カーボンニュートラルの必要性とは?日本企業の取り組み事例とともに解説

日本の企業はどのようにカーボンニュートラルに取り組むべきかお悩みではないでしょうか。各国は今サステナブルな世界を目指し行動しています。欧米をはじめとする多くの国がカーボンニュートラル実現に向けて動き出しています。そこで、我々日本はどのように行動していくべきか、この世界の流れに置いて行かれないよう知識をつけなければならない時代に突入しています。また、この流れは大きなビジネスチャンスととらえることもできるのです。ここでは、法人の皆さまが知っておくべきカーボンニュートラルの概要とその必要性、日本企業の取り組みなどについて紹介していきます。

目次

  1. 世界で推進!カーボンニュートラルに関する基礎知識

  2. カーボンニュートラルはなぜ必要?世界で今起きていること

  3. 日本の企業はどのように取り組む?

  4. まとめ:カーボンニュートラルへの理解を深め、企業での取り組みを検討しよう!

1. 世界で推進!カーボンニュートラルに関する基礎知識

カーボンニュートラルという言葉をよく聞くようになりましたが、そもそもカーボンニュートラルとはどのようなものなのでしょうか。ここではカーボンニュートラルの概要や、日本を含む世界での取り組み状況についてご紹介します。

そもそもカーボンニュートラルとは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量が全体としてゼロであることを指す言葉です。企業努力などにより、できるかぎり排出量を削減しどうしても排出されてしまう分を吸収や除去により全体としてゼロにするというのが基本的な考え方です。

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)

世界のカーボンニュートラルに向けた動向

日本は、2020年10月に菅首相が2050年までのカーボンニュートラル社会実現を宣言しています。資源エネルギー庁が2020年12月に公表した資料によると、日本を含む123ヶ国と1地域が2050年までのカーボンニュートラルを宣言しています。

世界最大のCO2排出国である中国は2060年までのカーボンニュートラルを宣言しています。カーボンニュートラル実現のために、各国は独自に中間目標を設定しています。

  • 日本:2030年までに2013年度比で26%削減

  • EU:2030年までに1990年度比で55%削減

  • 中国:2030年までに排出量を削減に転じさせる

出典:資源エネルギー庁『資料3 2050年カーボンニュートラルを巡る国内外の動き』(2020年12月)(p.5.6)

2. カーボンニュートラルはなぜ必要?世界で今起きていること

なぜ世界各国でカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでいるのでしょうか。カーボンニュートラルの実現が重要視されています。その背景にある、世界が抱える問題についてご紹介します。

なぜカーボンニュートラルの実現が重要視されているのか?

カーボンニュートラルの実現が重要視されている背景にあるのが、気温上昇が引き起こしている様々な深刻な環境問題です。気象庁のデータによると、1891年の統計開始以降、様々な変動を繰り返しながら世界の年平均気温は、100年あたり0.72℃の割合で上昇しています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は2021年8月に発表した報告書の中で、「人間が地球の気候を温暖化させてきたことに疑う余地がない」との見解を示しています。

気候変動による環境問題は、経済にも甚大な損失をもたらしています。世界気象機関(WMO)は2021年8月に、世界の気象災害は過去50年間で約5倍に増加し、3.6兆ドルの経済損失をもたらしたと発表しています。

出典:気象庁『世界の年平均気温』

出典:BBC NEWS『「絶滅の瀬戸際」 気候変動の影響受けやすい国々が警告、IPCC報告書受け』(2021/8/10)

出典:BBC NEWS『世界の気象災害、50年間で5倍に 経済損失は3.6兆ドル=世界気象機関』(2021/9/2)

気温上昇により世界で今起きていること

地球温暖化により、世界では様々な深刻化する環境問題が起きています。自然災害は企業の経済にも深刻なダメージを与えます。

[1]洪水・豪雨

世界各地で近年多発している洪水や豪雨は、多くの人命を奪い、経済にも甚大な損失をもたらしています。2018年7月に発生した西日本を中心とする豪雨では、237名の尊い命が奪われ、1兆1,580億円の被害をもたらしています。

出典:環境省:第1章 気候変動問題をはじめとした地球環境の危機(p.6)

[2]山火事

気温上昇により、世界のあちこちで山火事が発生しています。2021年8月に過去最高の熱波に見舞われ、最高気温が45℃を記録したギリシャで大規模な山火事が起き、2,000人以上が避難を余儀なくされています。

出典:BBC NEWS『ギリシャで山火事続く、過去30年で最大の熱波』(2021/8/9)

3. 日本の企業はどのように取り組む?

日本の企業の間でも、カーボンニュートラルに取り組む企業が増加しています。ここでは、企業がカーボンニュートラルを実現させるためにできることなどについてご紹介します。

カーボンニュートラル宣言している日本企業の数はどのくらい?

2021年8月24日時点における、RE100に参加している日本の企業数は59社で、第1位のアメリカ79社に次ぐ第2位です。

RE100とは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えることを宣言する国際的な枠組みです。電力を100%再生可能エネルギーにするということは、企業内におけるカーボンニュートラルの実現を意味しています。

RE100は大企業でなければ参加することが難しいため、2019年8月に中小企業版とも呼ばれる再エネ100宣言 RE Actionが日本において発足しています。再エネ100宣言 RE Actionに企業が参加する要件は3つあります。

  • 遅くとも2050年までに使用電力を100%再生可能エネルギーにすることを目標にし、対外的に公表すること。

  • 再生可能エネルギー推進に関する政策にエンゲージメントを実施すること。

  • 消費電力量と再生可能エネルギー率等の進捗を毎年報告すること。

2021年9月時点で、177団体が再エネ100宣言 RE Actionに参加しています。

出典:再エネ100宣言 RE Action『再エネ100宣言 RE Actionについて』

出典:環境省『RE100に参加している国別企業数』(2021/8/24)(p.25)

日本の企業がカーボンニュートラルを目指できること

企業がカーボンニュートラルを実現させるためにできることは、使用電力を再生可能エネルギーに切り替えることです。企業が再生可能エネルギーを調達する方法は大きく4通りあります。

  • 再生可能エネルギー設備の建設

  • 小売電気事業者から購入する

  • クレジットなど環境価値を証書で購入する

  • 発電事業への投資

出典:自然エネルギー財団『自然エネルギーの電力を増やす 企業・自治体向け電力調達ガイドブック 第2版』(2019年1月)(p.6)

4. まとめ:カーボンニュートラルへの理解を深め、企業での取り組みを検討しよう!

日本を含む世界各地で、国や自治体、企業が中心となりカーボンニュートラルを進めている背景には、気候変動による深刻な環境問題があります。温室効果ガス排出量の多くを占めるCO2排出量が多い企業の取り組みなくして、世界全体でカーボンニュートラルを実現させることは不可能です。カーボンニュートラルへの基本的な理解を深め、企業で何ができるか取り組みの検討につなげていただければと思います。

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