未来のファッションについて考える!ファストファッションと環境問題の関係とは?
- 2021年12月08日
- 省エネ
地球温暖化の影響で環境問題が注目される中、企業も温室効果ガスの排出削減や、リサイクル活動、省エネ対策などの取り組みが求められています。ここではファストファッション化が進んでいる繊維産業と環境問題について解説します。
流行の先端を走るファッション業界が環境問題についてどのように取り組んでいくのかは今後の経営の参考にもなると思いますので、他業種の方も注目していきましょう。
目次
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ファストファッション化が進む!日本の繊維産業の今
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環境問題に大きく影響?ファストファッション化による問題とは
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これからの未来に向けて!ファッション業界の取り組み
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【まとめ】環境問題への挑戦!ファッションはファストからサスティナブルへ
1.ファストファッション化が進む!日本の繊維産業の今
ファストファッションとは?
ファストファッションとは、2000年代中ごろから呼ばれるようになった造語で、早くて安いという「ファストフード」になぞらえて誕生しました。2009年の流行語大賞にもノミネートされ、「最新の流行を取り入れながら低価格に抑えた衣料を短いサイクルで大量生産・大量販売する」ブランドやビジネスモデルのことになります。
有名なブランドとしては日本の「ユニクロ」・「しまむら」や、アメリカの「ギャップ」、スウェーデンの「H&M」、スペインの「ZARA」などがあげられます。
日本の繊維産業の現在
日本の繊維産業は2017年で全製造業のうち、5.7%の事業所数、2.8%の従業員数を占める産業となっていますが、国内生産は減少傾向となっており、2017年には1991年比で1/4に減少しています。対照的に輸入浸透率は増加を続け、2018年には97.7%に達しています。
出典:経済産業省『繊維産業の現状と経済産業省の取組』(2020.1.17)(p4)
また、国内のアパレル市場規模は、バブル期の1990年での14.7兆円から2017年には10.4兆円まで減少している一方、供給量は20億点から40億点近くまで倍増しており、購入単価、輸入単価とも1991年の6割前後に下落しています。
出典:経済産業省『繊維産業の現状と経済産業省の取組』(2020.1.17)(p5)
このことから日本でも繊維・ファッションの業界では海外生産の低価格商品の販売・購入が増加しており、「ファストファッション化」が進んでいると言えるでしょう。
2.環境問題に大きく影響?ファストファッション化による問題とは
ファッション性が高く、おしゃれに着こなすことができる衣料が安く購入できるというのは一見いいことのように思えますが、様々な問題も発生しています。では、このファストファッションの増加に伴い、懸念される問題とはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは環境問題について解説していきます。
大量生産によるCO2排出量の増加と水・農薬の消費
製品の製造にはたくさんの工程があり、原料の調達から製品の配送まで様々なコストがかかります。この工程ひとつひとつにエネルギーが消費され、その代償として多くのCO2が排出されます。
衣料品で一般的に利用されるナイロン・ポリエステル・アクリルなどの合成繊維は原料が石油であり、採取・精製過程でも電力が使用され、化石燃料による発電によりCO2が排出されます。これは服1着あたりつき25.5㎏排出されおり、500mlのペットボトル約255本製造分に相当します。
また原料となる綿花の生産に伴う水の消費量は1着あたり2,300ℓで浴槽約11杯分にもなります。この点だけでも環境に対する負荷は大きいものと言えます。このように綿花の栽培で使われる大量の農薬による土壌汚染も問題となっています。
大量廃棄によるCO2排出量の増加
ほかにも、衣料の低価格化が廃棄量の増加の原因としてあげられます。環境省の調べでは一人あたりの年間平均衣料の消費・利用状況は購入枚数が約18枚に対して、手放す枚数は約12枚、そして一年間一回も着られていないものは25枚にものぼります。
<一人あたりの(年間平均)の衣服消費・利用状況>
これにより、処分される衣料のうちごみとして廃棄される割合は68%になり、そのうちの95%は焼却・埋め立て処理となっています。
水質汚染
衣類の製造過程では、水の大量使用とともに有害化学物質が使用され、その一部は河川に放出されることになります。特に生産量の多い中国では工場から排出される有害化学物質の汚染が深刻化しています。
2001年の中国水質測定結果によるとモニタリング地点の44%が最低ランクの水質基準を満たしておらず、特に汚染のひどい海河・准河・遼河の3水系では約60%が最低ランク以下となっています。
マイクロファイバーによる海洋汚染
衣料に利用される繊維はポリエステル・アクリルといった合成繊維の割合が増えていますが、この合成繊維から発生するマイクロファイバーが原因の海洋汚染も問題となっています。この海洋汚染は南極・北極でも観測が確認され、世界規模で広がっています。
出典:環境省『海洋プラスチック問題について』(2018.7)(p2)
このように繊維業界のファストファッション化は地球の環境問題に大きく係わっているのです。
3.これからの未来に向けて!ファッション業界の取り組み
ファッション業界ではこのような問題を受け、各企業が新しい取り組みにチャレンジしています。今後の業界がどのような方向に向かっているのか、また各企業の取り組みについての事例をご紹介します。
ファストファッションからサスティナブルファッションへ!
環境省ではこのファッションと環境の問題についての対策として「サスティナブルファッション」の推進をすすめています。サスティナブルファッションとは「サスティナブル=持続可能な」ファッションという意味で、生地の生産から流通まで自然環境や、社会に配慮した取り組みを行う企業形態のことです。
アンケートによるとサスティナブルファッションについて関心があるとの回答は約60%となり、ファッション業界においても環境問題への取り組みは重要となっています。
サスティナブルへの挑戦!ファッション企業の取り組み
ここでは実際にサスティナブルファッションに取り組む企業をご紹介します。環境問題への取り組みを特色として取り入れている企業の事例とはどのようなものなのでしょうか。
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衣類ライフサイクルの長寿化<株式会社ゴールドウイン>
長く着られる服作りとしてキッズウェアでは成長に合わせ袖丈、裾丈を調整できるようにし、通常より1年長く着られるようにしています。またマタニティウェアでは妊娠中、産後の体型変化に合わせシルエット変更が可能なオーバーオールなど、子供の成長後まで長期間着用できる製品を設計しています。
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リペアによる顧客接点の拡大と新たな価値作り<株式会社ユナイテッドアローズ>
リペアした衣類、雑貨や店舗で使用していた家具、什器の販売や、修理依頼に対応するチームの常駐などリペアを通して来店動機を訴求し、新たな顧客との接点の開拓を進めています。
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マイクロプラスチックの排出削減<帝人フロンティア株式会社>
合成素材のフリースや裏起毛素材は特に繊維くずの排出が多く、洗濯時に繊維脱落量が増えます。こちらでは独自の生地加工技術によって繊維脱落量の少ない生地を開発し、マイクロプラスチックによる海洋汚染の改善に取り組んでいます。
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洋服のシェアリングサービス<株式会社エアークローゼット>
プロのスタイリストがコーディネートした洋服を月額制で借りられるサービスを展開しています。洋服のシェアリングで無駄に捨てられることなく、大切に利用が可能でブランド各社と消費者の新たな出会いも誘発させることができます。
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大量廃棄問題の解決に向けた取り組み<株式会社アダストリア>
売上や粗利に応じて仕入れ、在庫を調整するOTB(open to buy)管理の徹底、在庫のアップサイクル、二次流通への再販を実施し、大量廃棄問題に取り組み、残在庫の焼却廃棄のゼロを達成しています。
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セールを行わず商品サイクルの長期化を実践<株式会社ミナ>
過去販売された商品を「アーカイブ」として販売し、過去に発表した柄も定番として活用する等商品サイクルの長期化を図っています。生産量を需要予測の8割程度にし、過去コレクションをミックスコーディネートしたファッションショーの開催を行うなど大量生産を避け、余剰在庫の最小化に取り組んでいます。
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オーガニックコットンの普及<豊島株式会社>
世界中の綿花のうち、1%しかないオーガニックコットンの割合を10%にすることを目標に、オーガニックコットンの普及に取り組んでいます。昨年のオーガニックコットンの取引量は前年の45%増で、独自で販売しているオーガニックコットンブランドの「TRUECOTTON」の取引量は2倍に増加しています。
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ペットボトルを原料とした繊維素材の製造<東レ株式会社>
回収ペットボトルを分別・粉砕・洗浄処理を行い、溶解・紡糸することでリサイクル繊維を製造しています。独自のフィルタリング技術と高度な洗浄技術で多様な繊維断面や細さを実現することで幅広い衣類への活用を実現しています。
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自治体と連携したリサイクルシステムの構築<株式会社良品計画>
自治体と連携し、古着回収ボックスの設置、リサイクル関連イベントの実施し、リユース・リサイクルの活動に力を入れています。2020年12月にオープンした「無印良品 東京有明」では江東区と連携し、オープン1.5ヶ月で約1.6トンの回収を達成しています。
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繊維くず・使用済み衣料の再生<伊藤忠商事株式会社>
繊維くずや使用済みの衣料を原料として新しい衣料の製造を行っています。回収⇒製糸⇒縫製⇒販売⇒回収の循環システムを構築し、サーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
出典:環境省『令和2年度ファッションと環境に関する調査業務』(2020.3)
4.【まとめ】環境問題への挑戦!ファッションはファストからサスティナブルへ
流行のファッションを安価で手に入れられるファストファッションは大量生産・大量廃棄により、地球環境に大きな負担を強いています。環境問題が深刻化する現在において、私たちはファッションについてもう一度考える必要があるでしょう。
業界ではすでに新しい技術や新しい経営方針に挑戦している企業も多くなっています。どの業界もこれからの時代を見据えた企業経営が重要といえるのではないでしょうか。