしょうか。

主に以下の3つのメリットが考えられます。

(1)企業の評判の向上

CDPは集めた回答を基に、地球環境に対する企業の取り組みをランク付けしています。そしてこれを全世界に公表しているため、CDPのプログラムに回答するだけで世界中のステークホルダーや投資家への対外アピールが可能となるのです。

(2)投資家の投資判断として活用される

世界ではESG投資の流れが加速しています。

出典:経済産業省「ESG投資」

ESG投資とは、各企業の環境(Environment)・社会(Social)・組織統治(Governance)に関する情報を考慮した投資のことで、持続可能な社会を目指したビジネスの基盤が重要になっています。

CDPのプログラムに回答することで、市場が拡大するESG投資の投資対象として判断されやすくなり事業拡大に必要なキャッシュを手にすることが可能となるのです。

(3)自社の環境対策の現状把握と戦略立案が可能となる

課題の解決には現状分析が必要です。CDPの質問状への回答作業を行うだけで、高度な分析結果を得られることができるため、自社が直面している環境リスクを把握し、どのように管理・解決していけばいいか経営戦略を立てることができるのです。

情報開示プログラムに回答するデメリット

(1)質問状はすべて英語

CDPの質問状はすべて英語表記となっています。選択式だけでなく説明を求められる設問もあり、すべて英語で回答する必要があるため、ハードルの高さを感じるかもしれません。しかし、CDPは日本にも事務局があり回答のサポートを受けることが可能となっています。

(2)事務手数料がかかる

CDPは非営利法人ですが、組織運営と回答に対する高度な分析と管理を維持するために事務手数料の支払いを求めています。標準的な費用は272,500円となっていますが、企業によっては減額される可能性もあります。

出典:CDPジャパン「回答事務手数料についてよくあるご質問」

3. CDPから最高ランクのA評価を受けている企業

日本には気候変動プログラムでCDPからAランク評価を受けている企業が53社あります。ちなみに世界全体では277社ですので全体の19%が日本企業という結果で、米国に次いで多い数字となっています。

ここでは、Aランクの評価を受けている日本企業のうち、気候変動・水・森林の各プログラムにおいてAランク(トリプルA)評価されている企業が2社あります。

(1)花王株式会社

化粧品やヘルスケア用品最大手の花王はESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」に基づいた事業によってESG活動を推進しています。カーボンリサイクル技術の開発や節水製品の提供、森林破壊ゼロに向けたサプライチェーンの透明化などを進めることで、全てのプログラムにおいてAランク評価がされたのです。

出典:CDPジャパン「気候変動レポート2020:日本版」p10

(2)不二製油グループ本社株式会社

食品素材メーカーの不二製油グループは、主力商品の原材料であるパーム油・カカオ豆・大豆がいずれも森林破壊や児童労働といった課題を抱えている中で、環境ビジョン2030での太陽光パネルの導入や2030年までに児童労働をゼロにする取り組みの児童労働モニタリングシステムなどによって率先した課題解決を推し進めています。

出典:CDPジャパン「気候変動レポート2020:日本版」p10

まとめ:CDPの情報開示プログラムに回答して企業価値を高めよう

地球環境に対しての企業の取り組みが注目されている中、CDPの情報開示プログラムに回答することで、世界に取り組みをアピールすることが可能となります。

全ての企業が CDPプログラムの気候変動・森林・水に関する質問書によって情報を開示できます。回答要請を受けていなくても積極的に情報開示行うために、まずはCDPジャパンのWebサイトへアクセスし登録を行いましょう。

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