CO2(二酸化炭素)排出削減に向けた世界各国の取り組みと日本の現状は?
- 2023年12月04日
- CO2削減
現在、環境問題への取り組みは世界各国の共通認識となっています。特に地球温暖化の原因と言われているCO2の排出削減に向けた動きは、ニュースなどでも連日報道され、注目されています。
この記事では,炭素税や地熱発電等の取り組みについてわかりやすく解説します。
目次
-
CO2削減にむけた世界各国の中長期目標とは?
-
CO2削減への世界各国の取り組み状況は?
-
CO2削減への日本の取り組み状況は?
-
世界各国でCO2排出削減に取り組んでいる
1. CO2削減にむけた世界各国の中長期目標とは?
1970年代、科学の進歩にともない、地球の大気に関する仕組みについて解明が進み、科学者の間で「地球温暖化」についての問題が注目されるようになりました。1985年にオーストリアのフィラハで開催された初めての地球温暖化に関する世界会議(フィラハ会議)でCO2による温暖化が大きく取りあげられることになります。
その後、1988年には地球温暖化に関する科学的側面をテーマとした政府間での検討の場として「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が設立され、1992年に開催され、「地球サミット」で「気候変動枠組条約」の署名が行われ1994年に発効されます。
ここでは、
-
1990年代末までに温室効果ガスの排出量を1990年の水準に戻していくこと
-
開発途上国に気候変動に関する資金援助や技術移転などを実施する
が求められています。
パリ協定で世界各国の目標が明確に
地球温暖化問題について、世界各国に具体的な目標が示されたのは2015年にパリで開かれた「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)」で合意された「パリ協定」です。
こちらは翌2016年に発効され、全体の目標として、
-
世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
-
そのために、早急に世界のGHG(CO2を含む温室効果ガス)排出量をピークアウトし、21世紀後半にはGHG排出量と森林などによる吸収量のバランスをとる
ことが掲げられています。
出典:経済産業省『令和5年度「国連気候変動枠組条約交渉事業(地球温暖化問題を巡る国際動向調査(気候変動枠組条約(UNFCCC)))」に係る入札可能性調査について』
ここで各国が目標とする数値目標も発表されています。
-
主要国のGHG(温室効果ガス)削減目標
出典:WWF JAPAN『COP21のパリ合意にむけた各国の温暖化対策目標案の提出状況』
※アメリカは2017年にパリ協定より離脱、2021年2月に復帰
この取り組みにより、世界各国はGHG排出削減へむけて動いていくのです。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」への取り組み
SDGsは2015年の国連サミットで採択された2030年までに世界各国で取り組む「持続可能な開発目標」となっており、
-
誰一人取り残さず、持続可能で多様性と包括性のある社会を実現するための国際目標
です。ここでも地球環境についての目標が盛り込まれています。
SDGs目標13にある「気候変動に具体的な対策を」では、温室効果ガス排出が原因となる地球温暖化に対しての目標と行動指針が掲げられています。
出典:外務省『JAPAN SDGs Action Platform』
2. CO2削減への世界各国の取り組み状況は?
では、目標に対しての各国の取り組み状況はどうなっているのでしょうか。
2019年の経済産業省資源エネルギー庁のホームページでは、2016年の状況としてパリ協定での目標値と同水準の国は主要国のうち、日本とイギリスのみと報告されています。
出典:経済産業省資源エネルギー庁『パリ協定のもとで進む世界の温室効果ガス削減の取り組み』
しかし、各国の進捗としては、
-
<イギリス>2016年実績で1990年度比41%の削減
-
<アメリカ>2016年実績で2005年度比12%の削減
-
<フランス>2016年実績で1990年度比18%の削減
-
<ドイツ>2016年実績で1990年度比27%の削減
と、確実に削減への取り組みはすすんでいます。
また、環境省ではパリ協定での2030年へむけた目標のほかに、各国の長期的目標として2050年の達成目標と戦略内容もまとめられています。
CO2排出量の世界各国の内訳
出典:環境省『世界のエネルギー起源CO 排出量(2020年)』p.5
以上の資料から世界各国間で取り組みに温度差があることがわかります。国連の気候変動枠組条約事務局は2030年までの目標に対して、2021年現在、全体で0.5%の削減にとどまっており、今後10年で、25%~45%の削減が必要としています。今後、CO2排出削減の動きはさらに加速するでしょう。
出典:日本経済新聞『各国の30年目標、パリ協定達成「ほど遠い」 国連報告書』(2021年2月)
SDGsランキング上位は北欧・欧州国
出典:sasutainable development report『持続可能な開発レポート2020』
SDGsの進捗状況も報告され、取り組み結果でのランキングも発表されています。しかし、目標13の「気候変動に具体的な対策を」の項目に関しては目標達成している国はひとつもなく、ほぼすべての国で「達成度が最も低い」という評価となっています。その中でも達成度の高い北欧・欧州の国での取り組み内容はどのようなものなのでしょうか。
-
デンマーク
コペンハーゲンの南部では、100%再生可能エネルギーを使用した「UN17village」という村がつくられています。ここでは雨水や建設資材もリサイクルするという徹底された100%持続可能な村を目指しています。
-
スウェーデン
ベクショー市は2030年までに化石燃料を0にすると宣言し、森林資源を活用したバイオマスエネルギーへの代替をすすめており、人工も増加し、経済成長率もアップしています。
また、ハンマルビー・ショースタッド地区では、ごみや生活排水を分別、バイオマスエネルギーを利用し、暖房や発電、公共交通の燃料に使用し、CO2の排出量削減に取り組んでいます。
-
フランス
ファッション業界を牽引するフランスのアパレル会社では海外での低コスト生産からの脱却が図られ、サステナビリティが注目されています。パリでも古着市が盛んで、リサイクルポストの設置や、植物性の原材料を使用した素材のブランドが登場するなど、エシカル・ファッションに力をいれています。
-
ドイツ
1998年に電力市場が自由化されたドイツでは、環境団体の出資する「グリーンピースエナジー」など4社が再生可能エネルギーのみの提供をおこなっています。
また、ウンフェアパックトという量り売りのショップもオープンしており、客が容器を持参して購入するシステムをとっています。
3. CO2削減への日本の取り組み状況は?
日本の目標値は2013年度水準から26%削減
日本では、パリ協定での目標として、
-
2030年までにGHGの排出を2013年度の水準から26%削減する
としています。2016年度の進捗としては、2013年度から7%の削減となり、目標ラインと同水準となっています。
日本ではエネルギー分野での削減が注目されている
2021年4月におこなわれた「気候変動サミット」で菅首相は、
-
2030年にはGHG排出量を2013年度水準から46%削減する
と宣言しています。
経済産業省資源エネルギー庁では、日本の特徴として燃料の燃焼や、電気や熱の使用で排出される「エネルギー起源CO2」での排出割合が92%となり、そのうち50%が発電時に排出されている結果をうけて、エネルギー分野でのCO2排出削減にむけた対応が重要になるとみています。
出典:経済産業省『パリ協定のもとで進む世界の温室効果ガス削減の取り組み』
これにより環境省では、「地球温暖化対策推進に関する法律(温対法)」に基づき、GHGを多量に排出する事業者にGHG排出量の報告・公表を義務づけました。
今後は企業でのCO2排出削減にむけた取り組みが注目されるでしょう。
4. 世界各国でCO2排出削減に取り組んでいる
-
地球温暖化について問題化してきたのは1970年代からで、1985年のフィラハ会議、1988年のIPCCの設立を経て、「気候変動枠組条約」が1994年に発効された。
-
2015年のパリ協定で、CO2排出削減に向けた全体の目標の他に、世界各国の自主削減目標が発表され、日本でも2030年までに2013年比で26%削減するという目標が提出されている。
-
SDGsの目標項目にも、目標13で「気候変動に具体的な対策を」とあり、CO2排出削減への取り組みが掲げられているが、現状は達成度のもっとも低い項目のひとつとなっている。
-
世界各国でCO2排出削減がすすんでいるが、目標水準に届いている国は少なく、目標値と同水準の国は主要国では日本とイギリスのみとなっている。
-
日本では、燃料の燃焼や、電気や熱の使用で排出される「エネルギー起源CO2」での排出割合が92%で、そのうち50%が発電時に排出されていることから、エネルギー起源のCO2排出削減にむけた動きが注目されている。
今後も地球温暖化防止に向けたCO2排出削減は注目されていくと予想されます。特に経済活動に伴うエネルギー起源のCO2排出量は大きく、企業としても削減への取り組みは注目されています。世界の動きに合わせた企業経営が必要となるでしょう。