LNG価格高騰!その原因と世界の状況は?

現在、世界的にLNGの価格が高騰を続けており、それによりエネルギー産業の分野で大きな変革が求められています。ここではそもそもLNGとは何か、またどのように利用されているのかという点から、価格高騰の原因とそれによる影響について解説していきます。エネルギー起源となる原料の高騰は様々な企業の分野にとっても大きな影響があり、これからの企業経営にとっても重要な問題といえるでしょう。LNGの価格高騰についてしっかり理解しておきましょう。

目次

  1. LNGとは?世界の一次エネルギーの消費状況

  2. 昨年の10倍!LNG価格高騰の原因とは?

  3. 日本の電力は大丈夫?LNGの価格高騰から考える日本の未来は

  4. 【まとめ】LNGの価格高騰への対策は再生可能エネルギーへの転換!

1.LNGとは?世界の一次エネルギーの消費状況

では、LNGとはどのようなものか、またどのように利用されているのか説明します。

LNGとは

LNGは「液化天然ガス(Liquefied Natural Gas)」の略でメタンを主成分とした天然ガスを-162℃に冷却した液体です。超低温で無色・透明となっており、においもほとんどありません。日本では1969年のアメリカからの導入に始まり、東南アジア、中東からの輸入も行われるようになり、一次エネルギー国内供給に占める割合は2014年に24.5%まで達し、2018年でも22.8%となりその量は8,055万トンで、世界のLNG貿易の26%を日本の輸入が占め、世界1位のLNG輸入国となっています。

出典:経済産業省資源エネルギー庁『化石エネルギーの動向』

LNGを利用するメリット

LNGの利用には次のようなメリットがあります。

  • 火力発電原料の中でもっともCO2の排出が少ない(石炭、石油のCO2排出量と比較)

火力発電の燃料は主にLNG(液化天然ガス)、石油、石炭の3種類となりますが、その中でLNGは燃焼時のCO2排出量がもっとも少ない燃料となります。

発電方法別のCO2排出量

出典:環境省『火力発電について』(2012.2)

発電電力量あたりのCO2排出量は石炭の約60%、石油と比べても約80%となっています。また、硫黄酸化物(SOX)の排出ゼロ、窒素酸化物(NOX)の排出量も抑えることができます。

  • 安定的に入手できる

天然ガスは埋蔵量が豊富で世界各地で産出されていますので、安定的に入手できる燃料として利用されています。日本ではオーストラリアからの輸入が36.6%と最も多くなっています。

LNGの輸入先

出典:経済産業省資源エネルギー庁『化石エネルギーの動向』

  • 輸送・保管の効率アップ

天然ガスは液化により体積を1/600程度にでき、日本のように周囲を海に囲まれた国ではパイプラインを引くことが困難のため、輸送や保管の効率アップに利用されています。輸送には船が使われ、1隻のLNG船の容量は6~7万トンでおおよそ一般世帯5,000万世帯が1日で使用する電気の発電量に相当します。運ばれてきたLNGは、常温の海水で温めて気化させることで燃料として利用されます。

LNGの割合が25%!世界のエネルギー消費

発電のエネルギー起源として利用されているLNGですが、一次エネルギーの中での消費割合はどのようになっているのでしょうか。ここからは世界と日本の一次エネルギーの消費割合について紹介します。

  • 世界の一次エネルギー(再生可能エネルギー以外)消費量は減少傾向

世界の一次エネルギーの消費量は2020年度で前年比4.5%の減少となり、第二次世界大戦以降で最大の減少幅となりました。2020年のLNGの消費量も前年比で2.3%減少しており、LNGの一次エネルギー消費の占める割合は約25%となっています。

2020年の世界の一次エネルギー消費

出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2021.10.26)

日本においては、1980年以降、一次エネルギーでのLNGの供給量は増え続けており、2018年には22.9%と増加を続けています。

年別のエネルギー割合

出典:経済産業省資源エネルギー庁『エネルギー消費の動向』

しかし、現在、世界規模で化石燃料による発電から再生可能エネルギーへの転換が進められています。世界の再生可能エネルギー発電設備の容量は2015年に約2,000GWまで増加し、最も容量の大きい電源となり、その後も年間約180GWのペースで増加を続けています。

世界全体の発電設備容量

出典:経済産業省資源エネルギー庁『国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案』(2020.9)(p3)

このような動きによって、今後、日本においてもLNGの取り扱い量は減少していくと考えられます。

2.昨年の10倍!LNGの価格高騰の原因とは?

再生可能エネルギーが注目されている一次エネルギーですが、まだ主力は化石燃料といえる現在、2021年秋に「LNGの価格高騰」が問題となっています。その背景とはどのようなものか原因について考えてみましょう。

LNGの価格が昨年の10倍に!その原因とは?

2021年に入り、LNGの価格は世界的に上昇を続けています。特に夏以降、アジアの市場では急激に上がり始め、10月には昨年の同時期と比べ10倍を超える水準に達しています。

LNG価格の推移

出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2021.10.26)(p11)

  • コロナ禍からの経済回復による電力需要のひっ迫

LNG価格高騰の背景には、2021年の夏以降、コロナ対策のために行われた規制の緩和による経済回復の影響で、世界的に電力需要が増加する中、LNGや石炭などの発電用燃料の供給が不足し、電力需要がひっ迫したことがあると考えられます。

LNGの需要は中国、東南アジア、南アジアで大きく伸長し、中国のLNG輸入量は2021年に8,120万トンに達し、日本の7,520万トンを抜き世界第1位のLNG輸入国となる見込みです。さらにアジアの需要は2025年に3億3,900万トン、2030年には4億5,300万トンと、年4%の上昇を続けると予測されています。

アジアへのLNG供給地域の予想

出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2021.10.26)(p15)

  • 欧州での地下ガス貯蔵量の減少

欧州は再生可能エネルギーへの転換がすすんでおり、石炭からガス、そして風力・太陽光へと緩やかに移行しています。その段階でアジアの需要拡大も重なりLNGの需要が増えている中、寒波により地下ガスの貯蓄量が例年を大きく低下し、2021年9月にはEU全体のガス貯蔵量は貯蔵容量の75%と昨年比でも95%と低下しています。

欧州地下ガス貯蔵在庫

出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2021.10.26)(p26)

この供給不足と需要の拡大により、LNGの価格が高騰しているのです。

3.日本の電力は大丈夫?LNGの価格高騰から考える日本の未来は

このLNG価格の高騰が日本に及ぼす影響はどんなことが考えられるのでしょうか。政府の対応も合わせご紹介します。

日本に対するLNG高騰の影響は限定的

日本の電力会社は長期契約により燃料の調達を行っているため、燃料のスポット価格(短期の1回限りでの取引価格)の上昇が電気料金に及ぼす影響は限定的とみられています。現在もLNGの輸入価格はスポット価格よりも緩やかに変動し、電気価格の上昇も大きくはみられません。

LNGのスポット価格・輸入価格・電気料金の推移

出典:経済産業省資源エネルギー庁『燃料及び電力を取り巻く最近の動向について』(2021.10.26)(p37)

しかし、化石燃料の中でCO2の排出量の少ないLNGですが、日本は2050年のカーボンニュートラルへ向け、再生可能エネルギーの主電源化を目指しています。石炭・石油からLNGへ転換が進んでいますが、将来的な再生可能エネルギーとの間で今後LNGはどのような立ち位置となるのでしょうか。

LNGに対する政府の方策は

再生可能エネルギーへの転換を図る日本ですが、現在も一次エネルギーの主力は化石燃料で、電源構成の比率は2018年で化石燃料が77%、そのうちLNGで38.3%を占めています。

日本の電源構成の推移

出典:経済産業省『2020‐日本が抱えているエネルギー問題(前編)』(2020.11.18)

政府ではLNGの安定供給に向けて自主開発比率をあげていく方策に取り組んでいます。2030年に自主開発比率を40%以上とする目標をエネルギー基本計画に掲げ、官民一体の取り組みの結果、2025年には40%を達成する見込みとなっています。しかし、2030年以降は需要の減少が進み、企業の開発投資の冷え込みが予想され、このままでは自主開発比率が急激に下がることが懸念されています。

自主開発比率の実績と今後の推移

出典:経済産業省『2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性(案)』(2021.2.15)(p9)

このような状況の中、安定したLNGの供給を行うため、LNG市場の取引の活性化や、日本企業の海外取引への関与等によりビジネスチャンスの拡大を図ることが重要と考え、日本企業の「外・外取引」を含むLNG取り扱い量について2030年に1億トンを達成する目標を新たに設定しています。

また、経済産業省では、LNGをトランジションエナジーと位置づけ、今後のLNGの重要性や、よりクリーンに利用するための議論を行うため「LNG産消会議」を開催しており、2020年10月には第10回目が開催されています。

出典:経済産業省『第10回LNG産消会議を開催しました』(2020.10.6)

カーボンニュートラルに向けたエネルギー産業の未来

  • 再生可能エネルギーへの転換

脱炭素社会に向けて日本でも再生可能エネルギーへの転換が進められています。政府は2050年のカーボンニュートラル達成のため様々な政策をおこなっており、その中でも一次エネルギーのCO2排出削減は大きな問題です。前述した通り、電力の再生可能エネルギー利用は拡大を続けており、LNGの需要は減少する見込みとなっています。

出典:経済産業省『2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性(案)』(2021.2.15)

4.【まとめ】LNGの価格高騰への対策は再生可能エネルギーへの転換!

世界のエネルギーは再生可能エネルギーにシフトが進み、CO2の排出につながる化石燃料の需要は減少しつつあります。その中でもLNGは比較的CO2の排出を抑えることができるため、この転換期に非常に重要な役割を持っています。現在の価格高騰への対策を進め、日本でのLNGの安定供給を図るとともに、今後の再生可能エネルギーへの転換を推進することが必要となるでしょう。

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