洋上風力促進区域とは?関連する再エネ海域利用法についても詳しく解説!

風力発電の分野で洋上風力発電に注目が集まっています。洋上風力発電のルールを定めた再エネ海域利用法により定められたのが洋上風力促進区域です。

今回は再エネ海域利用法の内容や洋上風力促進海域となるための条件、促進海域の現状、洋上風力促進区域を設定する理由についてまとめます。

目次

  1. 再エネ海域利用法とは何か

  2. 洋上風力促進区域の設定状況

  3. 洋上風力促進区域を設定する理由

  4. まとめ:再エネ海域利用法に関して中小企業は再エネ由来の電力を使うことで風力発電を支援できる

1. 再エネ海域利用法とは何かは

洋上風力促進区域について理解するには、再エネ海域利用法を理解する必要があります。ここでは、再エネ海域利用法の4つのポイントについて整理します。

(1)再エネ海域利用法の概要

再エネ海域利用法とは洋上風力発電をめぐる問題を解決し、海洋再生可能エネルギーのための海域利用を促進するための法律です。再エネ海域利用法で定められた課題とは以下の2点です。この法律によって「促進区域」が定められました。

  • 海域の占用に関する統一的なルールがない

  • 先行利用者との調整の枠組みが存在しない

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

(2)洋上風力促進区域とは

洋上風力促進区域とは一般海域のうち次の条件を満たした区域のことです。

  • 自然条件が適当である

  • 漁業や海運業に支障が出ない

  • 系統接続が適切にできる

※系統接続:発電した電力を送電線に接続し電気を流すこと

これらの条件を満たした海域が促進区域で洋上風力発電実施のために指定されます。促進区域に指定されると、その海域で洋上風力発電を行う事業者は最大30年間の占有許可が得られます。

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

(3)区域指定・事業者公募の流れ

再エネ海域利用法に基づく区域指定・事業者公募の流れ

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

都道府県からの情報提供に基づき、一定の準備段階に進んでいる区域や有望な区域の整理が行われます。そして、要件を満たしていることを確認したうえで経済産業大臣や国土交通大臣が促進区域を指定します。

その後、事業者の公募が行われ、選定された事業者に区域占用許可や再エネ特措法の認定が行われます。

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

(4)有望な区域の要件

促進区域の前段階である有望な区域の要件は以下の3点です。

  • 促進区域の候補地がある

  • 協議会を設置して利害関係者と協議できる

  • 区域指定の基準を満たしている

これらの条件を満たしている海域が有望な区域とされ、洋上風力発電の候補地となるのです。

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

2. 洋上風力促進区域の設定状況

洋上風力発電の前提となる再エネ海域利用法は2018年11月に制定され、翌年4月から施行されました。これにより洋上風力発電はどうなったのでしょうか。現状と政府の取り組みについてまとめます。

(1)洋上風力促進区域の現状

2022年9月30日段階で促進区域として認められたのは次の8か所です。

  • 長崎県五島市沖

  • 秋田県能代市・三種町・男鹿市沖

  • 秋田県由利本荘市沖

  • 千葉県銚子市沖

  • 秋田県八峰町・能代市沖

  • 長崎県西海市江島沖

  • 秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖

  • 新潟県村上市・胎内市沖

再エネ海域利用法の案件形成状況

出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」

分布をみると日本海側で5か所、東シナ海で2か所、太平洋側で1か所となっています。日本海側に多いのは冬の季節風が強く吹き、洋上風力発電に必要な気象条件が整っているからです。

(2)政府主導で案件を加速

洋上風力促進海域を設定するためには民間事業者だけではなく、政府を含めた関係者による継続的な案件形成が不可欠です。促進区域設定のためには以下の準備が必要です。

  • 風況・地質等の調査

  • 環境アセスメントの実施

  • 地域調整

  • 系統対策

当初、これらの作業は発電事業者が主体となって行っていました。しかし、地域によっては複数の事業者が重複して調査をしていたり、地元との調整がうまくいっていないと指摘されました。

そこで、事業のペースアップを図るため、政府や政府に準じる組織が積極的に関与する「日本版セントラル方式」を検討しています。

日本版セントラル方式とは、初期段階から政府が関与することで、調査や系統確保などのスピードアップを図る手法のことです。これにより、政府は洋上風力発電の事業を加速させようとしています。

出典:経済産業省・国土交通省「洋上風力政策について」(p5)

3. 洋上風力促進区域を設定する理由

政府が洋上風力促進区域の設定に積極的な理由は何でしょうか。ここでは2つの理由についてまとめます。

(1)洋上風力発電が再エネの主力電源化に貢献できる

1つ目の理由は洋上風力発電が再エネの主力電源化に貢献できるからです。2021年10月に発表された「第6次エネルギー基本計画」で、再生可能エネルギーの主力電源化の徹底が表明されました。

この目標を達成するには、太陽光発電や従来型の陸上風力発電だけでは不十分です。少しでも再生可能エネルギーの割合を引き上げるには、洋上風力発電の増加が必須であるといえます。

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」」

(2)洋上風力発電が成長産業になりうる

2つ目の理由は洋上風力発電が成長産業になる可能性を持つためです。現在、洋上風力発電の先進地域は欧州です。安定した偏西風と遠浅の海底という有利な条件を生かし、風車の大規模化やコストダウンを実現してきました。その一方、2030年の世界シェアの41%はアジアとなるという予測も出されています。

そのアジア地域と気象・海象に類似点が見られるのが日本です。日本で開発する風車の基礎技術やメンテナンス技術がアジアの自然環境に適した強度を有することで、他国に先駆けてアジア市場に進出する可能性が生まれ、洋上風力発電を日本の成長産業に育てられる可能性があるからです。

出典:経済産業省「洋上風力産業ビジョン (第1次)」

4. まとめ:再エネ海域利用法に関して中小企業は再エネ由来の電力を使うことで風力発電を支援できる

今回は洋上風力促進区域やその前提となる再エネ海域利用法、洋上風力促進区域の現状、政府が促進区域を設定する理由などについてまとめました。こうした動きは再エネを主電力化するという政府の方針を達成するためのものです。

洋上風力発電に関して中小企業が関与できることは2つです。1つは再エネ由来の電力を使うことで風力発電を支援すること。もう1つは洋上風力発電に関連する事業に進出することです。

このうち、関連産業への進出は関連技術を持つ限られた企業にしかできませんが、再エネ由来の電力を利用することはすべての中小企業に可能です。再エネの普及を支援し、気候変動を抑えるための手立てとして再エネ由来の電力使用を検討してみてはいかがでしょうか。

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