【国際イニシアチブとは】ESG投資家が注目する気候変動対策
- 2023年12月15日
- CO2算定
国際イニシアチブとは何かをご存じでしょうか。国際イニシアチブとは、企業が取り組んだ気候変動対策に対しての情報・評価の国際的基準です。SDGsをはじめとした環境への取り組みは、グローバル企業においてもはや最優先項目と言っても過言ではありません。
本記事では国際イニシアチブとは何か、なぜ投資家は注目するのか。種類や事例を含めて詳しく解説していきます。
目次
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国際イニシアチブとはなにか
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国際イニシアチブの種類とは
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なぜ投資家は国際イニシアチブに注目するのか?
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世界や日本の国際イニシアチブ加盟企業事例
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まとめ:国際イニシアチブに取り組むことで企業の環境価値を高めよう!
1. 国際イニシアチブとはなにか
そもそもイニシアチブとは?
そもそもイニシアチブとは何を意味するのでしょうか。イニシアチブとは英語では「initiative」と書き、「構想」「計画」という意味があります。ビジネスにおいては「主導権」や「先導する」といった意味で使用されます。わかりやすく言うと経営やマネジメントにおいて「推進努力を行うこと」です。
気候変動対策のための取組
ここで解説する国際イニシアチブは、世界の気候変動に対する取り組みのことです。主に企業の脱炭素化を促進するためのものになり、複数のイニシアチブがあります。
グローバル企業への影響力は年々拡大しており、影響力はESG投資においても重要性を増しています。主な国際イニシアチブは温室効果ガス排出量の算定方法や、基準を「GHGプロトコル」に準拠しています。
出典:経済産業省「気候変動をめぐる国際的なイニシアティブへの対応」
なぜ対策が必要なのか
それではなぜこのように国際的な脱炭素への取り組みが必要なのでしょうか。人間の経済活動による温室効果ガスの大量排出は地球温暖化を加速させ、そのための気候変動による異常気象が世界で多発しています。ICPPはこのままいけば、世界の平均気温は約2℃も上昇すると警告しています。地球温暖化を食い止めるために、世界規模で脱炭素への取り組みが必須です。化石エネルギー由来による温室効果ガス排出量は、2018年には10.6億トンにも及びました。
出典:資源エネルギー庁「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」(2021.02.16)
2. 国際イニシアチブの種類とは
イニシアチブ例:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
TCFDとは気候関連の情報開示及び金融機関の対応について検討する事を目的として設立したイニシアチブです。
ガバナンスの観点から気候問題に対処する体制、企業理念へどのように反映しているか、戦略の観点から短・中・長期わたり企業経営に与える影響、リスクマネジメントの観点から気候変動のリスクについての理解・評価・取り組み、指標と目標の観点からリスクと機会についてどのような基準で判断し、目標への進捗を評価しているかについての項目を開示する事を推奨しています。
イニシアチブ例:SBT(Science Based Targets)
SBTは、世界的な団体のCDPとWRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)やUNGC(国連グローバル コンパクト)が設立したイニシアチブです。気温上昇を2℃未満に維持することを目指す国際標準目標になり、ESG投資において重要な判断基準の一つと言えます。
イニシアチブ例:RE100(Renewable Energy100%)
RE100は、2014年に国際的NGO「クライメイトグループ(The Climate Group)」が、立ち上げた国際イニシアチブです。人間活動のエネルギーを100%「自然エネルギー」により賄うことを目標としています。企業の太陽光や、風力など再生可能エネルギーの促進を目指します。
環境省:「国際的な取り組み RE100詳細資料」(p.1 )(2022.3.17)
イニシアチブ例:EP100(Energy Productivity100%)
EP100はRE100と同じく「クライメイトグループ(The Climate Group)」により運営されている国際イニシアチブです。RE100が自然エネルギーによる再生可能エネルギーの普及促進を目標としているのに対して、EP100は省エネを促進することを目標とした評価です。
イニシアチブ例:CDP(Carbon Disclosure Project)
CDPはイギリスのNGOが運営する国際イニシアチブです。企業や自治体に対して環境問題にかかわる、以下3項目に質問を行い、それに対する回答の情報を公開しています。それぞれ個別のスコアリング基準を有し、環境への影響を計測・管理することを促します。
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気候変動
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ウォーター
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フォレスト
3. なぜ投資家は国際イニシアチブに注目するのか?
持続可能な社会を構築することは経済界の義務
利益優先主義で、地球環境をこれ以上悪化させる訳にはいきません。企業が環境問題を解決するための取り組みを行うことは、もはや義務といっても過言ではないでしょう。2006年国連ではPRI(責任投資原則)を発表し、投資家がESGに取り組むことを求めました。
ESGとはEnvironment( 環境 )Social( 社会)Governance( 企業統治)の略です。目先の利益を追い求めるだけではなく、持続可能な社会を築くために、企業に対して環境問題解決に向けて努力することを促すものです。国際イニシアチブは、そのための指標となります。
環境ビジネスの将来性の高さ
ESG評価が高い企業は、環境に対する貢献度が高く社会的意義があり、将来性が見込まれる企業として投資家に注目されています。以前は、企業が環境問題や社会問題に取り組むことはコストがかかり、経済的な犠牲が大きいと考えられていました。
しかし、現在は環境ビジネスこそ、イノベーションの創出や地域の新たな雇用を生み出すなど、長期的な経済リターンがあることがわかっています。環境ビジネスの将来性の高さに、今後もますます市場や投資が拡大することは間違いありません。
4. 世界や日本の国際イニシアチブ加盟企業事例
ファイザー株式会社
アメリカの世界有数の製薬会社であるファイザー社はSBTに取り組み承認を得ている企業です。また医薬品企業として初のサステナビリティボンドを発行しました。この収益により、効率的なエネルギー活用や環境保全や世界の公衆衛生への支援を行い、そのインパクトによりさらなる気候変動対策へと繋げる長期目標を掲げています。
コカ・コーラHBC
コカ・コーラもいちはやくサプライチェーンの温室効果ガス削減に取り組んでいる企業です。SBTの承認を得ており、グローバルビジョン「World Without Waste(廃棄物ゼロ社会)」に基づき、プラスチック資源の循環活用を推進しています。
リコー
リコーグループは2017年に日本企業として初めてRE100に参加しました。また脱炭素目標をSBTで認定取得しています。さらにはこれまで掲げていた2030年度までの環境目標を見直し、事業に使用する再生可能エネルギーへの比率を30%から50%にまで引き上げています。ステークホルダーにおいても積極的な脱炭素化商品を提供しています。
出典:リコーグループ「TCFDフレームワークに基づく情報開示」
東急不動産
東急不動産は2019年に不動産業で初めてRE100に加盟しました。再生可能エネルギー事業を積極的に推し進めており、全国50か所以上で太陽光、風力の発電事業を行っています。2050年には事業活動におけるエネルギーをすべて再エネにするという目標を、さらに2025年に前倒しし、実現にむけて企業努力を展開しています。
5. まとめ:国際イニシアチブに取り組むことで企業の環境価値を高めよう!
国際イニシアチブについてと環境問題に果敢に取り組む企業が、なぜESG投資家に注目されるのかを解説しました。環境ビジネスは、もはや経済界においてはリスクを伴う分野ではなく、新たな可能性を秘めた将来性のある市場です。企業が積極的に国際イニシアチブを導入し、企業の環境価値を高めることには大きなメリットがあります。
今後ESG投資はますます拡大することは間違いありません。国際イニシアチブに積極的に参加し、企業の環境価値をぜひ高めてみてはいかがでしょうか。