不動産の環境性能評価CASBEEとは?概要や活用事例を解説

不動産の環境性能評価制度であるCASBEEについて、わかりやすく解説します。現代社会においては、地球環境への配慮がさまざまな場面で求められます。建築物などについても、環境に優しいかどうかは今や重要なポイントです。それを明確に示してくれるのがCASBEEであり、不動産建築や都市計画などにおいて有効に活用されています。本記事ではCASBEEのコンセプトや概要について取り上げ、CASBEEに関連した企業事例もご紹介します。

目次

  1. CASBEEのコンセプト

  2. CASBEEの概要

  3. CASBEE認証に関わる企業事例

  4. まとめ:CASBEE認証を取得し、持続可能な家・街づくりを目指そう!

1.CASBEEのコンセプト

CASBEEは日本で開発された、環境性能を評価する仕組みです。CASBEEの基本的なコンセプトなどについて解説します。

CASBEEとは

CASBEE(キャスビー)とはComprehensive Assessment System for Built Environment Efficiencyの略で、日本語に訳すと「建築環境性能総合評価システム」となります。2001年に日本の国土交通省住宅局が主導した産官学共同プロジェクトによって開発され、以降継続的にメンテナンスやツールの追加が行われています。CASBEEは環境負荷の少なさ・省エネルギー・室内の快適性・景観への配慮などを総合的な環境性能として評価し、わかりやすく格付けすることをコンセプトとしています。評価結果イメージ

出典:国土交通省「住宅・建築物における省エネルギー対策」p11(2011/5)
出典:一般財団法人住宅・建築SDG's推進センター「CASBEEの概要」

CASBEE開発の背景

元々建物では、屋内の快適性のみが評価されていました。その後1960年代にはビル風や日照阻害など、建物外部に対する負の影響も考慮されるようになりました。さらに1990年代には地球環境問題が顕在化し、先進国において建物の環境性能評価手法が普及するようになりました。そうした手法においては建物そのものだけでなく、建設行為なども評価対象に含まれている点が重要です。一方で評価範囲が拡大したため、評価の領域が曖昧化するという課題もありました。こうした背景から、評価領域を明確にしつつ、サステナビリティの観点も含めて再構築されたのがCASBEEです。CASBEEにおいては、不動産の敷地境界や最高高さによって区切られた「仮想閉空間」が評価領域とされている点が特徴です。敷地境界によって区分される仮想閉空間

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「CASBEE開発の背景とコンセプト」

2.CASBEEの概要

CASBEEにはいくつかの種類がありますが、基本的な評価方法は共通しています。CASBEEの概要について解説します。

CASBEEの種類

CASBEEは当初の開発以降、評価対象のスケールに応じたツールの追加が何度も行われています。これらのツールを総称して「CASBEEファミリー」と言い、以下のようなラインアップとなっています。

住宅系

CASBEE戸建(新築) CASBEE戸建(既存) CASBEE住戸ユニット(新築)

建築系

CASBEE建築(新築) CASBEE建築(既存) CASBEE建築(改修) CASBEE不動産

街区系

CASBEE街区

都市系

CASBEE都市

オフィス系

CASBEEウェルネスオフィス

この他に文科省が開発した「CASBEE学校」・地方自治体が開発した「CASBEE自治体」なども、CASBEEファミリーに含まれています。

出典:一般財団法人住宅・建築SDG's推進センター「CASBEEの概要」

CASBEEによる評価方法

CASBEEには2つの評価分野と4つの評価対象があります。

評価分野

仮想閉空間内における建物ユーザーの生活アメニティ向上(Q:quality)・仮想閉空間の外部(公的環境)に達する環境負荷(L:load)

評価対象

エネルギー消費・資源循環・地域環境・室内環境

4つの評価対象にはさらに合計約80の小項目があります。これらの評価対象をQとLに区分してスコアリングし、Qを分子・Lを分母として算出したスコアがCASBEEの「BEE」(建築環境性能)です。BEEはC(0.5未満)・B-(0.5~1.0未満)・B+(1.0~1.5未満)・A(1.5~3.0未満)・S(3.0以上)の5段階にラベリングされ、Cは「劣っている」、Sは「大変優れている」と定義されています。

出典:一般財団法人住宅・建築SDG's推進センター「評価の仕組みと環境効率(BEE)」

地方自治体によるCASBEEの活用

現在多くの自治体で、建築主などの自主的な環境配慮の取組促進や、環境性能に優れた建築物の普及などを目的として、新築・増改築の際のCASBEEによる評価結果の届け出義務付けや、CASBEEと連動した補助などインセンティブの付与を実施しています。CASBEEの地方自治体への届け出件数は、2004年に名古屋市で初めて導入されて以降、全国で21,000件を超えています。自治体において建築物の環境対策を進めるうえでCASBEE活用はメリットが大きく、またCASBEEの評価基準は自治体によってカスタマイズすることも可能なため、建築行政との親和性も期待できます。

出典:一般財団法人住宅・建築SDG's推進センター「自治体によるCASBEEの活用」
出典:一般財団法人建築環境・省エネルギー機構「CASBEE活用のおすすめ」p1-2 

3.CASBEE認証に関わる企業事例

CASBEEは不動産業界において、さまざまな取り組みに活用されています。日本企業におけるCASBEE認証に関わる事例をご紹介します。

積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は、財団法人建築環境・省エネルギー機構が2008年6月にCASBEEの公的認証を開始した際、その第一弾として自社が分譲する戸建て住宅においてCASBEEのSランクを取得しています。同社では2008年時点で約180名のCASBEE戸建評価員を有し自主評価の体制を構築していましたが、公的認証によってその信頼性を確認した形となりました。

出典:積水カウス株式会社「戸建住宅の総合的な環境性能を評価するCASBEE‐すまい(戸建)評価認証で最高ランクを取得」(2008/9/16)

東急リアル・エステート投資法人

東急リアル・エステート投資法人は、2024年1月~3月に運用資産のうち6物件においてCASBEE認証を取得したことを発表しました。6物件の内、4物件がSランク・2物件がAランクとなっています。これにより同社の保有するCASBEE認証取得物件は合計で17物件となりました。認証は外部の評価会社により行われています。同法人の保有物件における環境性能認証取得率は、CASBEE以外の環境性能評価手法も合わせて、面積ベースで75.9%とされています。

出典:東急リアル・エステート投資法人「CASBEE 不動産評価認証及び BELS 認証の取得に関するお知らせ」p1-2(2024/4/1)

株式会社奥村組

株式会社奥村組は、2023年10月に開設した「クロスイノベーションセンター」が、CASBEEウェルネスオフィスのSランクを認証取得した旨を発表しました。認証にあたっては、室内に多くの緑を配置した快適性・様々なタイプの会議室やリフレッシュルームを備えた利便性・高い耐震性や非常用発電能力などの安心安全性などが評価ポイントとなっています。

出典:株式会社奥村組「クロスイノベーションセンター 「CASBEE-ウェルネスオフィス認証」で最高位「Sランク」を取得」(2024/3/4)

4.まとめ:CASBEE認証を取得し、持続可能な家・街づくりを目指そう!

CASBEEは何事においてもサステナビリティを求められる現代において、不動産の環境性能が見える化できるツールです。CASBEEでは環境への優しさや快適性が明確にスコアやラベルで示されるので、地方自治体の建築行政における提出義務化や優遇措置付与をはじめ、さまざまな場面での活用が期待されます。また不動産業界でも、積極的にCASBEE認証をアピールするケースが見られます。自社が保有または関与する不動産について高レベルのCASBEE認証を取得し、環境への配慮と快適性を両立した持続可能な家や街づくりを目指しましょう。

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