地方創生って何?地方創生の法律や具体的な取り組みを解説!

平成26年(2014年)、第二次安倍内閣は内閣改造で地方創生担当大臣を新設し、地方創生に本格的に取り組みはじめました。そして、同年に「まち・ひと・しごと創生法」(地方創生法)を成立させ、この動きを加速させます。

地方創生法は、地域のしごとや新しい人の流れを作り、結婚・出産・子育ての支援、地域連携などを基本目標としました。今回は、地方創生の基本的考え方や具体的な取り組みなどについてまとめます。

目次

  1. 地方創生とは何か?

  2. 地方創生の取り組みが必要な理由とは?

  3. 自治体による地方創生の取り組み

  4. 中小企業による地方創生の取り組み

  5. まとめ:自社・自治体に合った地方創生に取り組もう

1. 地方創生とは何か?

地方創生とは、東京一極集中を是正し、人口減少や地方の衰退に対処するため第二次安倍内閣が打ち出した政策のことです。2014年に発足した第二次安倍内閣は石破茂氏を地方創生担当大臣に任命。総理大臣を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げました。

出典:参議院『地方創生をめぐる経緯と取組の概要』(P4)(2015/12/1)

地方創生を進めるため、2014年11月21日に地方創生法を制定。豊かな生活を営める地方と個性豊かで多様な人材、魅力ある多様な就業機会(しごと)を生み出すための政府や地方公共団体の責務が明記されました。

出典:参議院『地方創生をめぐる経緯と取組の概要』(P5)(2015/12/1)

2. 地方創生の取り組みが必要な理由とは?

日本は2008年をピークに人口が減り続けています。なかでも、地方の人口減少は深刻です。地方創生に取り組むためには、どうすれば地方人口が維持できるか考える必要があります。まずは、日本全体の人口動向と東京への人口流出について見てみましょう。

(1)少子化の進展と人口の減少

出典:内閣官房『資料1 地方創生の現状と今後の展開(p7)』(2019/7/23)

日本の総人口は2008年をピークに減少局面に入りました。その理由の一つは少子化です。女性が一生の間に生むことが見込まれる子どもの数のことを「合計特殊出生率」といいます。

1970年代半ば以降、合計特殊出生率は長期的に低下傾向にありました。2006年以降、若干、上向きになりましたが近年は横ばい状態です。また、出生数も1970年代以降減少傾向が続いています。

現状の人口を維持するために必要な合計特殊出生率は2.05。この数字を下回り続けているということは、生まれる子の数が少なく、人口が減少に転じることを意味しています。

出典:内閣官房『資料1 地方創生の現状と今後の展開(p8)』(2019/7/23)

この状態が続いた場合、日本の総人口は2060年に約9300万人、2110年には約5300万人に減少するという推計がなされています。そうなると、都市部より地方が人口減少影響を強く受け、よりいっそうの過疎化が危惧されます。

(2)東京圏への人口集中

出典:内閣官房『資料1 地方創生の現状と今後の展開(p10)』(2019/7/23)

東京は地方の人々を多く受け入れてきました。高度経済成長期や1980年代から1990年代のバブル期前後などに東京への流入が顕著にみられました。2010年代に入っても、東京への流入が続いています。

なかでも最も多いのが20歳~24歳。彼らは就職や大学進学の年代であることから、東京に集まってきた理由は就職や進学であると予想できます。

若者たちが地方を去ることで、消費が減退し、新たな産業が生み出される下地が失われるかもしれません。若者たちの流出は地方経済に大きな打撃となります。

(3)東京圏一極集中解消の必要性

出典:内閣官房『資料1 地方創生の現状と今後の展開』(p13)(2019/7/23)

東京への一極集中は関東地方など東京の近県に限った話ではありません。三大都市とされる名古屋市や大阪市、地方中核都市ともいえる仙台市や札幌市などからも人口が流出し、東京に人が集まっています。

東京圏への一極集中が進むことによって住宅不足や交通問題、ゴミ処理といった過密による都市問題の深刻化が懸念されます。

それと同時に、首都圏とそれ以外の地域の経済格差が進むという問題もあるでしょう。これらを解消するには、地方で安心して暮らせる仕事を創出し、地方人口を回復させ、地方経済を立て直す地方創生が必要不可欠だといえるでしょう。

3. 自治体による地方創生の取り組み

現在、政府が示した地方創生の方針の下、各地方自治体が具体的な取り組みをスタートさせています。ここでは、北海道富良野市と長崎県長崎市、高知県高知市の事例を紹介します。

(1)官民協働の中心市街地活性化「ルーバン・フラノ構想」(北海道富良野市)

富良野市や商工会議所、地元の有志が中心市街地の空き地を利用し、中心市街地の活性化を図る試みです。

富良野は全国有数の観光地でありながら、郊外に観光地があるため、中心市街地は観光の恩恵を受けず衰退していました。そこで、中心市街地にあった病院跡地を活用して複合施設「フラノマルシェ」を開設。「食と農」をテーマとする商業施設を作ることで集客をはかりました。

出典:内閣官房『特集-まち・ひと・しごと創生 事例のご紹介(北海道富良野市)』

(2)地元農産物支援事業(山形県鮭川村)

2020年から2021年にかけて、新型コロナウイルスの感染拡大により、イベントの中止や外出自粛の動きがみられました。

その影響で、花卉(かき)の売り上げが落ち込み、地元農家が大きな痛手を負います。そうした農家を支援するため、鮭川村では予算を組んで農産物の販路拡大を支援しました。

具体的には村役場での花の展示や交流都市への花卉のプレゼント、観光大使を務める首都圏のシェフに花やキノコを送って「父の日キャンペーン」を開催する、などといった取り組みを実施しました。

出典:内閣官房『地元産農産物支援事業

こうした動きは地元産農産物の良さに目を向け、品質をアピールする良い機会になりました。今後もこうした活動を継続することで地域産業を発展させ「しごと」を作り出すことが期待されます。

(3)梼原町小さな拠点販売流通拡大事業(高知県梼原町)

高知県梼原町では、町内産品の販路拡大のため地元の生産者や加工業者の商品をネットで販売する体制を整えました。梼原町では町内6つの集落活動センターに生産者と加工業者が参加。それぞれのセンターで生産活動を行っていました。

この6つのセンターを統括する集落活動センターゆすはら連絡協議会が販促用のHPを作成し、販路を開拓しようという試みです。

HPは、年配の方でも管理・運用しやすい仕組みを採用。高齢化率46%を越える梼原町の実情にあった仕組みを整えました。新型コロナウイルスの感染拡大で停滞しがちな地場産業の活性化を狙います。

出典:内閣官房『地方創生図鑑』(高知県梼原町)

4. 中小企業による地方創生の取り組み

(1)株式会社 能作

株式会社能作は富山県高岡市にある銅器製造メーカーです。高岡市は江戸時代から続く鋳物の街です。高岡市は鍋や鎌、鋤、鍬などの日用品や農具の生産から仏具、はては銅像や梵鐘に至るまで、鋳物の生産で栄えてきました。

しかし、近年は需要の低迷などにより右肩下がり。年々、売り上げが減少する衰退産業と化していました。

出典:内閣官房『特集-まち・ひと・しごと創生 事例のご紹介』(富山県 株式会社能作)

株式会社能作は、日用品の生産が主だった鋳物にデザイン性を付与することによって新たな価値を付与しました。もとからあった高度な鋳造技術と最近の流行をとらえたデザインの組み合わせは新たな需要を生み出します。そして、それは雇用の維持・拡大につながりました。

(2)中村ブレイス株式会社

中村ブレイスは島根県大田市にある医療機器メーカーです。社会貢献を経営理念に据え、義手や義足、人口乳房、顔の一部復元など何らかの理由で不自由な思いをしている方の生活をサポートする器具を開発しています。

会社の技術は日本はもとより世界からも高く評価されているため、注文が後を絶ちません。経済産業省の「ものづくり日本大賞の特別賞」、中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」等を受賞するなど技術力は折り紙付きです。

こうした企業活動によって得た利益の一部を使い、古民家を再生。さらに、旧郵便局庁舎を改装したオペラハウスも作りました。

出典:内閣官房:『特集-まち・ひと・しごと創生 事例のご紹介』(島根県大田市)

古民家再生活動にあたっては補助金や融資をうけていないという点でも特筆に値する事業です。

5. まとめ:自社・自治体に合った地方創生に取り組もう

人口の減少と東京一極集中は、地方の衰退を引き起こそうとしています。2014年から本格的に始まった地方創生の取り組みは、2020年から新たなフェーズに入りました。しかし、根本的な内容は変わっていません。

すなわち、地域の実情に合った地方創生を各地で取り組む必要があるということです。もちろん、地域によって事情は異なりますので、画一的な事業展開は困難です。ある地域・ある事業者で成功した方法が、他でも通用するとは限りません。

しかし、各地にはそれぞれの地域にしかない特質があります。それを生かすことで、地域創生が成功する可能性が高まります。国からの支援だけを当てにせず、自主的に自社・自治体にあった地方創生に取り組む必要があるのではないでしょうか。

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