COPとは何か?COPの歴史についてわかりやすく解説!

COPについてご存知でしょうか。一般的に、COPは「気候変動枠組条約」の参加国が年に1回集まって行われる会議のことを意味し、2021年のグラスゴー会議で26回目を迎えました。

COPでの合意は、国際的な取り決めとして実行され、日本の企業も影響を受けます。今回は、COPの歴史の中で特に重要なCOP3、COP15、COP21と最新のCOPであるCOP26についてまとめます。

目次

  1. COPとは何か

  2. 京都議定書を採択したCOP3(京都会議)

  3. 先進国と途上国が対立したCOP15(コペンハーゲン会議)

  4. パリ協定が結ばれたCOP21(パリ会議)

  5. 最新のCOP26の内容(グラスゴー会議)

  6. まとめ:COPの歴史やパリ協定を理解し、脱炭素経営に繋げよう!

1. COPとは何か

COPとは、「締約国会議(Conference of the Parties)」の略称で、「気候変動枠組条約」の加盟国が、地球温暖化に対する具体的政策を定期的に議論する会合を指します。

出典:環境省「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)・京都議定書締約国会合(CMP)・パリ協定締約国会合(CMA)」

(1)地球サミットの開催

1992年6月3日から14日にかけて、ブラジルのリオデジャネイロで「環境と開発に関する国連会議」が開かれました。この会議には172の政府の代表が参加し、NGOからも2,4000人参加するという大規模な国際会議です。

のちに「地球サミット」とよばれるこの会議で、持続可能な開発を目指すリオ宣言や21世紀に向けての環境保全計画であるアジェンダ21、森林保全などに関する原則声明などが採択されました。

地球サミットの中で結ばれた諸条約の一つが「気候変動枠組条約」です。そして、条約にもとづき毎年COP(締約国会議)を開催することが決まりました。

出典:環境省「平成5年版環境白書 第3章第3節

(2)気候変動に関する国際連合枠組条約の締結

「地球サミット」では、環境に関する条約が結ばれましたが、その一つが「気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約:UNBFCCC)」です。地球温暖化防止条約ともよばれます。

この条約では、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を1990年の水準に戻すことを目標とし、各国に具体的な施策や温室効果ガスの排出量を締約国会議(COP)に報告することを義務付けました。

出典:環境省:「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)・京都議定書締約国会合(CMP)・パリ協定締約国会合(CMA)」

2. 京都議定書を採択したCOP3(京都会議)

1997年、3回目の締約国会議となった京都会議では、これまでのCOPよりも踏み込んだ内容が決定されました。

(1)京都議定書の内容

「京都議定書」とは、COP3(京都会議)で決まり、各国が合意した国際的合意です。主な内容は以下の通りです。

  • 先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定

  • 国際的に協調して、目標を達成するための仕組みを導入(排出量取引、クリーン開発メカニズム、共同実施など)

  • 途上国に対しては、数値目標などの新たな義務は導入せず

出典:環境省「京都議定書の概要」

また、京都議定書では削減するべき温室効果ガスとして、二酸化炭素やメタン、一酸化炭素など6種類を上げ、2008年から2012年までの間にEUで8%、アメリカで7%、日本で6%、先進国全体で5%の削減を掲げました。

出典:環境省「京都議定書の概要」

(2)京都議定書の問題点

京都議定書では、先進国に数値目標を義務付ける一方、発展途上国に対しては数値目標などの新たな義務は導入しませんでした。

そのため、中国やインドといった二酸化炭素排出量が多い国は数値目標などの拘束を受けず、不公平であるという批判が高まります。

2016年の温室効果ガス排出シェアを国別で見ると、中国が23.2%で1位、米国が13.6%で2位、EUが10.0%で3位、インドが5.1%でロシアと並んで同率4位。なお、日本の温室効果ガス排出量シェアは2.7%で8位。

出典:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?」(2017/8/17)

資源エネルギー庁の資料で明らかなとおり、中国やインド、インドネシア、ブラジルといった京都議定書で拘束されていなかった国々は、二酸化炭素排出量で日本を大きく上回っています。

2001年、アメリカで共和党のブッシュ政権が成立すると、ブッシュ政権は京都議定書がアメリカの経済成長を阻害することや、発展途上国の目標が定められていないことなどを理由として京都議定書からの離脱を表明しました。

3. 先進国と途上国が対立したCOP15(コペンハーゲン会議)

京都議定書の発効後も、先進国と発展途上国の対立が続きました。2009年にデンマークのコペンハーゲンで開かれたCOP15でも、両者の対立が表面化します。

(1)コペンハーゲン合意の内容

COP15でも、先進国と発展途上国の主張には大きな隔たりがありました。会議には190の国と地域の代表が参加していましたが、事務レベル協議では折り合いが付きません。

そのため、閣僚級協議や首脳級協議などで協議を重ね、ようやく「コペンハーゲン合意」の採択に持ち込むことができました。コペンハーゲン合意の内容は以下の通りです。

  • 産業革命以前からの気温上昇を2℃以内に抑えるため、地球全体の排出量の大幅削減の必要性に同意する

  • 先進国は2010年1月末までに削減目標を提出する

  • 発展途上国は削減行動の一部を2年ごとに報告する

  • 先進国は、発展途上国に資金援助を約束する

出典:環境省「「コペンハーゲン合意」の概要

(2)コペンハーゲン合意の問題点

対立する各国の利害を調整しようと努力したコペンハーゲン合意でしたが、問題点も含むものでした。

その最たるものは、アメリカと中国がCOP15やコペンハーゲン合意に参加せず、参加した日本やEUなどの基準が厳しくなったにとどまったことです。結局、先進国と発展途上国の格差やアメリカの不参加といった問題は、のちのCOPの課題となります。

4. パリ協定が結ばれたCOP21(パリ会議)

2015年、パリでCOP21(パリ会議)が開かれました。この会議では京都議定書にかわる2020年以降の新たな枠組み作りが話し合われました。

(1)パリ協定の内容

パリ会議で決まった内容は、パリ協定といいます。パリ協定の主な内容は以下の通りです。

  • 世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること

  • 主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること

  • 全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し,レビューを受けること

  • 適応の長期目標の設定,各国の適応計画プロセスや行動の実施,適応報告書の提出と定期的更新

  • イノベーションの重要性の位置付け

  • 5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)

  • 先進国による資金の提供。これに加えて,途上国も自主的に資金を提供すること

  • 二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用

出典:外務省「2020年以降の枠組み:パリ協定

パリ協定は、それまでの合意や協定に比べて画期的だとされます。その理由は、先進国だけではなく全ての参加国が排出削減の努力をすることに合意したからです。

出典:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?

(2)各国の削減目標

パリ協定の合意を受け、日本政府は中期目標を策定しました。

日本と世界の温室効果ガス削減目標

出典:資源エネルギー庁「今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?」

日本政府は、2030年までに2013年度比で26%の二酸化炭素削減を目標としました。一見、2030年までに1990年比で40%削減をあげているEUや、2025年までに2005年比で26〜28%削減をあげているアメリカと比べると、消極的にみられるかもしれません。

しかし、各国の目標を2013年比で比較すると、日本の目標はかなり高いものであることがわかります。こうした野心的な目標を達成するため、日本政府はカーボンニュートラル宣言をするなど、積極的に低炭素社会実現のために動いています。

5. 最新のCOP26で決まったこと(グラスゴー会議)

2021年11月13日、イギリスのグラスゴーで開かれたCOP26は、グラスゴー合意を採択して閉幕しました。グラスゴー合意の内容は以下の通りです。

  • 2100年の世界平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃以内に抑える

  • 石炭火力発電は、段階的に削減

  • すべての国は排出目標を再検討し、強化する

  • パリ協定の実施指針(ルールブック)に合意する

まず、2100年までの数値目標は2度から1.5℃にすることで、より厳しい目標に偏光されました。次に、石炭火力発電はインドなどの反対により「段階的廃止」から「段階的削減」に文言が改められました。

また、排出目標の再検討や、排出権取引に関わるパリ協定第6条の市場メカニズムについて各国が合意したため、ルールブック作成が現実のものとなります。

出典:日本貿易振興機構「「グラスゴー気候合意」採択しCOP26閉幕、石炭の段階的削減へ」(2021/11/16)

6. まとめ:COPの歴史やパリ協定を理解し、脱炭素経営に繋げよう!

1992年の地球サミット以降、国際社会は「持続可能な発展」について、何度も話し合いを重ねてきました。そして、京都議定書やパリ協定といった国際合意が積み上げられます。気候変動枠組条約に参加する国々は、今まで以上に脱炭素社会実現に向けた取り組みを迫られるでしょう。

こうした動きは、もはや止めようがないところまで来ています。政治レベルでの活動にとどまらず、民間企業においても脱炭素を推進することが求められます。

それならば、中小企業も脱炭素への取り組みを企業のコストと考えるのではなく、新たなビジネスチャンスと考え、積極的に取り組むべきではないでしょうか。

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