欧州の排ガス規制「ユーロ 7(Euro 7)」とは?日本における検討状況も解説

EUにおける排ガスなどに対する規制「ユーロ7(Euro 7)」について、わかりやすく解説します!EUでは大気汚染への対策として自動車からの排出基準を設けており、ユーロ7(Euro 7)はその最新版となります。

従来の基準に比べて非常に厳しい内容となっているためEU内でも賛否があり、今後の動向が注目されます。本記事ではユーロ7(Euro 7)の概要、主な内容について取り上げます。また、日本国内におけるユーロ7同様の基準に関する検討状況についてもご紹介します。

目次

  1. 排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)の概要

  2. 排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)の主な内容

  3. 日本におけるユーロ7(Euro 7)同様の排ガス規制の検討

  4. まとめ:欧州の排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)について理解を深め、今後の動向に注目しよう!

1. 排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)とは

ユーロ7は、EU内で販売される自動車に関する規制の名称です。ユーロ7の概要について解説します。

欧州の排ガス規制 ユーロ7とは

ユーロ7とは車の型式承認に関する規則であり、車両からの汚染物質の排出を削減し、大気の質を改善することを目的としています。EUとして最初の規制となるユーロ1が始まったのは1992年であり、2014年のユーロ6まで段階的に条件が引き上げられていきました。

排気ガスとは自動車が燃料を燃焼させたときに発生するガスで、CO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)などの有害物質が含まれます。EUでは2050年までに有害物質のない環境を実現することを目指し、欧州委員会が自動車に対する排ガス規制 ユーロ7を議会へ提案することが採択されました。

出典:Europran Commision「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)
出典:日本自動車工業会「排気ガス規制の歴史」p010-011
出典:9県都市青空ネットワーク「自動車排出ガスに含まれる主な大気汚染物質」
出典:europran Commmision「Proposal for a Regulation on type-approval of motor vehicles with respect to their emissions and battery durability (Euro 7)>「REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL」p1

排ガス規制 ユーロ7登場の背景

道路交通は都市における大気汚染の、最大の原因と考えられています。2018年のEUにおけるNOxの排出のうち、39%以上は道路交通によるものであり、これによりEU28か国の約7万人が早死にすることになったと推定されています。

現行規制であるユーロ6と比較し、ユーロ7では乗用車およびバンからのNOx排出量は35%、バスおよびトラックからの排出量は56%削減されると、EU政府は試算しています。

出典:Europran Commision「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)

排ガス規制 ユーロ7における方針変更

ユーロ7は2022年11月に欧州委員会によって提案された後、2023年11月にNOxなどの排出規制を厳格化することが議決されましたが、導入は欧州委員会が提案した2025年よりも先送りすることとし、乗用車・バンでは2028年1月からの導入となりました。さらにトラックのNOx規制について、提案内容より緩和するべきだとする見解が出されました。ユーロ7は初期より自動車メーカーやEU内の一部の国によって、対応コストなどの課題から反対されており、成文化されても当初の計画より後退した内容になるものと見込まれています。

出典:REUTERS「EU排ガス新規制案「ユーロ7」後退へ、欧州議会が一部緩和や導入先送り方針」(2023/11/10)
出典:JETRO「EU、次期排ガス規制案「Euro 7」に政治合意、内容は欧州委案から後退」(2023/12/25)

2. 排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)の主な内容

ユーロ7の主な内容は排出ガス規制ですが、排出ガス以外の規制も盛り込まれています。ユーロ7の内容について解説します。

排出ガスに関する規制

ユーロ7では、路上排出ガス試験の対象となる運転条件の範囲が拡大され、たとえば最高45°Cの気温や、通勤用の短距離移動なども試験の対象に含まれるようになります。またトラックやバスなど大型車両から排出について、N2O(亜酸化窒素)の排出など、これまで規制されていなかった汚染物質の排出制限が設定されます。さらに規制の適合期間を、現行のユーロ6の2倍である走行距離20万kmおよび新車登録から10年間に延長するほか、当局が簡単な方法で排出量を管理できるように、車両内のセンサーで排出量を測定することも盛り込まれています。

出典:Europran Commision「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)

排出ガス以外の規制

排出ガス以外に、ブレーキからの粒子状物質とタイヤからのマイクロプラスチック排出を規制する点も、ユーロ7の特色です。この規制はガソリン車やディーゼル車だけでなく、電気自動車にも適用されます。またユーロ7では、電気自動車に搭載されるバッテリーの耐久性を規制し、バッテリー交換頻度やバッテリー原材料の使用削減を目指します。

出典:Europran Commision「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)

ユーロ7が排ガス規制として先進的である理由

ユーロ7はブレーキおよびタイヤなど、排出管以外からの排出物を規制する、世界初の意欲的な排出基準です。また排出ガスの基準についても、世界で最も厳しいレベルとなっています。

【乗用車の場合】


各国の規制

規制値(g/km)

NOx

(窒素酸化物)

HC

(炭化水素)

CO

(一酸化炭素)

PM

(粒子状物質)

ユーロ7

0.06

0.10

0.5

0.0045

日本(平成30年規制)

0.05

1.15

0.005

米国(Tire3)

NOx+NMOG 0.09

2.61

0.006または0.002

ユーロ7の成文化はこれからですが、EUで新車を販売する各自動車メーカーは導入開始に備え、対応する必要があります。

出典:Europran Commision「Commission proposes new Euro 7 standards to reduce pollutant emissions from vehicles and improve air quality」(2022/11/10)
出典:環境省「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十四次報告)参考資料」p49
出典:europran Commmision「Proposal for a Regulation on type-approval of motor vehicles with respect to their emissions and battery durability (Euro 7)>Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL」p1

3. 日本におけるユーロ7(Euro 7)同様の排ガス規制の検討状況

日本でも排ガス等は規制されています。日本におけるユーロ7同様の排ガス規制に関する検討状況について解説します。

微小粒子状物質等に関する対策

ユーロ7では、微小粒子の検出下限値を23nmから10nmへ引き下げ、規制を強化することが検討されています。日本においても、国際的な動向も踏まえた上で、必要性が認められた場合には同様に検出下限値の引き下げを検討する必要があると考えられています。

出典:環境省「第14次答申及び報告で示された今後の検討課題の現状について」p6(2021/10/11)

ブレーキ粉塵及びタイヤ粉塵に関する対策

ユーロ7では、ブレーキやタイヤから出る粉塵に対する規制が予定されています。日本においても今後、国内の大気環境に対するブレーキやタイヤの粉塵による影響を把握したうえで、同様の規制について検討する可能性があります。

出典:環境省「第14次答申及び報告で示された今後の検討課題の現状について」p12(2021/10/11)

燃料蒸発ガス低減対策

ユーロ7においては、駐車中の燃料蒸発ガスについての規制や給油時蒸発ガス対策技術(ORVR)の導入などが検討されています。日本においても今後の国際動向を注視していくとともに、燃料蒸発ガスを回収するタイプの給油所普及を促進する予定です。

出典:環境省「第14次答申及び報告で示された今後の検討課題の現状について」p23(2021/10/11)
出典:独立行政法人 交通安全環境研究所「日欧米における駐車時・給油時燃料蒸発ガス対策の現状」p12

4. まとめ:欧州の排ガス規制 ユーロ7(Euro 7)について理解を深め、今後の動向に注目しよう!

ユーロ7は新車製造における規制で、主として排気ガスによる大気汚染を解決するために策定されています。基準値の厳格化やブレーキやタイヤから発生する粉塵の規制対象化など、先進的な内容となっています。

しかしEU内でもユーロ7への反対があり、当初計画より内容が緩和され、導入時期も遅くなると見込まれています。日本においても、ユーロ7同様の排出規制について、その必要性が検討されています。

ユーロ7の導入はEUで新車販売を行う日本の自動車メーカーにも、大きな影響があることが予想されます。排出ガス削減に関する技術開発も進むものと予想されますので、ユーロ7について今後の動向に注目し、環境対策技術の開発や実装を進めましょう。

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