二国間クレジット制度(JCM)とは?制度の内容や実施状況を解説

二国間クレジット制度(JCM)とはどのような制度なのでしょうか。日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言していますが、二国間クレジット制度などにより2030年までに5000万〜1億トンの温室効果ガスを排出削減または吸収することを見込んでいます。

そのため今後さらなる拡大が予想されています。この記事では、二国間クレジット制度の概念やメリット、課題、実施状況など法人の皆さまが知っておくべき基本的な知識についてご紹介します。

目次

  1. 二国間クレジット制度(JCM)の概要

  2. 二国間クレジット制度(JCM)のメリットと課題

  3. 実施状況

  4. まとめ:二国間クレジット制度(JCM)に関する理解を深め、国の動向を把握しよう!

1. 二国間クレジット制度(JCM)の概要

京都議定書からパリ協定に代わったことで、クレジット発行の仕組みもクリーン開発メカニズムから二国間クレジット制度に代わりました。そもそも二国間クレジット制度とはどのような制度なのか、クリーン開発メカニズムとはどのような違いがあるのかを整理しましょう。

二国間クレジット制度とは?

二国間クレジット制度は英語で表記するとJoint Crediting Mechanismとなることから、略して「JCM」と呼ばれることもあります。二国間クレジット制度は、日本と途上国が協力し合い、温室効果ガスの排出量を削減しようとする制度です。日本は自国が有する低炭素技術や製品、システム、サービス、インフラなどを途上国に提供し、途上国はそれらを活用し温室効果ガス排出量の削減に取り組みます。

日本は技術などを提供する代わりに、途上国が削減することができた温室効果ガスの排出量を日本の排出削減目標の達成に活用することができます。

出典:資源エネルギー庁『「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策』(2018/1/9)

クリーン開発メカニズム(CDM)との違い

二国間クレジット制度は、パリ協定第6条に沿って実施されます。パリ協定の前身となる京都議定書においては、クリーン開発メカニズム(CDM)という異なるクレジット発行の仕組みが機能していました。

二国間クレジット制度はクリーン開発メカニズムよりもより効率的で柔軟な仕組みであり、管理がしやすくなり排出量削減の計算も簡素化されています。

JCMとCDMの比較

出典:資源エネルギー庁『「二国間クレジット制度」は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策』(2018/1/9)

出典:環境省「二国間クレジット制度 (Joint Crediting Mechanism (JCM))の最新動向」

2. 二国間クレジット制度(JCM)のメリットと課題

二国間クレジット制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。今後さらなる拡大を目指す上で解消すべき課題もあるのでしょうか。ここでは、二国間クレジット制度のメリットと課題について整理します。

二国間クレジット制度のメリット

二国間クレジット制度は、日本に賛同した途上国との間で実施されるものです。途上国は日本と二国間クレジット制度を構築することで日本の低炭素技術などを導入できることから、脱炭素へ取り組みやすくなります。

日本は提供した技術などにより途上国が温室効果ガス排出量を削減することで、削減量に相当するクレジットを獲得し、削減目標に役立てることができます。このように日本と途上国のどちらにもメリットがあることから、日本は2011年から協議を開始し、現在までに25カ国(2022年11月28日時点)と二国間クレジット制度を構築しています。

出典:外務省『二国間クレジット制度(JCM)』(2022/11/28)

二国間クレジット制度の課題

二国間クレジット制度の活用をさらに拡大させるために解消しなければならない課題がいくつかあります。認知度の向上に努め、日本と協力して脱炭素に取り組む新規のパートナー国を獲得しなければなりません。プロジェクトの大規模化や資金源の多様化を図り、二国間クレジット制度をより魅力的な制度にすることも求められます。

出典:資源エネルギー庁『温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」』(2021/9/9)

3. 実施状況

日本は現在までに25カ国と二国間クレジット制度を構築していますが、それぞれどのようなパートナーシップの元で脱炭素に取り組んでいるのでしょうか。ここでは二国間クレジット制度の事例をみていきましょう。

タイ

タイは火力発電に頼っていることから、脱炭素を実現させるためには再生可能エネルギーの導入が求められています。しかしながら送電設備の増強や送電系統の電圧を最適化する仕組みが構築されていないことが課題になっていました。タイは日本と二国間クレジット制度を構築することで日立製作所から技術提供を受け

「ICTを活⽤した送電系統の最適制御による低炭素化・⾼度化事業」を実施しています。

出典:資源エネルギー庁『温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」』(2021/9/9)

インドネシア

株式会社トーヨーエネルギーフォームが代表事業者となり、北スマトラ州バンバンハスンドゥタン県に流れ込み式小水力発電所を建設し、売電事業を行っています。売電事業によりグリッド電力を代替することで温室効果ガス排出量を削減します。

出典:環境省 脱炭素ポータル『二国間クレジット制度(JCM)とは何か?~温室効果ガスの世界的な排出削減・吸収に貢献する取組~』(2022/9/30)

モンゴル

温室効果ガス排出量を削減することを目的とし、株式会社サイサンがウランバートル市にある飲料工場にLPGボイラーを導入する事業が実施されています。熱利用の用途に合わせて貫流ボイラーと真空式温水器を導入し、システムの効率を高めることで既存の石炭ボイラーの燃料消費量を削減します。

出典:環境省 脱炭素ポータル『二国間クレジット制度(JCM)とは何か?~温室効果ガスの世界的な排出削減・吸収に貢献する取組~』(2022/9/30)

4. まとめ:二国間クレジット制度(JCM)に関する理解を深め、国の動向を把握しよう!

この記事では、二国間クレジット制度に関する概念やメリット、課題など基本的な知識や実際にどのようなことが行われているのかなどについてご紹介しました。

二国間クレジット制度は今後さらなる拡大が見込まれています。二国間クレジット制度についての理解を深め、国の動向を把握しましょう。

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