CDPが質問書に生物多様性を追加!生物多様性が重視される理由とは?
- 2023年12月15日
- CO2算定
2022年1月に開かれた「CDP2021」の結果報告会で、2022年以降の質問書の内容変更が報告されました。この中で、今後は質問書に生物多様性など新しい項目が加えられ、「統合質問書」となることが発表されました。
今回はCDPがどのような組織か、質問書の構成、CDPが生物多様性を重視する理由、生物多様性問題にTNFDなどについてまとめます。
目次
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CDPはどんな組織?
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CDPが企業に出す質問書に生物多様性を追加
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生物多様性を重視する理由
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生物多様性の問題に取り組むTNFD
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まとめ:CDPが質問書に生物多様性を追加したことからも中小企業も生物多様性に負荷をかけない活動が求められてくる
1. CDPはどんな組織?
CDPは2000年にイギリスで設立されたNGOです。気候変動・水セキュリティ・コモディティなどの分野で各企業に情報公開を促している団体です。CDPが集めたデータは各国政府や投資家、企業に活用されています。日本では2005年から活動を開始し、公式サイトでCDPが集めた情報について公開しています。
2. CDPが企業に出す質問書に生物多様性を追加
CDPは環境問題に関する各企業の取り組みについて知るために送付する質問書の構成や2022年の変更点、2023年からスタートする統合質問書について解説します。
(1)現在の質問書の構成
現在の質問書は気候変動・フォレスト・水セキュリティの3分野に分かれています。各質問書では企業統治(ガバナンス)や気候関連リスクの捉え方、機会やリスクの認識、事業戦略、データの収集などが質問されます。
CDPは質問書の解答をもとに各企業の現状や取り組みをスコアリングして公表します。評価はA~Dの8段階でAに近づくほど環境面で積極的な事業運営をしていると考えられます。
出典:CDP「スコアリングイントロダクション 2022」(p6~7)
(2)2022年の変更点
質問書のうち70%は軽微な変更ですが、25の新しい質問が追加されました。中でも大きな変更は「生物多様性」に関する質問です。生物多様性分野の質問は今回が初めてで、6つの質問から成り立ちます。
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取締役会レベルの監督
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公共への宣言・賛同
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バリューチェーンへの影響
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生物多様性に関する行動
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指標と実績の監視
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他の生物多様性関連情報
出典:CDP「CDP気候変動質問書 2022年変更点」(p45)
(3)今後はじまる「統合質問書」とは?
CDPは2021年5月19日にBNPパリバの資金提供を受けて、生物多様性報告指標の開発を行うと発表しました。生物多様性に関する標準化された指標を作ることで、客観的に生物多様性への取り組みを評価するのが狙いです。
2022年の気候変動報告書に生物多様性関連の質問が追加されていますが、追加の資金を得られれば2025年までに気候変動・フォレスト・水セキュリティに生物多様性などを加えた統合質問書を作成する予定です。
出典:環境省「令和4年3月 環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性主流化室」(p18)
出典:CDP「CDP2022気候変動質問書 「生物多様性」解説ウェビナー」
3. 生物多様性を重視する理由
最近、CDPは生物多様性を重視する姿勢を鮮明にしています。なぜ、CDPは生物多様性を重視するのでしょうか。生物多様性の概要や重要な理由についてまとめます。
(1)生物多様性とは何か
生物多様性とは、生物種の多さやそれらによって成り立っている生態系の豊かさやバランスが保たれている状態をさすことばです。生物多様性には3つのレベルがあります。
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生態系の多様性
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種の多様性
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遺伝子の多様性
生態系の多様性とは、気候や地形によって異なる様々なタイプの自然環境のことです。種の多様性とは動植物・微生物を含む生物種の多様さのことです。そして、遺伝子の多様性は同じ生物であっても異なる遺伝子を持つことで生まれる幅広い個性のことです。こうして多様な生物が暮らす環境そのものを生物多様性といいます。
(2)生物多様性が重要な理由
生物多様性は少なくとも2つの点において重要です。1つは資源を提供してくれることです。食料や資材、空気、水などは生物多様性によって守られているといってもよいでしょう。生態系がもたらす利益は1年あたり33兆ドルにのぼるとの試算もあります。
もう1つは健康と医療に対する恩恵です。医薬品を作り出すには数多くの動植物や遺伝子が必要であり、その点でも人間に恩恵を与えているといえます。
4. 生物多様性の問題に取り組むTNFD
生物多様性の問題に取り組む組織としてTNFDがあります。TNFDとはどのような組織なのでしょうか。概要と活動について紹介します。
(1)TNFDとは何か
TNFDとは「Taskforce on Nature-related Financial Disclosures」の略で、日本語では自然関連財務情報開示タスクフォースと訳されます。TNFDは2019年のダボス会議以降、徐々に組織が形作られ2021年に発足されました。
出典:環境省「令和4年3月 環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性主流化室」(p4)
(2)TNFDの活動
2022年3月15日、TNFDはフレームワークβ版を公表しました。β版の内容は以下のとおりです。
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自然関連の概念
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用語の定義
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自然関連情報開示の提言
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自然関連リスク・機会を評価するためのLEAP
2022年6月にversion0.2、10月にversion0.3が公表されました。今後、2023年1月にversion0.4、9月に1.0を公表するとしています。
出典:環境省「令和4年3月 環境省自然環境局自然環境計画課 生物多様性主流化室」(p7)
5. まとめ:CDPが質問書に生物多様性を追加したことからも中小企業も生物多様性に負荷をかけない活動が求められてくる
CDPが企業に出す質問書は環境面のデータを与えるだけではなく、企業経営にも大きな影響を与えています。環境問題に対応するため、大企業は自社のみならずサプライチェーン全体の見直しを進めています。
そうなると、大企業に製品を納めている中小企業もCDP質問書に準拠した行動が求められます。生物多様性への配慮に乏しい経営をしている場合、契約が見直される可能性も否定できません。
今後は、企業規模にかかわらず生物多様性を含む環境配慮をすることが事業経営にとって重要な指針となるでしょう。中小企業は今まで以上に環境や生物多様性に配慮した事業運営をすることが求められるでしょう。この際、消極的な対応をするだけではなく、積極的に生物多様性を尊重した経営を意識したほうがよいのではないでしょうか。